表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

私の中の静寂な世界

 雨が降っている。

 私の心を表すかのような、激しい豪雨。私の心を映したかのような、鳴りやまない落雷。

 雨が降り続いている。


 立花秋奈、高校3年生。大学受験を諦め、ううん諦めざるをえなかった。不可抗力って言ったら怒られちゃうかな天国にいったであろうパパとママに。

 あの時は事はあまり覚えていない。泣け叫ぶ春奈と気が付いたら物言わぬ両親と対面していたらしい。他に頼る親戚もいなくて私は覚えていないんだけど隣の家、つまり悠斗くん家に助けを求めていたらしい。

だって、覚えていないんだもの。高校の制服を着て御仏壇の前に座りこんでいた時にふっと日付を確認したら、すでに1週間近く経っていたことに気が付いた。そこから今までの事を思い出そうとしても、空っぽだった。過去がすでに私の中から消えていたの。葬儀も、もろもろの手続きもすべて完了していたことも、春奈と悠斗くんパパに聞いてやっと自覚出来たから。

 この1週間、悠斗くんも私に付きっきりでそばにいてくれたことすら、私は覚えていなかった。


 春奈は1人で眠れなくなった、それは私も一緒だったから2人で眠るようになった。『大和』くんが朝と帰り春奈に付添ってくれていて少しずつ春奈が明るくなるのを感じると、私も決断をすることに決めた。

 今後のこと、これからの事。私の未来と、春奈の未来を。

 相談は悠斗くんパパにすれば良かった、そういえばママは『となりの家のご主人、腕利きの弁護士なんだって、なにか合ったら頼れるわね』って言っていたのを思い出したのもつい最近。

 私と春奈がこの家に住むのは特に問題ないみたい、必要なのは生活費や春奈の学費。両親の貯金や保険金には極力手を出さずにしようと決める。生活費は私が稼ぐようにしたい。春奈が希望すれば大学も行かせてあげたい。

 高校中退はしないで、バイトを掛け持ちして……。掃除も、料理もいままでやってきた。だから、大丈夫。

私は……うん、頑張れる。

 

 だから、悠斗くんごめん。わたし、春奈の為に頑張ることに決めたから。



*****


side春奈


 あき姉が変わった。笑わなくなった、というのは語弊があるかな。どこか無理して笑っている感じはする。私が中学生ってこともあるのかも知れないけれど、パパとママがし……死んでしまって。あき姉の負担はかなり増えた。

 あき姉はバイトを掛け持ちして、私は家事をすることになった。もっとも、簡単な掃除や洗濯ぐらいだけど。夕飯はあき姉のバイト先の喫茶店で一緒に食べて、あき姉が終わるのを喫茶店で勉強しながら待つ。その時間はとても有意義だ。勉強も出来てあき姉と一緒にいることができて、1人で家で待たなくてもいいから。

 大和とあき姉のおかげで、私はやっと笑うことを思い出した。でも、友達とは疎遠になった。だって『あしたパパとママと遊園地いくんだ~』とか『明日ママとショッピングなのー』とか、そんな会話に加わることが出来ないんだもん。大和は私の気持ちを感じってくれる本当に出来た恋人だ。


 問題なのは『悠斗』かもしれない。ちなみに、悠斗の事をクラスメイトに聞くと、『カッコいい』『素敵』『ハンサム』『イケメン』『容姿端麗』『才色兼備』とかとか、褒め言葉しか並ばない。つまり、もってもての変態男ってこと。100人のうち99人は恋人、彼氏にしたいと言うだろう。あ、私はあの変態ストーカー男には1ミリだって興味はありませんからね、大和一筋だもん。

 その評価に最近は『影がある』『男らしい』『寡黙』という言葉が増えてきた。それでも人気は落ちないから不思議なもんだ。悠斗に何かあったときは、たいていあき姉に何かあった時だからね。そのこと知っているのは私と大和だけなんだけど。


 あき姉もそろそろ、悠斗の事あきらめれば良いのに。あの自業自得のへたれ変態ストーカー野郎をいつまで待っても告白なんてしないだろうね『ひめちゃん』がいたら変わるかもしれないけど。あき姉から悠斗に告白するなんてこと、天地がひっくり返っても悠斗から『まってて』って言われている以上ないだろうし。


 あき姉もかなりもてる。高校のクラスメイトとか、バイト先の常連さんとか新規の常連さんとか。喫茶店のマスターが客層が若くなったし、お客さんが増えたし忙しくなったーっとか嬉しそうに言っていたもん。私は目立たないように奥で勉強しているけど、あき姉は笑顔で接客している、あき姉狙いの男性もちらほらいる、イケメンでなくても財力ばっちりって大人の男性であき姉と私のことを大事にしてくれる男性だったら反対派しないけどね。


 悠斗が先か、大人の男性が先か。さぁ、あき姉の未来は……。


 あき姉にな内緒だけど、こっそり悠斗にあき姉の手作りお菓子を差し入れしてます。だって悠斗が最近ほんとうにやばい。あき姉が悠斗の家に行かなくなったし、あき姉も悠斗に差し入れもしなくなったからだ。

 眼光で人を射ぬいてしまうんじゃないかってほど、大げさかもしれないけど。そうすると被害が及ぶのは私の大好きな大和だ。

 だから、ヤバそうな時は私のおやつを悠斗に回してる、そうすると悠斗が和らぐというの知っているのは私と大和と悠斗の家族。あき姉だけは知らない事実だったりもする。

 ちなみに、あき姉が働いている喫茶店の事を悠斗は知っている。私からは話してないから、自分で見つけたんだと思う。あき姉への執着心が手に取るように分かる、本当にこわっ。


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ