前編
設定に甘い部分がございますが、勢いでお召し上がりください。
「私の所にお嫁に来なさい。そうすれば、ずっと傍に居られますよ」
「これだけ焦らされた女は初めてだ。もうお前以外欲しいと思わん。早く俺のものになれ」
「存分に可愛がって、どろどろに甘やかしてやる。だから一生私の手の中に居ろ」
「君の傍は、居心地が、良い。だから、君の隣に、立つ権利が、欲しい」
「貴女の為に生きることこそ俺の喜びです。生涯お側に控え、貴女に救われたこの命を貴女の為に捧げ尽くしましょう」
何故こうなった。
どこからこんな流れになったんだ。
軽い眩暈を感じ、わたしはそっと目を閉じた。
そうして、ミディア・ウィンストンとしての今生が、鮮やかな走馬灯のように脳裏を駆け抜けていく。
******
ウィンストン侯爵家令嬢として生まれ、蝶よ花よと乳母の手によって育てられたわたしは、4歳の頃、転んだ拍子に前世の記憶が蘇り、現在の世界が乙女ゲームの中で、自分が悪役令嬢に転生したという事を理解した。
はは、ありがちだな、というのが第一印象で、次いで、おい、このまま育つと処刑されるんだが・・・と気付いてしまった。
15歳で王立学院に入学するとゲームが開始される。
同時に入学したヒロインちゃんが、これまた同時に入学した攻略対象者たちを狩らんと3年間奮闘する姿を見て、わたしはそれを阻止すべく彼女をいじめ倒し、卒業パーティーで断罪されるという損な役回り。
学院在籍2年目の終盤にわたしの婚約者が決まり、それがヒロインちゃんの突入したルートの男と重なるようになっている。
ゲームのシステム上仕方のない事とはいえ、ちょっと酷くないか? 悪役令嬢を一人で済まそうとするからこういう事になるんだ。それぞれの攻略対象者に婚約者を付けとけば悪役が分担出来るってのに。何でわたし一人に背負わせるんだ。積載量オーバーだ。法に触れるぞ。
だったらヒロインちゃんをいじめなければ回避出来る! という簡単な話でも無い。考えてもみてほしい。一人の女の子をいじめただけで処刑される訳が無いという事を。
そう、処刑は別口。わたしの事はきっかけにすぎない。
わたしの父は、横領から始まり陰で薬物売買を行う腐りきった侯爵で、母はそれを知りながらもその金で放蕩三昧を尽くす爛れきった侯爵夫人。そして娘のわたしは、可憐なヒロインちゃんをいじめて喜ぶ歪みきった下衆女になる予定。
おい誰か、ゴミの収集日を確認しろ。まとめて燃えないゴミに出しとけ、こんな一家。肥料にも成りゃしない。
わたしがヒロインちゃんをいじめ、それに憤慨した攻略対象者たちが一丸となり証拠を掴もうとする過程で、我が侯爵家の悪事の欠片に勘付き、それを父親たちに報告。攻略対象者は王太子や宰相の息子なので、その父親といえば必然的に国王であったり宰相であったりするというお定まりのパターン。
そういったお偉いさんたちが本腰を入れて我が家を嗅ぎ回り、バッチリ証拠をゲット。
わたしの断罪イベント直後に、今度は我が家の断罪イベントが勃発し、父と母は処刑、そして娘のわたしも連座で処刑が決定する。仕様が無いな、燃えないゴミ一家だし。粛々と裁かれよう。
・・・いや違う、わたしは無実だ! まだ何もしていない! せいぜい花壇の花を引っこ抜いたぐらいだ! これぐらいならセーフだな? いや、もしやアウトか? どうなんだ? セーフって事で話を進めるぞ? いいな?
さしたる罪を犯していない自分まで裁かれるというのは、気分の良い話では無い。どころか、謹んでご遠慮申し上げたい。
どう考えても父母は手遅れである上、生まれてこのかた愛情なんて注がれて無い(注がれたのは乳母の愛情だけだ。それも甘やかしが度を超えていて大変有害である)わたしには父母に対する愛情なんて特に無いので、彼らの処刑は回避してやる必要は無いだろう。そんな義務は生じない。したけりゃ各自でしてくれ、と心の中で応援しておいてやるのが、せめてもの武士の情けだ。
そう考えたわたしが回避方法として真っ先に思い付いたのは、家出か出家だった。字は似てるのに大違いだな。
家出してしまえばゲームとは無関係になれるが、何の力も経済力も無い4歳での家出はどう考えても野垂れ死にのバッドエンドコース。当たり前だな。幼女に甲斐性を求めてはならぬ。
出家してしまえば連座による処刑は免れるだろうが、しかし残念、寺が無い。・・・洋風ファンタジーな世界に寺は無いな、うん。修道院的なものも無いんだよな。くそ、逃げられねえ。いや、そもそも出家してまで生きていたいかと聞かれると悩むが。性に合わん。
ならば、やれるだけの事をやってみるか。
どうしても駄目だと思ってから逃げても遅くは無いだろう。
そう決意したわたしは、翌日からスーパー4歳児に変身した。
書庫で魔導書を読み漁り、一人で必死に魔法を習得。この世界での魔法は、使えば使うほどレベルが上がる仕組みなので、毎日魔力切れを起こしぶっ倒れるまでやった。
ぶっ倒れた後で目が覚めると、魔力量が跳ね上がっていて無茶苦茶楽しかったので、調子に乗ってバンバン使いバンバン倒れた。そうしたら“病弱なご令嬢”というレッテルを貼られていたが、気にせず続けた。
ゲーム上でのミディアは、学院一の魔力量を誇るヒロインちゃんに次いで魔力が高かった。乳母に甘やかされて育ったミディアは、きっと特別な訓練なんてしていなかっただろう。その状態でヒロインちゃんの次に魔力が高かったという事は、子供時代から全力で挑めば、ヒロインちゃん以上の魔力を得られるという事ではないのか、というのがわたしの考えだ。それどころか、魔導士長並みの魔力を手に入れる事も可能かもしれない。
それだけの力があれば、何かしら国の役に立ち、その功績からお目こぼしで連座を阻止出来る可能性も芽生える。何だその未来。大歓迎だ!
仮に、処刑は免れたものの有用過ぎて国に囲われるというバッドエンドが来たとしても、唯々諾々と従うフリをして有り余る魔力を駆使し逃げれば良いだけだ。何という完璧なプラン! ミディア、怖ろしい子・・・!!
ボケもツッコミもセルフサービスでこなしつつ、倒れては起きてをエンドレスループしながら立派な“おきあがりこぼし”として成長していく最中、わたしは次々と攻略対象者たちに出会っていった。
王太子、宰相子息、軍隊長子息、魔導士長弟の四人。
ミディアは彼らとは幼馴染という設定だったという事を思い出していたので、特に混乱する事も無く受け入れた。
受け入れる事と仲良くする事は別だったが。
こいつら、幼馴染のミディアが親から愛情を注がれず育ったせいで捩れていったという事を知っている癖に、学院に入学した途端、一人の女に目が眩んで幼馴染を切り捨てるんだぞ? ひどいだろ? 多少なり庇っても良くないか? ・・・まぁ、そういうゲームなんだが。
いずれわたしを切り捨てる彼らとは、程々の距離感で適当に付き合おう。
その時が来ても、「へっ、あいつらに捨てられたからって、何とも思わねえよ・・・」と哀愁漂う顔で歪な笑いを漏らせる程度に・・・ってそれはかなり重症だ! モロにダメージを受けているな! 我ながら可哀想過ぎる!
訂正訂正。
「ふふ、嫌ぁね、捨てられたんじゃないわ。わたしが彼らを見限ったのよ」と嘲笑出来る程度の距離感が正解だ。よし、これでいこう。
そういう理由から、彼らとは適当に付き合った。
家に招かれれば喜んで向かい、嬉々として各家庭の書庫や書斎にまっしぐら。呼ばれるまではそこに籠り、呼ばれても一瞬顔を出し再度籠る。
勿論、お目当ては自宅には無い蔵書の数々だ。魔導書はもちろんの事、政治や法について説かれた書物も読み倒した。自身の価値が高まるあの快感は癖になる。やめられないし止まらなかった。
適当な付き合いはどうしたって? 一瞬顔を出したらもうオッケーだろう。
そもそも彼らとは会話が成立しなかった。彼らは一様に、わたしの顔を見た途端固まるという謎のリアクションを起こしたからだ。この段階からミディアに対する拒否反応が出ていたという事か? ミディアに対する嫌悪が魂に刻まれていたとでも? まったくもって難儀だな。
その一方で、彼らの父や兄とはそれなりに親しんだ。
その時点ではまだ宰相でも軍隊長でも魔導士長でも無かったが、わたしが断罪される時に彼らがその役職に就いているという事は承知していたので、早めに“わたしは役に立つ”という事を知ってもらわねばならなかったからだ。ちなみに国王はその時点で国王だったが、さすがに会う機会は無かった。代わりに、王宮の図書室長を務める王弟と知り合ったが。
+++
未来の宰相様になるバージニア卿宅は、近所だった事もあり5歳の頃から頻繁に出入りさせてもらった。
ここでのお目当ては政治関連の書物と歴史書だったのだが、先代宰相の手記の写しまで紛れ込んでいたのには驚いた。隅から隅まで熟読したが、おかげでその宰相の愛犬の名が『イザベラちゃん』『バーミリアン二世ちゃん』『マリーナちゃん』だという余計な知識も増えた。活用は出来無さそうだが。
・・・おっと違う、マリーナちゃんは宰相の愛孫の名前だ。犬と同列に書いてあったから間違って記憶しかけた。紛らわしい。
書庫の扉をノックされ、煩わしいという思いを隠し顔を出せば、バージニア卿子息のゼファーがそこには居たが、わたしが顔を出すと同時に固まるというのが日常だった。
だから、固まるぐらいなら何故呼ぶんだ。何がしたいんだ。あれか、ピンポンダッシュに挑む少年の気持ちだとでも言うのか? だったらピンポン直後にダッシュで逃げろ。突っ立っているんじゃない。
初めの内こそ「ゼファーさま、なにかごようですか?」と首を傾げてやっていたが、何分待とうとも答えを貰えた試しは無かったので、そのうち聞くのをやめた。言っておくが、質問を無視されて何とも思わない程たくましい神経を所持していた訳では無い。ちょっとは傷付くんだぞ、くそ。
ある日、四六時中入り浸り政治書を次から次へと紐解くわたしに興味を惹かれたのか、多忙で滅多に見かけないバージニア卿がわざわざ書庫へ訪れ言葉をかけてきた。
すわチャンス到来かと張り切り、書で得た知識や前世の知識の残り香などをフル活用させ国政についての議論に持ち込めたのは、人生最大の手柄だったと今でも誇らしく思っている。何せその日以来、わたしが書庫に籠るたびにバージニア卿がやって来るようになったのだから。
自己PRが大成功した! と魔法で祝砲を挙げようかと思ったが我慢した事を誰かに褒めてもらいたい。
国政について、落ち着いた討論から熱い激論まで余すことなく交わす内に、バージニア卿から娘のような扱いを受けるようになっていった。
勿論わたしも幼女が国政について語る不自然さは理解していたが、取り繕っていたらあっという間に処刑タイムが来てしまうので目を瞑る事にした。大体その程度の不自然さ、わたしのシルバーパープルという不自然極まりない髪色に比べれば大した事では無かろう。
バージニア卿は、自身が驚異的なまでに頭の良い幼少時を経ていたらしく、わたしのような子供が政治について語るのを不自然だとは捉えなかったようだ。天才は自分を基準で物事を考えるんだな。こっわ。しかしある意味助かった。
わたしが9歳になるころ、バージニア卿の奥様が流行り病で亡くなられた。
とても優しい女性で、その頃にはわたしにとっても母同然だったので非常に辛かったが、バージニア卿の嘆きぶりはわたしのそれを凌駕していた。
そのままでは世を儚んで消えてしまうのではないかいう程の嘆きぶりに、「ミディがずっと一緒にいるから、泣かないで、おじさま」と毎日必死に慰めた。そりゃもう全力投球したさ。
それというのも、彼は元々仕事に私情は挟まない冷静沈着なタイプだったが、奥様の死後、その冷徹さはどんどん勢いを増し、最終形態が“血も涙もない冷酷無情な宰相様”になってしまうと知っていたからだ。それはいけない。我が家の断罪がスムーズに運んでしまう。彼に人の心を残し、連座の可能性を少しでも薄めるのがわたしの使命だ。
もちろん、わたしに良くしてくれる小父様を悲しみに囚われたままにしておきたくない、という気持ちもあったと主張しておこう。自分の身を案じる気持ちと同じ割合、そう気遣う気持ちもあった。確かにあった。本当だ、信じてくれ。
連日のようにバージニア卿宅に通い、時に慰め、時に隣に寄り添い、寄り添ったままついうとうととし、そのまま膝枕に突入などという気遣っているのか気を遣わせているのかよく分からない事を続けた結果、1ヶ月程で何とかバージニア卿は持ち直した。
ただ、慰める過程で彼の“親馬鹿スイッチ”をガツガツ踏んでいたらしく、もしかしてわたしは、この人の実子なんじゃないのか? と勘違いしそうな程に可愛がられるようになったのが誤算だった。
「ミディは、いつかお嫁に行ってしまうのですね・・・」などと哀愁漂う目で呟かれる事態が頻発し、その度に「わたし、大きくなったらおじさまと結婚するの」なんていう茶番劇を繰り広げたが、これはわたしの黒歴史となって残っている。消したい過去だ。修正テープでは甘い、修正ペン持って来い。真っ白に塗りつぶしてくれるわ。
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未来の軍隊長様になるラーク卿とは、幼い頃にはあまり会う機会は無かった。
それというのも、彼は子供が得意では無かったようで、軍の兵舎に詰めている事が多かったからだ。わたしの事が苦手で避けられていたという話では無く、彼は自身の子を含め“子供”という生き物が不得手だったようだ。接し方が分からなかったらしい。
その癖、下半身の緩さは他の追随を許さないという最低な男であった。隠し子が何人居るのか、誰にも把握出来ていないに違いない。苦手な生き物を量産する意味が分からん。無駄弾を打つナニなど即刻切り落としてしまえ。
そんな節操の無い男に一生付いて行くという聖女のような女性がこの世に居る筈も無く、わたしが彼の息子であるテンダーと知り合った6歳の頃には、その母親は出て行った後だった。
父親は無節操色魔で、母親は子供を置いてさっさととんずら。
さすがにこれはテンダーが可哀想だと思い、この子とだけはちゃんと仲良くすべきかと思ったが、やはりわたしを見るとフリーズするので早々に諦めた。お前らどっかにバグ抱えてんじゃないのか? よくそれで出荷検査通れたな。
ちなみにラーク卿宅でのお目当ては兵法関連の書。わたし自身に武力は無いが、国防という観点からすると知っておいて損は無いのでひたすら読んだ。
家主が居ないという状況は、わたしにとって探査系の魔法を試す恰好のチャンスでもあったので、遠慮無く試しまくった。あの家の事には誰よりも詳しい自信がある。いずれ国を逃げ出す事にでもなったら、あの家の金目の物を持って逃げよう。
14歳になった頃、珍しく邸へ戻ったラーク卿と書斎で鉢合わせた。
書に没頭するわたしを見つけたラーク卿の第一声は、「女が兵法なんて知って何になるんだ」という女性蔑視に溢れた言葉だった。現代なら確実にフェミニズム団体からの抗議が殺到する案件だな。
しかしわたしは「お邪魔しております」と微笑み流すに留めた。他人様の家で勝手に本を読み漁っているという自覚はわたしにもあったのだ。怒られなかっただけ良しとすべきだろう。
だが彼はわたしの反応に、「知的好奇心が旺盛な女は、己を軽んじる言われ方をすればけんけんした反応を返すもんだと思ってたが」と拍子抜けした顔をしていた。これは直訳すると『頭でっかちな女は、男に舐めた口利かれるのは嫌なんだろ?』になると思われる。
つまりラーク卿は、そういった女の心理を知った上でわたしを揶揄おうとしてきたという事か。まったく良いご趣味だな。
軽んじられる? 結構な事じゃないか。油断してくれた方がこちらの思うように事が運べるという事だろう。好きなだけ軽んじてくれたまえ。
そんな気持ちを込めて、「わたしは殿方に舐められるのが嫌ではありませんの」と悪役令嬢らしく不敵に嗤えば、「・・・お前、エッロいな。何だそのエロさ」という頭のネジが外れまくっているに違いない腐った反応が返ってきて愕然とした。
お前の脳味噌は下半身にあるのか? 何でも下ネタに繋げるのはやめろ! “舐める”の意味が違うわ!
その日以降、何故か頻繁に遭遇するようになったラーク卿は、会うたびに絡んでくるようになった。
言葉による揶揄いや冷やかしから始まり、わたしが大した反応を返さない事を理解してからは、色気溢れる視線で至近距離から覗き込んできたり、掬い上げたわたしの髪に唇を寄せてみたり、書架の前に立つわたしに壁ドンならぬ本棚ドンを仕掛けたうえ顎クイに持ち込んでみたりと、あの手この手のちょっかいをかけてくるようになったという最低の大人だ。こんなのがいずれ軍隊長になるとか、この国の未来は暗澹としているな。考え直せ、まだ間に合うぞ。
ちなみに顎クイに持ち込まれた際は、彼の体にピッタリ添うような結界魔法を展開し完全拘束、指先ひとつ動かせないようにしてやった。呼吸だけは出来るよう、鼻と口は動くようにしておいたのが温情というものだろう。
浅い呼吸を繰り返すその口から、「反応が新鮮過ぎてそそられる一方だ。早く堕ちて来いよ」と情欲を纏わせた言葉が聞こえた時には、呼吸すら止めてやれば良かったと後悔したが。
そんなに暇ならわたしの知識アップに役立ってもらおうと、軍の指揮系統についてや有事の際の優先順位など遠慮なく質問を浴びせた結果、欲しい回答はガンガン貰えたが、ついでに更なる色欲まで煽ったらしかったのが計算違いだった。ラーク卿の頭の中には色事しかないらしいと再認識した瞬間だった。
+++
代々優秀な魔導士を輩出している家系の末っ子であるリベラは、あどけない顔立ちに似合わず口の悪い子供であった。
わたしの顔を見れば固まるのは他の奴らと同じだったが、リベラが他と違っていたのは固まりながらもわたしに悪態を吐く事が可能だったという点か。
「おまえなんかと誰がなかよくするか!」と言われたところで、彼は当時わたしと同年齢の7歳であったため、はは、小鳥が囀ってるわ、程度の感想しか抱けなかったのだが。
そんなリベラの年の離れた兄が、未来の魔導士長様になるエコー様だった。
この邸を訪問した際のわたしは、書庫でも書斎でもなくエコー様の私室へとまっしぐら。当然、目的は彼の私物である魔導書の数々だ。
初めてエコー様の私室に突撃した時、軽いノック音を響かせたわたしに対し、「忙しい、から、邪魔しない、で」とドアを開けてもくれず、くぐもった声だけが返って来た事を覚えている。彼は人と関わる事が不得手なようだったので、わたしだけが嫌われ拒否された訳では無い。そう信じている。
その程度で諦める潔いわたしでは無かったが、さすがに許可無く他人様の私室に踏み込む真似は出来無かった。7歳児であろうとも、それぐらいの礼儀は心得ていたのだ。
礼儀正しいわたしは、エコー様の私室のドアをあらん限りの力でノック、ノック、ノックの連打。
“コンコン”ではなく“ゴン!ゴン!ゴン!ゴン!”という音が辺りに響き渡り、根負けしたエコー様がドアを開けてくれるまで叩き続けるという相当な礼儀正しさを保ったが、これは淑女として当然の振舞いだ。褒めてもらうには及ばない。
「おじゃまはしませんので、まどうしょを読ませてください。お部屋のすみっこに置いてくださればけっこうです。いっぷう変わった置物だとおもって放置してくだされば良いのです。どうかおねがいします」と頼み込むわたしの熱意に打たれたのか、はたまた廊下で土下座する幼女を無視しきれなかったのか、エコー様はかなり渋々ではあったがわたしを私室内へと招き入れてくれ、魔導書読み放題のサービスを提供してくれた。ドリンクは付いてこなかったが。
そこいらの家庭ではまずお目に掛かる機会の無い高等魔導書がより取り見取りというエコー様の私室は、わたしにとって桃源郷のようだった。
書架から一冊抜き出し、そそくさと部屋の隅で小さくなり書に熱中するわたしという存在に、初めこそは気を散らされがちなようだったエコー様も、ひと声も発する事無く書に没入するわたしを次第に空気のように感じだしたらしく、最終的には存在を忘れ去られるに至った。
いや、大丈夫だ、己の存在感の無さを嘆いてなどいない。これは本心だ。・・・本心だ。
初回の礼儀正しいノックが彼にとってトラウマになったのか、二回目以降は軽いノックだけですんなり入室を許された。
相変わらず置物のように微動だにせず黙々と魔導書を読みふけり、訪問時と去り際以外、一言も言葉を交わさないという状況が続き、そうして半年程が経過した頃、初めてエコー様から声を掛けられた。
多少なり気を許してもらうのに半年か。野良猫より手強い相手だったな。
「・・・楽、しい?」
「はい、とても」
「全部、理解、出来ている?」
「おはずかしいのですが、いくつか分からないところがございますの」
「・・・どこ?」
「こちらの、風と火のわりあいがいまひとつつかめず・・・」
「これ、は、割合よりも、火の温度が、重要、で」
わたしのような幼女にいっぱいいっぱいで話すこの人は、職場での意思伝達はどうしているのだろうか? と疑問に思ったが、わたしには関係の無い事なので触れない事にし、そのままぎこちない質疑応答を重ねた。誰にだって触れられたく無い部分はあるだろう。
第一、この人のコミュニケーション能力が低かろうとも、わたしの処刑には何の影響も無い。逆に、下手に首を突っ込んで彼を傷付けるような事でもあったら処刑の可能性が高まる恐れがある。藪をつついて蛇を出すような真似はすまい。
その日を境にエコー様から話し掛けられる事が増え、彼が比較的忙しくなさそうな時はこちらからも質問の声を上げたりし、着々とわたしの知識は高まっていった。
そうして月日が流れ、わたしが13歳になったあたりで彼に何らかの異変が起きたらしく、「・・・偶には、庭で、お茶でも、する?」と尋ねられた時のわたしの驚きは筆舌に尽くし難い。
ニワデオチャ? それは新しい呪文か?
そう思ってしまったのは、脳が聞き慣れない言葉を受け入れ拒否したせいだろう。今までドリンクのサービスも無かったというのに、一体どんな心境の変化だ。
流石にこの異常事態は看過出来ず、それでも傷付けまいと遠回しにじわじわと探った結果、『女の子相手に魔法の話しかしねえって、お前は阿呆か』とどこぞの色魔に言われたのが原因だと判明した。
どこの色魔かはご想像にお任せするが、この時点でわたしはその色魔とはさしたる接触が無かった為、文句のひとつも言え無かったとだけ付け加えておこう。
「その・・・魔法の話なんか、より、お茶でもして、庭の花でも眺めるべき、だって、言われて」と視線を彷徨わせる彼に、これは物申さねばならないとその手を握り、「魔法“なんか”ではありませんわ。わたしにとっては、エコー様と魔法について語り合い、知識を深める時間こそが幸福なのです」と訴えた。
それでも納得がいっていない様子のエコー様に、「第一、わたしは花が好きではありません・・・己の罪を思い起こさせるのですもの」と目を伏せれば、「つ、み?」と非常に短い単語が戻ってきたので、「わたしは幼い頃、花壇の花を引っこ抜くという大罪を犯したのですわ」と真顔で告白したが、そのお陰で彼が肩を震わせ笑いを堪えるという非常にレアなシーンを目撃出来たので、まぁこれは黒歴史には入らないだろうと思う。彼の気も晴れたようで何よりだ。
+++
前述した三人の有力貴族子息と、一応は幼馴染という関係に収まったわたしは、その繋がりから王宮で行われた王太子の誕生パーティーに招かれた。といっても、10歳のお子様らしいティーパーティーであったが。
ちなみにわたしのドレスはバージニア卿が用意してくれた。この頃のバージニア卿の口癖は「そろそろ我が家に住みませんか?」だ。愛が重い。このドレスの物理的な重みは、彼の愛の重みでもあるのだろうか。
この日が初対面の王太子アルカディアは、やはり他の面子と同じくわたしを一目見て固まった。もう何の意外性も無いわ。お前らがわたしを受け付けないという事はよく分かったが、どうせならもっと面白味のあるリアクションを寄こせ! というのは高望みだろうか。
アルカディアに誕生祝いを述べたわたしは、トイレに行くフリをしてまんまと王宮内に侵入、そのまま迷子のフリをして王宮図書室に潜入し、どうしても読みたかった稀少な高等魔導書に没頭した。情報をくれたエコー様には感謝している。
そうして出会ったのが王弟のセーラム様だった。
幼少のみぎりから少女のような澄み切った美貌を装備していたセーラム様は、そのせいで男共から腐った視線を向けられまくり、更には成長過程で艶めいた美貌に進化してしまったせいで女共からも色と媚びにまみれた視線で狙われ、結果、見事なまでの人嫌いになったという不憫な人だ。
不憫過ぎて兄である国王すら彼に嫁を娶らせる事を断念したらしく、だからといって何もさせない訳にはいかないと、大して仕事の無い図書室長に収まったという事らしい。
しかしわたしは、彼の気の毒な成長過程も、ましてや彼の艶っぽい美貌にも一切興味は無く、図書室内への無断侵入を咎められたファーストコンタクトの際、かけられた声にちらりと視線を上げ一瞥をくれたものの、「これを読み終わるまで待ってくださいますか」とすぐさま手にした本に意識を戻すという、礼儀も何もあったもんじゃない対応をしてしまった。あれは即座に処刑されても文句を言えないレベルだった。現在首が胴に繋がっているのは奇跡に等しいな。
言い訳をさせてもらうなら、わたしはその時点で彼が王弟であるなどとは知らなかったのだ。知らんおっさんに何か言われた、程度の認識だったとは口が裂けても言えんが。本気で首が飛ぶ。
わたしの無礼千万な態度に、怒るどころか「私の外見に興味を示さぬとは。風変りな子供だな」と感心を含んだような呟きが聞こえてしまったので、どれだけ自分の容姿に自信満々なんだこのおっさんは、と胡乱な眼差しで見つめてしまったが、これもどう考えても処刑案件だ。ちょっと過去のわたしをぶっ飛ばしてきたい。誰か、ドラム式のタイムマシンをわたしにプレゼントしてくれ。
無礼な振舞いを咎める事もせず、逆に彼の美貌に心動かされないわたしに興味を持ったらしいセーラム様は、その場で王宮及び図書室への立ち入り許可証を発行してくれた。何という心の広さ。名だけの幼馴染四人衆に見習わせたい。
許可を貰えたのならばと遠慮なく図書室に通うようになったわたしに、彼は初めの内こそ警戒心を捨てきれないようだったが、わたしが彼の容姿に道端に生えている雑草程にも興味を示さない事が分かると徐々に距離を詰め始めた。
しかしながら読書中に話し掛けられるというのは迷惑行為以外の何ものでもなく、かなり雑にあしらっていたら更に気に入られ、さほど時をおかず全力で愛でられるようになったのには心底困惑した。
菓子を振る舞われたりする程度なら良かったのだが、頭を撫でたり頬をつついたり、書にのめり込むわたしの髪を勝手に梳かし髪型をいじってみたり、果ては足の爪に染料を塗ってみたりと物理的に邪魔臭い行為に及ばれるに至った。わたしは人形では無いのだが。
ついつい「鬱陶しいので触れないでくださいませ」と口が滑り、ああ、さよならわたしの首・・・と白目を剥きかけたが、特に何の処罰も無いどころか、更に更に好感度が上昇するという摩訶不思議アドベンチャーな体験をしてしまったわたしは、人生に措ける運というものを使い果たしてしまったのだろうか。
15歳目前のある日、「ミディアは書を愛し過ぎだな。その関心の一割でも私に向けてみろ。もっと可愛がってやるから」とセーラム様に言われ、愛され過ぎて人嫌いになった奴が何を言っているんだ、と思ったものの、まさかそれをストレートに伝える訳にはいかず、「わたしは書を愛している訳ではございません。いずれ国のお役に立てる日が来る事を夢見て、今はひたすら知を得る時期だと心得ております」と別の意味での本心を伝えた。
国の役に立ち処刑回避、これがわたしの一番の望みだ。それ以外の事は何もかも後回しである。
例え己の価値を高めるため知を得る事に没頭し過ぎる余り、一人の友人も居なかろうとも、そんなものは処刑回避後にどうとでもなる。・・・どうとでもなると良いな、と願っている。ボッチでは無い。孤高と言ってくれ。あと、これは涙では無く汗だ。塩辛いから間違いなく汗だ。
+++
これでようやく四人の幼馴染やその父兄ついて語り終えた訳だが、もう一人、幼馴染とは全く関係無く重要な人物が居る。
12歳の頃、わたしはもうかなりの魔力を保有していた為、使い切るのに苦労していた。強力な魔法を乱打しては家を壊してしまう。まだ家なき子になるつもりは無かった。
しかし使い切らぬと魔力量の底上げが出来無いので、苦肉の策として街を覆う程度の探査魔法を展開し、常時魔力を垂れ流しにするという方法をとっていた。その際、王宮だけは避けていたのは、ひとえに王宮警護の魔導士にいらぬ嫌疑をかけられぬ為である。
探査魔法自体に更に隠匿の魔法を上掛けしていたので、余程の事が無い限り気付かれたりはしないと自負していたが、万が一の危険を避けるわたしは本当に保身に関して一流であったと言えよう。
そんなある日、腐った侯爵である父親の部下の一人が死にかけているのが探査魔法に引っかかった。
彼はわたしが前々から目を付けていた男で、と言っても艶めいた話などでは無く、彼を死なせてしまった事も処刑を重くした一因であると知っていたからだ。
腐った父の駒として陰で優秀且つ非道な手腕を発揮する彼は、物心つく前に拐かされ、否応なしに裏社会に落とされた隣国の高位貴族の子息であるという驚愕の事実が処刑前に明かされる。とんでもないご都合主義ぶりだな。まぁそれがゲームというものか。
そんな彼を死なせずこっそり救っておけば、わたしの連座回避に一役買ってくれるだろうという多大なる下心を抱き、即時救出に向かったあのフットワークの軽さは我ながら称賛に値する。
助け出した彼に治癒魔法をかけていたところ、彼の体内に違法薬物の影響を発見した為ついでとばかりに完治させてしまえば、こちらが引くほど感謝された。彼が死にかけていたのは腐父の内情を知り過ぎた事による切り捨てであった為、感謝の念もひとしおだったのだろう。
ちなみに違法な薬物は彼が進んで摂取していた訳では無く、我が腐父が裏切りの可能性を潰すため全部下に強制的に摂取させているのだと聞き、今すぐ殺した方が良いのかと思案してしまったが、しかし親殺しは大罪な上、相手は侯爵だ。連座どころか、確変を待たずして処刑の大当たりを引く羽目になる。そんなフィーバーはお断りしたい。
だからと言って、一切知らぬふりをしてやり過ごせば、これから腐父処刑までの数年間で薬物に蝕まれ消えてゆく命も数多くあるだろう。
自分の身は可愛いが、さりとて多数の屍を踏み付け成り立つ命など、どう考えても後味が悪過ぎる。
悩んだ末、日課として行っていた探査魔法の展開を中止し、代わりに違法薬物の影響を取り除く治癒魔法を国中に展開する事にした。お陰でわたしの魔力消費量は桁違いに上がり、またしてもバンバン倒れる日々が再来したが、起きる度に魔力量も増し増しになっていた為、逆に歓喜したというのは余談だ。
これは決して良心からの行動などではなく、ある意味別種の保身であるという、終始一貫した己の保身しか省みぬ行動は我ながらえげつないと思ったが、助けた腐父の元部下はそうは思わなかったらしく、「俺は貴女に出会う為にここまで生き永らえてきたのでしょう。どうかお側に置いて下さい。そして、貴女の手足として働く事を許可して頂けませんか」と大げさな忠誠を誓われる事となった。
まぁこれで、連座の際何らかの口添えをしてもらえるかと捉えたわたしは、真実自己保身しか考えていなかったと言えよう。4歳からこうして生きてきたのだ。この性質は変えられん。
彼は今までの己を捨てわたしの下で生き直したいと願った為、新たにベヴェルという名を与え、腐り果てた父母との決別まで力を貸してもらう事にした。
そうして忠実な部下を得たわたしは、その頃から腐父の汚職や薬物売買ルートのあぶり出し、おまけとして母の放蕩の実体などの証拠を揃え始めた。
わたしはヒロインちゃんをいじめる予定は無かったので、そうなると幼馴染四人衆はいじめの証拠固めをしない可能性が出てくる。イコール、我が家の惨状に気付かれない可能性があるという事だ。だったら自分でやってしまおう。
連座さえ防げれば、侯爵家がどうなろうと知った事では無い。むしろ、こんな家は早々に潰れるべきだ。自分の命さえ助かれば、その後は市井に紛れ好きに生きていくさ。
正直、貴族として生きていくつもりは欠片も無かった。ドレスが重いんだよ。髪も肩より短くしたいしな。こんな重装備でよく世のご令嬢は潰れず立っていられるなと、ほとほと感心する。
非常に優秀なベヴェルの働きにより、証拠は着々と集まっていったが、彼には無理をする事だけは禁じた。万が一、死なれてしまっては元も子もない。わたしの部下としての作戦行動中に死なれては、どう考えても連座の危険性が高まる。
わたしの為に働く事こそ至高という早くも忠誠心MAXな彼に、「ベヴェルはわたしの手足なのだろう? 手足がもげた状態でわたしに生きろと言うのか? お前が傷付くというのは、そういう意味だぞ」と脅しにしか聞こえない説得を施した結果、無事聞き入れて貰う事は出来たが、忠誠心が更に上がったのには当惑した。おい、既にMAXだったんじゃないのか。お前の忠誠心は天井知らずか。そろそろ打ち止めろ。そこまでの忠誠心は求めていないぞ。
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こうして程々の人間関係を築きながら成長していったわたしは、15歳になった少し後に学院に入学した。
さあ、ここからが正念場だ。
己の身を賭けた戦いがここから始まるのだ。
気を抜けば処刑へのルートを歩む事になる。
持ち得る全ての力で、絶対に回避してみせるのだ。
そうしてわたしは、肩透かしという言葉の意味を身を以て知る事となる。
全ての意気込みが無駄であった。
何故ならわたしは、学院在籍時にヒロインちゃんや幼馴染四人衆と関わる事が一切無かったからである。ヒロインちゃんに至っては知り合ってもいない。
何せ、学生という身分である筈のわたしは、そんじょそこらの大人など目でない程の多忙を極めたのだ。完全に労働基準法に抵触していたぞ、あれは。労働基準監督署にタレ込むべきか。
原因は、ここに至るまでに関わり合った大人たちにあった。
わたしが入学した直後より、例えば国政についての会議だとか、例えば国防にかかわる魔法防壁についてだとか、例えば国軍と魔導士とのシミュレーション戦を行うだとか、果ては他国より珍奇な魔導書が寄贈されただとか、そういった諸々の理由で学院外に呼び出される事が頻繁にあったのだ。
学院に入学した生徒は原則、卒業時まで長期休暇を除き学外へ出る事は許されない。
だというのにも関わらず、バージニア卿はわたしが13歳の頃に宰相職に就き、エコー様はわたしが14歳の頃に史上最年少で魔導士長に成り、ラーク卿はわたしが入学する直前に軍隊長の役職を拝命し、そしてセーラム様は元々が王弟という立場であった為、各自権力にものを言わせ一介の学生であるわたしを呼び出す事が可能だったのである。権力の不当行使もいいとこだ。用事があるなら何故入学前に済ませておかない。呼び出される方の身にもなれ。
学院側としても、生徒の一人であるわたしが国の役に立つのならばと毎回喜んで送り出していた。体調不良により寮で安静にしているとの理由を捏造してくれる程の至れり尽くせりぶりには、乾いた笑いしか出てこなかった。脳内に流れるドナドナは前世の名残だな。
そのせいでますますもってわたしが病弱なご令嬢であるという認識が強まったようだが、これは完全に風評被害であると言えよう。
わたしとしても国の役に立つ機会を逃す訳にもいかず、むしろ国に恩を売りつけるぐらいの気迫で彼らのある種の無茶振りをこなしていった。何かしらの手柄を立てる度に振る舞われる高額なサラリーも魅力的であったと追記しておこう。
学外に出たついでにベヴェルとも連絡を取り合い、取り揃いつつある証拠の確認や次の指示を下し、あくせくと働き回る内に時間はどんどん流れた。
父母処刑のカウントダウンは着々とその数字を減らしつつあった。二人はどうしたって逃げられないだろう。というより、逃がすつもりは無い。害悪が生きていても仕様が無いのだ。
願わくば、わたしがその害悪にカウントされない事を祈るのみである。まぁ、祈るだけではなく自ら動くが。天は自ら助くる者を助くという諺を体現してみせようではないか。