舞い降りた一抹の希望
更に一週間後。
俺とキャプテンは誰もいなくなり閑散と静まり返る部室の中で、今日も今日とて無為なミーティングを繰り返す。
「まだディフェンダーがいる、ディフェンダーを獲得できればきっといける」
そう強がるものの、キャプテンは、サッカー部員を退部させた初日のような元気が明らかに無くなっていた。
そんなキャプテンを見て、俺は嘆息混じりに呟く。
「……もう無理だよ」
「何か言った?」
「そもそも無理に決まってんだよ漫画じゃあるまいし。漫画だって不可能だろこんな時期に部員集めるなんて」
「泣き言を言うな!とにかく行くぞ」
無駄と分かりつつもディフェンダー候補の一人、卓球部の福路田の勧誘に向かう。
「君もサッカー部に入らないかい」
「いや、無理」
状況を説明するのも虚しいくらい一瞬で断られる。
続いてラグビー部の多畑の元へ。
「ねっ、サッカー部入ろうよ、ねっ、ねっ、たのむよ、ねっねっ」
「うわきもっ、向こういけよ!」
段々壊れ始めたキャプテンを、多畑は汚物を見るような視線を送りながら拒絶した。
続いて、俺達は柔道部の畠山の元へ。
「サッカー、はあはあサッカーに、はあはあ頼む入ってくんないと、俺何するかわからないよ、はあはあ」
「ひっ、む、向こういけっ警察呼ぶぞ」
多畑に警察を呼ばれそうになり、俺達はダッシュで逃走を図る。
最後に俺達は耶麻仲のいる野球部の部室へ。
「うおーーーーうおーーーーサッカーにうおーーーー!!」
「ぎゃああああああ!!」
そして野球ボールや生卵をぶつけられ、命からがらサッカー部の部室に戻って来た。
血と生ゴミまみれになりながら、キャプテンが力強く言い放つ。
「と、いうわけでダメでした」
「…………」
「そ、そんな顔するなよ、なっ!」
「ど~でもい~よもう」
「う、完全に放心状態だ、だが蒼木、俺が何の策も用意してないと思ったのか?」
またあの顔だ。もう信用出来ないけど、例の自信満々のドヤ顔、これはきっと何かある……のか?
「え?」
「実はなこんなこともあろうかと保険として10人は既にスカウト済みだったんだよ」
半ばというかほぼ完全に諦めかけていた俺は、キャプテンの衝撃の発言に心が浮き立った。
「ま、マジで!?」
「ぶっちゃけマジだ、思い描いたメンバー程じゃないが勝るとも劣らないチームになるだろう」
「うおーよかった、なんだよキャプテンびっくりさせやがって。これで大会でれるじゃん! バンザーイバンザーイバンザーイ」
「よかったな蒼木」