ラーメンが食べたい
キャプテンが俺に見せたものは一枚の紙だった。そこには各ポジションと見慣れない名前が書いてあった。
キャプテンは自信満々と言った表情で、その紙に指をさす。
「さっき言ったよな、それぞれ何か特技を持ったスペシャリストを中心にチームを作るんだ、まず説明をするか」
そしてそう言うと、俺の隣に来て説明を始めた。
「まずフォーメーションは3―4―3、フォワードはオーバーヘッドキックなどのアクロバテイックプレイで点を取る『体操部の中沢』、とんでもないキック力でゴールをブチ抜く『テコンドー部の澤村』、ありえないジャンプ力と日本人離れした顔で和製ジョーダンと呼ばれている『バスケットボール部の邑上』の三人。続いてミッドフィルダーは、精確無比なトスが自慢でセンタリングを期待できる『バレー部の神原』、精確無比なアプローチやパットでパスを期待できる『ゴルフ部の服田』、俊足で一気にボール運びのできる『陸上部の太嶋』、そして総合力に最も優れサッカーのスペシャリストである『サッカー部の島袋』こと俺。続いてディフェンダーは神がかった反射神経を持つ『卓球部の福路田』、もの凄い足腰の強さと粘り強さを持つ『柔道部の多畑』、反則級の突進力で相手を吹き飛ばす『ラグビー部の畠山』、そしてキーパーは、抜群の瞬発力と運動神経で守備を勤める『野球部の耶麻仲』――以上だ」
色々と突っ込みたい部分がありすぎたが、俺はとりあえず一番の疑問を投げかける。
「あの、一つ聞きたいんだけど、いい?」
「何だ?」
「俺は?」
「ああ、お前? だって同じ部が二人いたら何か中途半端だろ、だから控えな」
「……ふざけろっ! なんで俺がベンチにされなきゃなんねんだよ! おまっ、俺が今までどれだけサッカーにかけてきたかわかってんのか!? しかもおまえの独断で青春が消えかかってんだぞ!!」
「お、落ち着け蒼木、わかった、わかったから。俺じゃなくてサッカー部枠はお前にするから、なっ」
「はあはあはあ、本当だろうな」
「にゅん」
「にゅんって何だコラッ!」
ここで問答していてもらちがあかないので、俺はとりあえずスルーし、一番重要な事を尋ねる。
「で、もちろんそいつらには話つけてあるんだろ?とっとと練習始めないと」
「いや今から話にいくんだが」
「よしじゃあさっそく――って、えーーーー!?」
「いやだから今から説得しにいくから」
「このカスッ! どうやってこいつら集めるんだよ!普通に断られるに決まってんだろうが! 死ね、その後五回生き返って六回死ね!!」
俺は島袋の胸ぐらを掴み、捻りあげる。
「苦しい、苦しいから。大丈夫だって俺に任せろスパロボだって説得失敗したことないから、揉めてる暇あったら行動しようぜ、なっ!」
「失敗したことないも糞も、あれ説得コマンド出たらボタン押すだけだろうが!! ああ、さようなら俺の青春」
この時俺はふと思った。ポジション紹介の時出てきたラグビー部の奴の説明、それってファールになるんじゃ……そう突っ込みたかったが俺にはそんな気力が残ってなかった。