一話:彼と彼女
フォルザー帝国軍とエレフセア連合国軍との戦争から5年。結局、連合国軍はあの戦争に勝利し、帝国軍を壊滅まで追い込んだ。が、もう一歩のところで帝王とその親衛隊を逃してしまう。これを危惧し連合国は捜索を続けているがまだ、消息が掴めていない。
今、エレフセア連合国は《十色》と呼ばれる強者達と、国の議会である、連合国統治議会の二つの勢力を中心に構成されている。広大な国土を十一に分け中央の区域を議会が、他の十の区域を《十色》が担当している。これからのお話は第十一地区、破壊王と恐れられた青年が担当している区域のお話・・・
第十一地区商店通りをその青年は歩いていた。黒のジーンズに黒のコート。髪も黒と黒ずくめだった。気だるそうに暇そうにふらふら商店を冷やかしていた。
(暇だ・・・あれだな。寂しいとウサギは死ぬらしいが暇で人間は死ねるってのが納得できるくらい暇だ・・・たわ言だ・・・)
「あぁ、暇だ。」
そう呟いた直後、メギャッというなにか砕けたようなような破砕音とともに地面にめり込んだ。
「ぎゃんっ!?」
何事かと顔を上げると、
「なら、仕事しろォ!」
と拳を握りしめ怒気をみなぎらせ鬼の表情で立っている少女が。年は16才ほどだろうか。顔は端正に整っている。綺麗というよりはかわいいというような顔つきだ。が、なまじ顔がいい分、表情がとても怖い。
「アンタがサボるからウチの仕事が増えるんだろォが!」
「くそ、いてぇな!貧乳のくせ「ブチ殺すぞ」」
「オイてめぇら」
・・・、胸はきれいに平らだった。
「つか、お前ができんならいいじゃん。ってことで・・・」
と逃げ出そうとする彼。
「アンタのサインとかが必要な書類とかがあんの。」
とドロップキックを決める彼女
「聞いてんのか?あ?」
「えーめんどいーやだー」
仰向けになってじたばたしている。
「アンタは子供か!駄々こねんな!貧弱!」
プチッ。
「言ってはいけないことを言ったな貧乳まな板ぺったんこ!」
プチッ。
「遺書の用意はできてるんでしょうねェェェェ!?」
一触即発の雰囲気が漂う、両者が飛びかかろうとする寸前!
「聞けやあああああああああああ!」
先程から呼び掛けていた男性がついにキレた!
「ん?誰よいたの?」
「気配がなかったな」
本気で気づいてなかったご様子のお二方。
「てめぇらァ・・・まぁいい。《漆黒》とその右腕だな?」
「「人違いです。」」
「あ、そうですかすいません、ってんなわけあるかボケェ!」
ノリのいい人のようだった。