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もしも俺が女になったなら  作者: 椎名
第一章 人生の転機(悪い意味で)
2/5

新しい体になった(2)

カーテンがシャッと開き、看護師さんが慌てて入ってくる。


「佐藤さん、大丈夫ですか?!」


看護師さんの問いかけに俺は


「・・・ひゃい。」


と答えた。

まともな発音ができないって分かりきっているのに、声を出すっていうのは結構勇気がいるもんだ。


すると看護師さんはとても驚いた顔をしながら「先生!佐藤さんが目を覚ましました!先生ー!」と叫び、どっかへすっ飛んで行ってしまった。

おいおい、せめて俺のことをベッドに上げてくれよ・・・。

つーか俺、かなり悪い容態だったんだな。


しかしまあ、1分も経たぬ内に先生らしき人と俺の母が入ってきた。


「祐作!」


母さんが一目散に俺に駆け寄り、抱き着いて来た。


「まあ・・・女の子になってしまうなんて・・・・」


・・・・・・・・・。


はい?今、俺の事なんつった?

俺が女の子だって?どういう事だ?意味が分からないぞ???


混乱している俺をよそに、先生が口を開いた。


「初めまして、祐作君。私はさかき 秀雄ひでお。この病院で脳外科で執刀医をしている。実は君の手術で少し手違いが発生してしまってね」


脳外科だって?なんで脳?もしかして身体だけじゃなくて頭まで変な風に打ち付けてしまったのか?いや、まずはそんな事より-


「へひがいっへなんれふか・・・?」(手違いってなんですか・・・?)


「まず順を追って話そう。まず君は高さ50mの橋から転落して身体がズタズタ、まあ単純に言えば身体が使い物にならない状態で運び込まれてきたんだ。だが脳だけは奇跡的に無傷だったんだよ」


はて?脳は無事なのか。そりゃよかった。

榊はそのまま話を続ける。


「だから私は脳移植を行うことにした。脳死した人の新鮮な身体を手に入れて脳を入れ替えたんだ。一応過去に3回脳移植に成功していたからね。手術自体は何の問題もなく終わったんだ」


脳移植の話は俺も聞いたことがある。臨床実験も完了し、既に医療技術として確立されているものだ。ただその難易度と悪用を防ぐために、この手術が出来る医者はほんの一握りなんだよな。

まあ、手術が無事に終わってるなら何の問題も無いように聞こえるが。


「だが取り寄せた身体にミスがあった。本来君は男の子だから男の身体を取り寄せて入れ替えるべきなんだが女の身体が来てね。しかも手術は全部うつ伏せ状態で行うし、君の容態は一刻を争うものだったから・・・終わるまで誰も女の身体だって気付かなかったんだ」



な、な、


なんだってーーーーーーーーーーー?!


看護師が俺に向けて大きな鏡を向けてくれた。

そこに映っていたのは、紛れもなく、女の子の体だった。

肩までかかるセミロングの茶髪、顔立ちはハッキリしていて目は大きい二重。胸はDカップはありそうだ。くびれもちゃんとあるし魅力的な身体じゃないか!

ああ~可愛いっすね~・・・じゃなくて!


「ひぇ、ひぇんひぇい・・・もういひと、ひゅひゅつでひないんれふか・・・?」(せ、先生・・・もう一度手術できないんですか?)


「すまないが、それはできない。本来脳なんて移植できる代物じゃないんだ。それを無理矢理やっているんだ、一回が限界なんだよ」


そ、そんな・・・。俺はもう、女として一生を過ごすしかないのか・・・?


「ああ、それでまあ今回はこちらの手違いということで・・・お詫びとして手術代はタダ、今後の面倒も無料で見るという事でこの問題は解決しましたので」


「ごめんね裕ちゃん。さすがにお母さん1500万円の手術代なんて払えなくて、この条件で同意しちゃったの」


な・・・・何やってんだアンタはあああああああああああああああ?!





先生と母さんが出て行ったあと、俺はしばらく考えていた。


正直、俺は一瞬、条件を飲み込んでしまった母さんのことを嫌いになっていた。

だがよく考えてみろ。元はと言えば俺が橋なんかから落ちるのが悪い。

母さんはきっと縋るような気持ちで脳移植を選択したはずだ。そうすればきっと俺は助かる、そう信じて。

今回みたいな例外が発生しない限り手術費用がタダになることはない。つまり母さんには払う覚悟があったということなのだ。


・・・ありがとう、母さん。

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