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私の中の留まる世界

  悠斗くんに避けられてから4年が経った。避けられてると言っても少し違うかもしれない。私から声を掛けたら悠斗くんは寄ってくるけど、悠斗くんからは近づいてこない。って状態が続いてます。

  悠斗くんが数人の子にプロポーズしていたのが発覚し、『みんなにごめんなさいってするまで会わない』ってママが言ってから遊びに来なくなっちゃった。一緒に過ごしていた時間が格段に減り、声も聞けなくなった。だから私は、ぽっかりと開いた穴をもて余すかのように、同じような毎日を繰り返している。何故か、子供の戯れ言ということはならずに本気で受け止めてる。私の初恋だからかなぁとも思うけど、周りには内緒。

  だからわざと忙しくした、土日は友達か春奈と過ごし平日はお菓子作りやパンを作り、手芸にも手を出して……。もちろん勉学にも励みました。

  悠斗くんが会いに来ることはなくなったから。私が会おうとしないだけで、簡単に隣同士でも悠斗くんとは会わなくなる。だからますます忙しいふりをして会いに行く理由をなくしてみた。そのせいか女子スキルは格段とアップしたとおもう。

  子供の戯れ言を信じているということを、誰にもばれたくはなかった。


  立花秋奈、彼氏なし片思いをこじらせている高校1年生になりました。まあ、恋人は欲しいとも思わないからいいんだけど。あ、決して強がりではありませんので。

  悠斗くんをひたすら引きずっている、ただのへたれ女です。

  本人には相変わらず避けられてはいるけれど、悠斗くんママとは仲良くさせていただいております。悠斗くんママ経由で誕生日プレゼントを受け取りったり、渡してもらったり。バレンタインデーのチョコを渡したりお返しにホワイトデーのキャンディーをもらったり。直接会うことはほぼ無くなったけれども、ささやかな交流は現在もこっそり続いています。


 そんな私の最近の趣味は、冬にぴったりな編み物です。夏に作るのはちょっと大変だけど、涼しくなり始めた今頃に編み始めるのは丁度いい。編んでも誰にもあげる人がいないでしょーっていう妹の春奈の言葉には、ぐさっと矢は刺さったけど。

  自分で手編みしたマフラーや手袋で冬を乗り切るなんて事が習慣になりつつある。だから編み物レベルはかなり高くなったと思う。私が編んでるのを知ってるのは妹の春奈を含む私の家族と、悠斗ママくらい。

 そんな春奈は夏に『大和』という彼氏が出来たらしい、まだ小学生なのに早い気がする。

  すでに、夏祭りデートやプールデートにも行ってるらしい。私も悠斗くんとデートしたいのに。それを、春奈に言うと『悠斗の事を諦めて、違う人と言ってくれば?』って可愛くないこと言ってくる。

  私にマフラーの編み方を教えてもらおうと、すり寄ってくるのは可愛いとは思うんだけどな。教えるついでに自分でもマフラーを編もうと思う。紺色の毛糸をメインにしてポイントにピンクと水色で可愛く作る。春奈には棒針で私はかぎ針で作る。余裕があればマフラーと手袋と帽子をお揃いでそろえたいなぁ。そして、ゆくゆくは悠斗くんに渡せたら……いいな、なーんて。

「あ、あき姉。そーいえば悠斗に最近会った?」

 あ、やばっ編み目飛ばした。……う、やり直ししなきゃ。勢いよく手がすべっただけなので直ぐに直る。

「あき姉?」

  悠斗くんの名前だけで過剰に反応しすぎだよね、私。

「な、なんだっけ。春奈」

 ぷくぅと頬を膨らませて、手に持っている棒針を膝に下ろした春奈。我が妹ながらとても可愛らしい。

「なんだっけ、じゃないでしょー。悠斗に会ったかって聞いたの」

 なぜ突然と思わないでもなかったけれど、私は首をふるふると振った。

「もう、春奈ってば。私が避けられているの知っているでしょう。悠斗ママとは言葉を交すけど」

 こっそり見てるのは、春奈は知られてはならない。一種のストーカーと化しているのも分かっているけど、見たいなぁ会いたいなぁという欲求を抑えるのは至難の業。

「あれ~っおかしいなあ。悠斗が突然機嫌が良くなったから、てっきりあき姉が絡んでるのかと」

「悠斗くんとは会っていないよ。あ、でも悠斗ママとはたまにお茶をするけど」

 そうそう、この間も手作りのクッキーとチーズケーキを持参してお茶したばかり。悠斗くんはサッカーの練習があっていないから是非って誘われたら断れないよね。

 お菓子も大量に作りすぎて、家に持ち帰ろうかとも思ったけど悠斗ママが後で食べるって言うから残してきたし、春奈用にはお菓子をちゃんと用意してあったから食べてくれるって言ってくれて助かったけど。

「ふーん、悠斗ママとか。そういえば、たまにお茶してるよね。私の分のお菓子もちゃんとあるから文句はないけど」

 頻繁にって程ではないけれど、数ヵ月に1回お呼ばれされるんだけど、その時は大抵悠斗ママからお菓子のリクエストをされる。悠斗ママはお菓子作りは出来ないらしく、その代わりに立花家の夕飯が2品増える。つまりは物々交換交換なの、お茶するだけで献立が増える、私が夕飯を作るときが多いからその日はちょっと楽が出来る。

  お茶会は主に近状報告。悠斗ママからは質問をよくされるの、最近は『彼氏は出来た?』『最近好きなことは?』とか私に関することが色々。秘密にすることもないから普通に答える。きちんと答えると悠斗くんの写真とか悠斗くんの最近あった事を教えてもらえるから、ここでこっそりでもないけど情報収集。

  「春奈も今度一緒に行く?今度クリスマス前の日曜に呼ばれているの。ケーキをリクエストされてて、せっかくだからブッシュドノエルを作ろうかと。家用はショートケーキを作るけどね」

  今から3ヶ月以上も先なんだけど、悠斗ママから招待状をいたただいたの。

 春奈には内緒なんだけど、今編んでいる可愛らしいマフラーを悠斗くんに渡すことなんて、少し考えていたり。紺色メインだからなんとか男の子用でいけると思うんだよね、まだ小学生だし。

「それって……。いい、あき姉だけ行ってくれば?きっと私は大和とデートだもん」

 デートって、お姉ちゃん寂しい。私もデートしてみたいなぁ、その相手が春奈と同い年の小学生。

  小学生同士なら微笑ましいかもしれないけどね、『まってて』と言われている以上、私から行動起こせないし……。


  「ほんとーに、あき姉ってば鈍い。悠斗がずーっと機嫌が悪かったのに、あき姉が悠斗ママとお茶会した日から機嫌が良くなるなんて知らないんだろうな。クリスマスも、邪魔したら私が悠斗に怒られるだろうし、あき姉ってほんとに分かってない」

  深々ため息をつく春奈。

  「あき姉の鈍感!」

  「えっ何になんの事??」 

  突然どうしたのかな、もしかして『大和』くんとのデートが楽しめるとか。でも、鈍感ってことは違うのかな?

  「はぁ、も~何でもないよ。気にしないで」

 何か腑に落ちないけど、気にしないでってことなので気にしないことにする。

  悠斗くん、マフラー使ってくれるといいなぁ。



 

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