異世界の議会(2)
―方舟議会―
ローマ帝国の闘技場を彷彿とさせる巨大建造物……方舟議会。
国王即位式でも使われるそうな。
彼らから見れば異世界人の俺は召喚された。
「……殿」
「陛下にお聞きしたい。日本国とはどのような国家なのですか?」
質疑応答が始まる。
国会では「君」付けだが、ここの議会では「殿」と言うのだな。
ミュラ女王が立ち上がり、議長と顔を見合せた後に「戸村殿から説明があるわ」と言った。
おいおい……何も原稿用意しておらんぞ!?
国会では、官僚が背後からカンペを出してくれるが……習慣が違う。そういえば、どこぞのシンなリメイク怪獣映画もそんな調子だったな。
方舟議会は、ちゃらんぽらんな政治家にとっては辛かろう。
「……え―、日本国の政体を説明します。我が国は天皇陛下を事実上の元首とする立憲君主制国家であり…………」
日本国の政治、国連日本陸海空軍についてかいつまんで説明する。
全部で1時間かかり、理解してもらえたのか不安だったが、すぐに資料が配布されたので安心した。
天皇陛下について述べたとき、特に精霊族の席が騒がしくなっていたのが印象に残っている。
後に俺はこの理由を知ることになる。
議長がまとめに入る。
「……それでは、『日本国・方舟基本条約』の批准について、採決します。批准について異議のある方は?」
異議は、ない。
方舟議会は、日本国・方舟基本条約を批准することを決議した。法案にミュラ女王が署名すれば、正式に法律となる……。
―日本国国会議事堂(臨時国会参議院異世界特別委員会)―
日本国国会においても、俺は参考人招致を受けた。
……まったく嫌になる。方舟の民度の高さを見てきた俺にとっては、国会のやりとりが馬鹿馬鹿しく感じられるからだ。
おっと……国権の最高機関にそんなこと言ってはいかんな。
内閣を構成する与党たる、自主市民党および公民党の要求した『日本国・方舟基本条約』の批准に対して、野党が異議を唱えたのだ。
野党の中でも左寄りの、日本共産委員会が論戦を仕掛けてきた。
日本共産委員会、略して委員会は、天皇制の廃止を企んでいる。戦後間もない頃は、本当にテロをやりかねない勢いだったので、公安の監視対象となった。
まぁ、連立与党の公民党も、かの悪名高き、創世教団が支持母体だが……。
委員会中央委員長が質問に立った。
「……以上の事柄から、方舟は絶対君主制国家に等しいと考えます!!また、異世界にて独断専行で戦艦大和が戦闘をしたとは何事ですか!?」
……俺は頭を抱えた…………。




