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私の中の進んでる世界

  「夏だ、海だ、太陽だーっ」

  うんうん、今日も叫んでいる春奈は可愛いです。

  今日は春奈と一緒に海に来ています。せっかくの夏なんだもの、たまには私と遊んで欲しかったから今日は嬉しい。

  春奈は肩までの髪をひとまとめのお団子にし、胸元にピンクビックリボンが着いてるビキニの水着。ショートパンツは履いてるけどね。で、私は腰までのストレートヘアで水色のシフォンショルダーのビキニの水着で腰にパレオを巻き付けています。

  「あき姉ーっ、私浮き輪とパラソル借りてくるねー」

  あぁ行っちゃった。春奈1人で持てるのかな、でも行き違いになったら嫌だし。待っていたほうが無難かな。

  「ちょっと、そこの綺麗なおねぇーさん」

  気がつけば男の人達に囲まれていました。なんかチャラくて、軽くて遊び人って感じがする。でも綺麗だなんて初めて言われたかも。

  「やばい、激かわっ。1人?友達と来たの?俺達は2人で来たんだ」

  「一緒に泳がない?ビーチバレーでもいいよ」

  「海の家でまったりする?いやー見れば見るほど可愛い」

  「どしたの?早くいこ」

  「早く早く、俺達と楽しもーぜ」

  可愛いなんて春奈しか言ってくれないし。じゃなくて男の人達に口を挟む間もなく話しかけられた。

  「妹と泳ぎに来てるので、あなた達とは泳ぎません」

  可愛い可愛い春奈と来てるのに他人と過ごすわけないでしょ。

  「ヒュー妹だって。ぜってぇ可愛いよな」

  「いやっほーっ今日の俺達ついてる」

  いやいや、ハイタッチしてるけど「遊ぶ」なんて一言も言っていませんから。

  「だから、遊ばないって」

  「まーまー。行こうぜ」

  いい加減にしてほしい、まったく。春奈との時間がなくなっちゃうじゃない。

  ふと視界が陰った。えっ誰?

  「秋奈。行こう」

  懐かしい声がしてそのまま手を繋がれた。そして、チャラそうな男達を無視して歩きだす。

  「おいおい、待てよ」

  「そうだよ。そのきれーなおねぇーさんは俺達の」

  歩き出した足をピタリと止める。

  「はぁ?秋奈が、ありえん。その顔でぇ?あり得ねーし、鏡をよく見て出直してこい。それとも……」

  「ちょっと、悠斗くん」

  そう、私の手をつかんだのは、入学式以来に見る悠斗くんだった。なんでこんなところにって思わなくもなかったけれど正直助かった。

  「秋奈は気にしなくていい」

  私だけを見て、私だけに話しかけてくれるなんて何年ぶりだろう。でも直ぐに悠斗くんは男達に視線を戻す。

  「なんだ、男いたのかよ」

  「おい、行こうぜ」

  声に怯えが含まれていたようだけど、そのまま走っていなくなった。

  「秋奈、気を付けないと」

  「う。ありがとう、悠斗くん」

  好きで声をかけられていたわけではないのだけどな。

  「それに目に毒だから、これ着て」

  そう言うと、今まで悠斗くんが着ていたパーカーを脱ぎ私の肩にぱさりとかけてくれた。

  鼻をくすぐるように悠斗くんの香りがして、どきどきする。

  私はまだ悠斗くんのこと好き……なんだろうな。


  「あーきー姉。おまたせっ」

  「春奈っ」

  もう、遅すぎだよ。でも、春奈が遅かったからこそ悠斗くんに会えたのかな。

  「ごめーん、大和と会って。あれ、ヘタレもとい悠斗がいる」

  「あ。うん、さっき会って」

  ナンパされたことは言わなくても良いよね。余計に心配をさせるだけだし。

  「は、はぁーん。なるほどね、あき姉せっかくだから4人で遊ぼう、ね?」

  私の肩にはさっきまで無かったパーカーがあるし、それで何となく春奈が気が付いたのかな。

  「ちょっと春奈、勝手に決めちゃダメでしょ。悠斗くんと大和くんも用事があるのかもしれないじゃない。それに今日は春奈と2人っきりで遊ぶはずだったのに」

  4人で遊ぶことは、悠斗くんも大和くんも了承しないと思うし。可愛い春奈と海で遊ぶの楽しみにしてたのに。

  「ない」

  「そうだね、春奈と秋奈姉さんと遊ぼっか」

  はい、多数決で負けました。私は嬉しいけどいいのかな?ちらっとすっかり背の高くなった悠斗くんを見上げる。

  「秋奈のそばに、今日はいる」

  繋いだ手に力がこもる。

  「悠斗くん」

  「今日だけは。でも、もうすぐだよ秋奈。ちゃんと指環を持って会いに行くから、俺を待ってて」

  あの幼き日の約束が浮かんでかる。目頭が熱くなり、顔を悠斗くんに見せられなかったけど、私も繋いだ手に力をこめた。


  泳ぎに疲れてビーチパラソルで休みながら、はしゃいで遊んでる春奈と悠斗くん達を眺める。もう私の体力が限界です。

  悠斗くんますます素敵になった。横に並んだり、手を繋いだり。体温が感じれる距離だったり、今も悠斗くんのパーカーに包まれて本当に幸せに。

  顔が熱いのは太陽の光りだけじゃないよね。

  「なーに、見ててるの。あき姉」

  「春奈。もう遊ばなくていいの?」

  どかっと私の横に春奈が座る。その手には何故か、かき氷。

  「あき姉も食べる?イチゴミルク」

  はい、とスプーンを私に向けてくるのでそのままパクリと飲み込む。少しも火照った顔が鎮まった気がする。

  「ありがと、春奈」

  「えへへ。それにしても今日の悠斗はいつになくテンション高いよね」

  幸せそうにパクリと食べる春奈。かき氷を食べてる春奈は可愛いのだけど、それよりも春奈が言った言葉のほうが気になった。

  「悠斗くん、テンション高いの?」

  「うん。やっぱりあき姉がいるからかな」

  春奈が悠斗くんに会わせてくれたのかなと思ったけど、その事には触れずに春奈の頭を優しく撫でる。

  「ありがと、春奈」

  「てへへへ。どういたしまして。そういえば、あき姉に聞きたいことがあったんだよね。あき姉は生徒会長の浅井那岐さんって知ってるの?」

  思い出したように春奈が言う。かんざしを買った次の日、春奈ががいない時間だったけれど珈琲を飲みに来ていたのを思い出す。

  「うん知ってる。マスターの従兄弟だって。かんざしを買った時に荷物持ちしてくれたの。紳士だよね」

  「あぁそれで……」

  春奈は残ったかき氷をザクザクとストロースプーンで氷を崩す。

  「それがどうかしたの?」

  「聞いてみたかっただけ。ご馳走さまでした、これ捨ててくるね」

  生徒会長と春奈には特に接点なさそうだけどね。何かあっても大和くんが守ってくれるだろし心配することはないよね。

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