私の中の新しい世界
あ、なんだか懐かしい夢を見ていた気がする。
悠斗くんと春奈と遊んだ日々が、今は本当に懐かしい。そんな春奈も今日で高校1年生か。って今何時!?
「は、春奈っ。起きてる??」
今日は春奈の入学式、奇しくも悠斗くんと同じ高校らしい。そして今日が入学式で保護者として一緒に高校に行く予定だったのにすっかり寝過ごしてしまった。
ばたばたとリビングにいると、落ち着いた様子で制服に着替えた春奈がいた。
「もーっあき姉、おそーい。朝食用意出来てるよ」
食卓には朝食が並び、もぐもぐと食べている春奈。よかった、寝坊したの私だけだった。
「あき姉、私は大和と学校行くから先にいくね?ちゃんとお化粧してくるんだよ。っごちそうさまっと」
「う、うん。もちろん」
なんか春奈が一気にお姉さんになったみたい。
あっと私も支度しなきゃ、パパとママの代わりに春奈の成長を私がちゃんと見守るからってなんだかジーンとしちゃった。
私は高校を卒業した後、喫茶店でそのまま正社員と雇ってくれることになった、マスターには本当にお世話になって。ただそれだけでは生活が苦しくなるかもしれないから、夜は居酒屋でアルバイトをしているの。彼氏なし歴と年齢がいまだに同じという生活。
春奈には相変わらず大和くんがいてくれるから、そろそろ恋愛活動を開始してもいいかなと思えるようになってきた。喫茶店や居酒屋でも声をかけてくれる人はいるんだけど、いまいち……ピンっというかこの人ならって思える人がいなくて、やっぱり恋をしたいなって気持ちもちゃんとある。
悠斗くんは未成年でそう未成年だもんね、って違う悠斗くんのことは諦めてる。そうそう、諦めた……ん、だった。
たまに春奈が写真を見せてくれたり、たまーにちらって見かけることもある。悠斗くんは益々カッコよくなった。だってスポーツで、勉強も出来るらしいし。中学生の頃からファンクラブも出来きたと、春奈言っていたのしかも同じ学校の生徒だけじゃなくて近隣の子たちもファンクラブに加入しているらしいし。バレンタインは悠斗ママからチョコの差し入れが大量にある、既成品のみだけいただいてます。悠斗くんは手をつけないらしく余っても仕方がないので悠斗ママが春奈に手渡してくれるの、今までは私が受け取っていたのだけど今は遊びに行くこともなくなったから。
身長も180㎝を超えて、アイドルやモデルに負けてないルックスでファンクラブがあって当然って感じはするもん。今じゃ、アイドルに恋をしている追っかけ気分。って違う悠斗くんの事は諦めてるから、恋じゃない恋じゃないもん。
つくづく私の世界が、悠斗くん一色だ……った。と思う。悠斗くんは過去形過去形、今一番大事なのは妹の春奈だもん。
春奈の学校は『陽春高校』という、特待生制度も充実しており入学金減額や授業料免除、学食優待券などなどがある。春奈はとても優秀で、特待生制度があるこの学校を選んだらしい、好きな学校に行かせてあげたかったけどそのおかけで春奈が大学生として勉強できる資金繰りの目途が立った。
大和くんは春奈が通う高校に行きたいから受験したらしい、相変わらずのラブラブカップルですこと。それでも学科は違うのはちゃんと将来の事を考えているのだと思った。そして悠斗くんも春奈と同じ高校を選んだ理由が謎らしい、家から一番近いわけでもないのになぁ。
と、悠斗くんは置いておいて、春奈が過ごす高校生活が楽しいものになるといいな。
入学式に向かう道すがら変な人を見かけた。桜並木に佇む女性というのは普通だと思う。でもね、私に背に道の真ん中に突っ立っている女子生徒を発見。そう、道の真ん中でという部分がポイント。ピンク色のウェーブヘアで腰ぐらいまである髪の毛、手を挙げて落ちてくる桜の花びらを拾おうとしているのかなとも思った。でも、道路の真ん中だよ?学校の正門前の通り道だよ?まるで、私を見てみて~って周りを意識しているかのようで……えっとナルシスト?っていうだっけ、ただ私の中の危ない人認定しました。あとで、春奈にも言っておかなきゃ。
歩道で、車とか人の往来の邪魔にならないところだったら、きっと私も気にならなかったのに。
きっとこの子も入学式に参加するんだと思うけど、ここにいて良いのかな?
……まぁ、いいっか。
あの後もちょっと不思議な出来事があった。新入生代表が悠斗くんで彼が壇上に上がるたびに黄色い悲鳴が飛び交う飛び交う。話をするたびに甲高い声が響く響く、特に注意をしない学校に不安を覚える。もしくは日常茶飯事だから注意しないと意味がない、とか?
生徒会役員の説明もあったけれど、どこかのアイドルグループかのようなルックスでした。まぁ悠斗くんには負けるけれど。生徒会長の話もやっぱり黄色い声と野太い声がコラボレーションしていた、つまり男性にも人気があるらしいってこと、らしい。
そしてその生徒会長のあいさつを遮るように、入学式が行われている体育館扉がどーんと開く。
「す、すみません、遅刻しましたー!!」
それはあの危ない人認定したピンク色のウェーブヘアの女子生徒だった。
軽く言葉を交し、自分の席に着席をしたようで何事もなかったかのように、生徒会長のあいさつが続く。何故か生徒会長と目がちらっと合ったような気がするけど、うん気のせい、気のせい。
この学校本当に大丈夫かしらと、ますます心配になった。私が通っていた高校がとてもまじめでまともだと思う。でも春奈が楽しそうだから今はこの学校に通うことが出来て良かったとも思う。
でも、あの生徒会長、どこかで見たことがあるような気がするんだけどなぁ?どこだっけかな、私の行動範囲は相変わらずに狭いから買い物に行くスーパーか勤め先の喫茶店か居酒屋ぐらいなんだけど。喫茶店のお客様、ではないと思う。これでも記憶力がいいほうなので、じゃあどこで会ったんだろう。んー、まぁいいか。そのうち思い出すでしょ。