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私の中の知らない世界

  今年の夏は幸せだったな。喫茶店で昼間の忙しい時間をを過ぎるとあの夏の日を思い出す。春奈と海に行って、悠斗くん会えて一緒に遊んで花火も出来て。ここ最近で一番の出来事だったかも。

  それに悠斗くんが「迎えにいく」ってはっきり言ってくれた。幼い頃に約束した「指環」をもって。私の恋心はすでに消えたかもって思ってたけど、ちゃんと生きてた。ううん、あの日に目覚めた感じがする。私は右手首にある、あの日悠斗くんからもらったブレスレットにそっと触れた。星型や貝殻、クリスタルにローズクウォーツ。そして小さいけどきらきらと光って自己主張の強い石。まさかダイヤモンド……なわけないよね。



 *****


 side悠斗


  秋奈、ちっちゃくなってた。綺麗になってた。可愛くなってた。好きという気持ちが加速した。

  大和と春奈に言われた、生徒会長が秋奈を狙ってるって。あの海の秋奈に話しかけていたヤツラは簡単に潰せたけど。

  まぁ俺の秋奈って分からせれば生徒会長は大人しく身を引くか。手を汚すのは最終手段、秋奈が生徒会長に目を向けた時点で動くつもでいる。そんなことにはならないと思うが、それに秋奈にはブレスレットをプレゼントした。俺とお揃いのブレスレットだ。ローズクウォーツは使ってないが、星型と貝殻とクリスタルそしてラリマーのみだ。ダイヤモンドは俺から秋奈への思いは『永遠の絆』、『永遠の愛』ちゃんとした「指環」はすべての決着が着いてから。まぁ、大人になるまで保険で「指環」をプレゼントするかもしれないが。

  いらぬ害虫が増え出したから、早めに対処しないとな。


  学校が始まり、俺はアイツを呼び出した。生徒会長ではない、俺の昔からずーっと会いたくて、会いたくて焦がれてた人。

  「ごめーん、待った?」

  「いや俺もさっき来たところ、ごめんね天間さんこんなところに呼び出して」

  ピンクブロンドをなびかせて、自身が一番の可愛く見えるような微笑みを見せる。そんなことをされても、俺の心はピクリとも動かない。

  「あーっ、もしかして。次の休みのデートのお誘い?どーしようヒメ嬉しい。夏は悠斗と全然連絡つかないんだもの。学校始まってすぐに誘ってくれるなんてヒメうれしい」

  同じクラスの天間姫乃。幼い記憶の『ひめちゃん』と同じ名前だったから気にしていたけど、最近ようやく本人だと確信が持てた。

  秋奈のことを考えたらもっと早く、行動に移すべきだった。そしたら夏祭りやプールも2人で行けたのに。

  「ヒメは予定空いてるよ。どこ行く?温水プールもいいよねまだ暑いし。それとも、遊園地もいいかも。ヒメねメリーゴーランド乗りたいな」

  笑いが出そうだ、俺が天間をデートに誘う?そんな時間があれば秋奈を愛でる。

  「どーしたの。遊園地いや?そーだなぁ、映画でもいいよ。今話題の恋愛ラブストーリー上映してるよね」

  んー、ヤツはと口元に指をあてて考え込む。

  「天間さん」

  「やだぁー。そんな他人行儀。ヒメって呼んで、ね」

  誰が呼ぶか。コイツの話を聞いていたら話が進まん。

  「きみって『ひめちゃん』だよね、昔よく一緒に遊んだ」

  するとコイツはえっという驚きの表情をする。「なんで、こんなイベントあったっけ」そんな呟きが耳に入る。

  「あれ違った?俺が探していた『ひめちゃん』ではないの」

  『俺が探していたひめちゃん』って部分を強調をして話す。コイツで間違いがあるわけない、俺が探して探し求めた秋奈と俺を引き裂いた『ひめちゃん』が。

  「そ、そうなの。私がその『ひめちゃん』です。昔、私にプロポーズしてくれたよね」

  はぁ、これで全てが終わりそして始まる。やっと、やっと秋奈に触れられる。

  「よかった。俺はずっと探してたんだ。会えて嬉しいよ」

  顔がゆるむのは仕方がないよな、ずっとこの時を待ち望んでいたのだから。

  「わ、私も。会いたかった。悠斗に会いたくて会いたくて。夢みたい」

  「それは良かった。分かってると思うけど、プロポーズなんて子供の戯れ言本気になんてしてないよな」

  「え、なに」

  俺の声のトーンが下がってしまった。脅してるように聞こえたかも、まぁ脅しだけど。

  笑うは疲れるけど、円満解決を目指すから表情だけは堪えないとな。

  「俺は幼き日の思い出をなかったことにしたくて。覚えてなければ一番だったんだけどな。覚えていたみたいだし、あんな幼稚園児の言葉に効果はないけど母親との約束は守らないと、だろ?」

  あの時の軽はずみの俺の言葉。こんなに長く縛られるなんて思ってもいなかった。だけど約束は約束、自分で決めたことだから解決しないと。

  「ちょっと、どーいうこと?話が違う。悠斗と恋人なって、結婚するのは私でしょ。なんで、そんな言葉が出てくるの?愛されるのは私のはずなのに、悠斗は私を愛してないの」

  「五月蝿い、俺がお前を?冗談じゃない。あ、それからもう二度と俺に話しかけるな。電話やメールもだ、個人的にlineも送るな」

  これで話は終わりだ、もうコイツには用がない。

  「なんで、なんでよ!なんで、なんで。なんで、なんで」

  どさっと天間が座り込む。それを気にせず俺は屋上を後にした。


  「なんで、なんで。なんでこうなるの。イレギュラーばかりでイベントが進まない。そうだわ、リセットしたら。そうよ、入学式の前までにリセットして最初から始めればいいんだわ。そうしてやり直すのよ始めから。さすがヒメって天才ね、そうすれば悠斗だって大和だって浅井生徒会長だって私の物だわ。あは、はははっ」

  屋上の扉が閉じる前にヤツの声が聞こえた気がした。もう俺には関係ないがな。

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