北朝鮮を討て
―首相官邸―
異世界の閣僚たちは憤慨していた。
「なぜ今まで黙っていたのか?」
「……」
「なぜ、あのような野蛮な国を放置しているのだ!!!?」
屈強な軍事大臣が卓に拳を叩きつけ吠える。怯える阿部たち閣僚。
「……北朝鮮がちらつかせている「みさいる」や「すいばく」は以前、あの憎きデウゴスが放った物と同一ではないかっ!!」
「……」
「おまけに自国の国民を拉致されて、取り返さないのか?悔しくないのか?」
「……」
政治的な深い理由で、阿部さんは北朝鮮に手を打てないのである。ナントカ教会……ゴニョゴニョ。
女王ミュラは目を瞑っていたが、やがて、
「お付き合いさせていただく以上は、やるべきことはやらないとね」
と。
「女王陛下のご同意も得られた……貴国陛下の承認が得られ次第に、ただちに拉致被害者の奪還作戦および北朝鮮国務委員長金序運の捕獲作戦に入りたい。」
何やらとんでもないことを決められてしまった……。うなだれる閣僚たち。
総理の持病、再発しそうだ……。
(まさか……)
嫌な予感がする。
「……という訳で、戦艦大和にも支援を要請したい」
げっ。
「……どうされた戸村殿?」
イヤとは言わせない圧倒的な殺気が軍事大臣から放たれる。
……決まったからにはやるしかないか!
彼は本物の武人のようだ。日本人よりも日本のことを守ろうと必死だ。
異世界の戦士は、日本人としての矜持を呼び起こしてくれたのだ。十数年前のある運動と似ている……。
それは、ある架空プロレス選手を名乗った、ランドセルを児童施設に配った社会運動だ。
「俺はランドセルをプレゼントしたけど、本当は違って、親のあなたが育てるべきなんだよ?」
のちに名乗り出た人はそう言ったそうな。
当人の自覚のなさは、それを正す者によって暴かれる。
俺は顔を上げ、決意を新たにした……。