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自作小説倶楽部 第8冊/2014年上半期(第43-48集)  作者: 自作小説倶楽部
第43集(2014年1月)/「馬」&「かつら」
2/46

02 奄美剣星 著  かつら 『隻眼の兎の憂鬱』

【前回】

  http://ncode.syosetu.com/n2230bg/


【隻眼の兎の憂鬱/概要】


 異時空を支配せんと目論む魔界王子一派は、時空を自在に移動する潜在能力を秘めた女子高生・有栖川ミカを狙ってストークしていた。だがミカを護る時空警察官ギルガメッシュの活躍で阻止されていた。

 ところが、あるとき、魔界の一族と有栖川ミカ、時空警察官たちは、閉じられた異世界大陸カアラに飛ばされてしまったのだった。

 櫓を組んだ舞台。

 舞姫の衣裳は黄金の小札を連ねたものだ。

 二人の舞姫が手をとってターンした。

 十数人いる娘たちが、薄紅色の錦を宙に泳がせ、二人の間を駆け巡る。

 舞姫二人は、ときにしとやかに、ときに情熱的に、手にした扇子は蝶のようにひらひらと宙を舞っていた。

 吹き抜け構造の劇場は、櫓状になった舞台を囲んで観客席があり、壁際は、オペラハウスのような多角形構造をなして、ずどん、と直に天井まで立ちあがる吹き抜け構造となっている。そこに、国の王侯貴族はもとより、富裕市民、各国の使節が招かれ、盛況を期していた。

「さすがはギルメル大公家、前王朝ギール帝国の直系というだけのことはある。ギルメル都城に比べれば、いまは地に落ちたズウの帝都など、天と地との開きがある」

 そんなふうに二都を訪れた者は口をそろえていうのである。ギルメル都城に比肩しうる城市といえば、北の超大国ジーンの都城コウと、南の超大国ファアの都城エイのみだ。ただ、両市は辺境の新興都市であり、古都の風情をもちなおかつ、華やいだところといえば、大陸カアラ・中原の乱世にあって、唯一無二といえる都市は、そこしかなかった。

 壁にはめ込まれたボックス・貴賓席。そこから声がした。 

「見事な舞いである。あの娘たちに褒美をとらせよう。これへ――」

 ――摂政閣下の愛妾がまた二人増えることになる。

 口にはせぬのだが、招かれた客たちは、主催者の好色を知り尽くしていたので薄笑いを禁じずにはいられないのだった。

 華やいだ娘たちが、螺旋をなした階段を昇って、貴賓席にいったときのことだ。摂政閣下と呼ばれた男が横に侍らしていた女たちが一斉に悲鳴をあげたのである。

「なに奴?」

 でっぷりした中年男が、椅子を後ろに引いてのけ反り、倒れそうになる。

 黄金小札を連ねた衣裳に蓮をあしらった金冠を被った娘二人は、細表に白粉を塗り頬に薄紅をまぶしている。

「わが名は信長!」

「ノーラ・ガガ?」

「同じく蘭丸」

「ルノン・ワール?」

 摂政はうまく発音できないらしい。

 ――南蛮歌手か画家かね?

 舞姫に変装していた主従は顔を見合わせた。

ルノン・ワール呼ばれた女装戦士は、背に潜ませていた短剣を摂政の首筋にあてて、劇場から外にでた。このとき、ノラー・ガガと呼ばれた主君が、仲間であるチョボ髭の閣下から預かった得物・ワルサーP38を天井にむけて一発ぶっ放すことを忘れない。

 賑わった劇場は、この謎めいた舞踊団に席巻されていた。

「摂政閣下は預かった。監禁されている大公を解放しろ。さもなくば――」

 蘭丸が短剣をぶよぶよした男の喉に少し食い込ませる。

 脂肪と厚い皮で切れ味が悪そうだ。

 青年は嫌なことを想像した。

 近衛兵たちが、いわれるままに監禁していた老大公を連れてきた。しかしすぐには人質を釈放しない。市門の外にでたときだ。

 だがそのときには、信長に呼応した町衆が、一斉に蜂起し、宮殿ほか各官庁を襲って、摂政一派を縛につけてしまったのだった。

「血の気の多い連中だ。のう蘭丸」

「よほど、圧政に苦しんでいたのでしょう」

 うなだれた、デブの摂政が、両膝を地面に落とす。

 救出された老大公が、摂政を尻目に、半ば自嘲するかのようにいった。

「宮廷のジーン派が一掃されれば、北の覇者ジーン侯国がここになだれ込んでくる。それをあえてやろうとするのは、さしずめファア王国の方々と考えるが?」

「いかにも」

 信長がいった。

 長い黒髪で、舞っていたときは、ふわりふわりと宙に浮かんで、殿方を幻惑していたのだが、その被りを取り払った。

 つづく

● 誤字脱字のご指摘は、1稿作品である現段階では、大幅改稿になる2稿において、まったく生かせませんので……お気持ちだけで戴くことにします。( しかし、やたらにキャラが多い。 いずれ数人に整理しなくては……)


【登場人物】


●時空警察……サイドカー仕様のKATANAを駆って異時空をパトロールする。隻眼の兎、ギルガメシュ、サーベルタイガー・エンキドウ。

●有栖川ミカ……時空移動と、砂像を実物に変えてしまう通力・組成物質組替能力を有する女子高生。

●有栖川家一門……パパ、ママ、弟・剛志。

●食客四人衆……時空警察官・隻眼の兎とサーベルタイガーにより保護され、有栖川家に託されている食客たち。信長・蘭丸主従、山下画伯、ヒトラー総統。

●魔界衆……有栖川ミカを『わが嫁に』とたくらむ闇の勢力である。魔界王子ダリウス、魔界執事ザンギス、黒衣の貴紳シモーヌ

●ファア王国……宿敵ジーン侯国と大陸カアラの覇権を伺う。摂政フィルファ内親王、サートン将軍、ナイカル将軍。

●ジーン侯国……宰相元帥ハーン。大陸最強の将領。

●ギルメル侯国……現在の王朝ズウ以前の王朝ギール朝の後裔。

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