戦艦大和反撃開始
―日本領海―
海面に巨大物体が出現し、水蒸気が立ちこめる。
「……大和、ワープアウト!!」
ミュラ女王陛下の魔法により、異世界より帰還したのだが、なぜか船務長は『ワープ』と呼んだ。
まぁ的を射た表現だが……どこぞのアニメの見すぎだ。
方舟への攻撃がいつ再開されるか分からないため、大和には、女王陛下とその執事のみ残った。
国王臨時代理は、アリサ王女殿下が務めるらしい。
王女は、先王アリスの生まれ変わりとされているため、若干13歳ながら方舟では奉られているようだ。
戦艦大和の若い乗員の中には……また違った価値観でアリサを奉る動きがある。ロリk……まぁそういうことである。
「船務長、状況は?」
俺は船務長に問うた。
船務長は、艦内組織の船務科を指揮する役職である。戦闘の情報を統括したり、通信を管理するのが任務だ。
「お待ちください……データリンクを繋ぎます。……あ、やはり中国海軍は尖閣など島嶼部に強襲揚陸艦を配置しています」
「艦長!」
船務長の報告を受けて砲雷長が進言しようとする。
……わかっているって。やることは一つだ。
「ミュラ女王陛下」
「はぁはぁ…………何かしら……?」
俺は女王陛下を見つめる。
彼女はかなり疲弊した様子だ。無理もない。戦艦大和のようなべらぼうにでかい質量を異世界転移させたからな。
精霊族は魔法を使えるが、決して無敵ではない。技を使えば、当然体力を消耗するという。
……おっと話が逸れた。
「女王陛下、大和をこの3ヶ所に順番に転移させてください」
「……ッ!!」
執事のロストに睨まれた。
「艦長……そんなことしたら、ミュ……いや、陛下の御身は持ちません」
(ミュラって呼ぶのか。親しいのか?)
「……承知の上だよロストさん。……女王陛下、事態は一刻を争います。日本が、我らの祖国が侵略を受けているのですッ!!」
「…………」
女王陛下は俯いていたが、やがて……
「やるわ」
……と覚悟を決められた。
天皇陛下も「構いません」とおっしゃった。
大和の反撃が始まる。
俺は決意を新たに、艦長席についた……。