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8話 救出作戦開始

 俺はこのまま死んでいくのだろうか…

 ふと、下を見ると無様にやられた俺が床に安置されている。

 これがあの幽体離脱というものか。


 護衛のクライドを失い俺を頼ってくれたミーナも守れず、このまま死ぬなんて悔しい。

 何よりも悔しいのが戦う武器もあったのにもかかわらず戦わずやられたことだ。


 リアルの襲撃者にびびってしまい逃げようとして切り札の武器も使わずやられた。

 助けてとすがるミーナを見捨てたのと一緒だ。


 悔しい、ひたすら悔しい。もうただそれだけ。


 意識が体から遠くなっていく……人影が手招きしている。

 いよいよ、お迎えがきたのか?


「……ゆうと……おい、ゆうと!」


 なんだか聞き覚えのある声がする。


「……ん? じーちゃん……」


十年前に亡くなったじーちゃんがそこにいた。


「情けないのぉ……へたれじのう」


「わしなんかボルネオ島のジャングルを単騎で敵陣に乗り込んだものじゃ」


「じーちゃん……戦争なんかいってないじゃん……」


「……そーじゃったっけ? まあ、そんな細かい話はどーでもいいんぢゃ。神崎家の人間がおなごの二人や三人守れなくてどーするんぢゃ!」


「うちの家訓を思い出すのぢゃ」


「……そんなの聞くの初めてなんだけど、なんて家訓?」


「目指せ世界一のハーレム王ぢゃ!」


 うーん……ダメだ、この一族……


「早く体に戻るんだ、もうすぐタイムリミットぢゃぞ」


「タイムリミット過ぎたら死んで天国行くの?」


「いいや、天国には行けずかといって肉体にも戻れず永遠に浮遊するのぢゃ」


「なにそれ怖すぎるんですけど……」


「それにおまえはもう忘れたのかい? オヤジがチンピラに殴られたときぶち切れて三人もぶっとばしたことを。普段はへたれのくせに自分の身内のこととなると、おまえはリミッターがはずれてムチャするじゃろ」


「……そういえばそんなこともあったような……」


「それも我が神崎家の伝統ぢゃ、おまえはやればできる子ぢゃ」


「……わかったよ、じーちゃんありがと」


「わかったらこんなところで道草食っとらんで、早く助けにいかんか」


「そうだね、じゃ、そろそろ、じーちゃん帰るね」


「ゆうと、ひ孫を早く頼むぞ。ノルマは最低20人ぢゃぞ」


「……あ、そうそう、じーちゃんの遺産を勝手に使ったから、それじゃ」


「な、なんぢゃと……おい、こらっ……ちょっと待て、ゆうと……金返せ――」


 意識がゆっくり戻っていく。

 冷たかった体が徐々にあたたかくなっていく。

 目をゆっくり開け体の状態を調べる。


 防刃ベストのお陰で体に傷はついてはいない。

 斬りつけた衝撃で壁に後頭部をぶつけて気を失っていたのか。

 とっちにしろ生と死の境界線に立っていたのは間違いない。


 ここは宿屋の一室だ。

 どうもこの暗い部屋に寝かされていたようだ。

 これではどうみても霊安室の死体だよな。

 血糊が生臭くてリアルの血っぽい。


 荷物も置いてある。

 隠している金も無事だった、これは助かる。

 早速、着替える。臭くて吐きそうだ。


 なんかの映画は本物の動物の血を血糊として使ったという話を聞いたことがあるので

 マネをしようかと思ったけど

 さすがに全部動物の血でやるというのは量が多いし臭いが耐えられないからやめた。

 

 なので、市場で生きた鶏を買ってきてしめたときの血を血糊に混ぜた。

 田舎では自分の家で鶏をしめるのはごく日常のことである。

 

 幽体離脱してるときに火葬にされなくてよかった。

 もし焼かれてたらがしゃ髑髏として生きるしかなくなるところだった。

 ここは西洋だからスケルトンマンか、まあ、それはそれで面白いような……

 アズたちが泣くか……


 ……あっ! もしかして……みんなに俺が死んだって伝わってるかも……


 アズたちには悪いけど急がないとミーナが危ない。 

 俺は誰にも気づかれず宿をあとにする。


 商品として高く売るためにミーナに手をだしてないと思うが 

 もしミーナになんかしてたら顔を潰してから切れ味の悪いナイフで切断してやる。


 どうやらブチギレモードに入ったらしい。

 恐怖心をより怒りのほうが上回ってきた。


 百戦錬磨だろうがなんだ。

 現代の技術力舐めんな、これが本物のチートだ。

 やつらに俺は死んだと思われているのも好都合だ、今度はこっちが先に仕掛けてやる。


 ラッキーなことにミーナはまだクヌスにいた。

 あらかじめミーナに渡していたペンダントに発信機を仕込んでいた。

 遠いラートシスに戻っている売るより王都近辺で金持ちの貴族に売りつけたほうが儲かるからな。

 警備が厳重な王都より少し離れたクヌスは絶好の売り場だ。


 昨日はパニックで使えなかった装備も再度確認しておく。

 防刃ベストはきょうは動き重視でいくので今回は使わない。


 暗視ゴーグル、市販されているやつ。

 防護マスク極小微粒子をブロックする。

 強力催涙スプレー、ジェット噴射型でアメリカ軍が採用しているブランド

 噴射距離は4~6メートルで多人数に効果がある。

 しばらくは動くこともできない。


 連射型小型ボウガン、小型でも威力は強力で至近距離なら殺傷能力ある。

 強力LEDライト

 万能斧、災害時の脱出・救出工具。

 ハンマー、オノ刃、ノコギリ刃、バール、スパナ等

 重量1キログラム弱ながら様々なものを切断、破壊できる優れもので家の解体等にも重宝する。

 体に装着できる皮製ホルスター付。


 補足しておくと、暗視ゴーグルは市販の物でも軽量で高性能だ。

 十年ぐらい前に販売していたおもちゃのトイザンスのでさえ

 驚くほどはっきり見えた。


 夜を待っていよいよ救出作戦開始だ。

 ミーナ待ってろ、すぐ助けてやるからな。


 発信機をたどっていたらクヌスの飲み屋街の一軒の飲み屋で反応があった。

 とりあえず客として入り様子をみる。


「いらっしゃい、お客さんあまり見ない顔だねえ……どっからきたんだい?」


「王都からきた、とりあえずビールをくれ」


 思いっきり怪しまれたな、無理もないか、身なりからして不審者だから。

 カウンターがあって客は俺を入れて3人。

 犯人たちはここにはいないが建物の中にいるのは間違いない。、


「ここは奥にまだ部屋があるのか?」


「ああ、二部屋あるよ。でも今日は貸切だから無理だよ」


 そこだ!やっと見つけた。


「俺さあ、知恵人の二代目だけど知ってる?」


 ポケットから携帯用スタンガンをだし女主人の目の前でスイッチを入れる。

 ……ばちばちと火花が飛び散る。


「は……はい、存じております……」


 態度違いすぎ、さすがに王都近辺は二代目の知名度が高い。


「奥の部屋に王家を襲った夜盗が潜んでいると、国境警備兵に知らせてくれ」


 女は逃げるように出ていった。

 個室が二部屋、両方ドアは閉まっていて奥は施錠されている。


 聞こえてくる会話を聞いて完全にぶち切れる。


「……こいつら、絶対、許さねえ!」


 怒りは頂点だが行動は冷静だ、いや冷酷というべきだった。

 暗視ゴーグル、防護マスクを装着して強力催涙スプレーと小型ボウガンを手にもつ。


 ドアの隙間から強力催涙スプレーをMAX噴射する。


「うおおお!?なんだなんだ? 目が痛え……げほっげほげほ……」


「だ、だ、誰だ!? おえっ……」


「目が開かねえ……いたたたた……」


 狭い密室には十分すぎる量だったらしい。

 部屋に入り明かりをすべて消す。

 想像以上に真っ暗だ。


 まず足先に直接2発づつ、釘打ちする職人のように淡々と打ち込む。

 指を楽々貫通し床に突き刺さる。


「ぎゃあああっ! 指があああっ!」


 反撃を封じるため念のため目の隙間に工業用接着剤をたっぷり流し込む。


「うわわわわっ?」


 そのとき足をつかんでくるやつがいた。

 さすがリーダーだ、反撃するつもりか?

 それでは褒美をやろう。


 足を振り払うとリーダーの頬にボウガンを打ち込む。


「うぎゃあああっ!」


 頬を串刺しにした。

 これでしばらくは動けないはず。


 隣の部屋はカギがかっているので万能斧で叩き壊す。

 その真っ暗な部屋のなかにミーナは転がされていた。

 LEDライトをつける。


「……ミーナ!」


 たが反応がない……

 ミーナをさわると暖かい、目隠しと耳栓をして震えている。


「……お願い、殺さないで……」


 やさしく抱きしめて目隠しと耳栓をはずしてやる。


「……えっ? ゆうとさま……どうして?」


 状況が理解できず゛ただ混乱してるミーナ。

 無理もない死んだと思っていた俺が目の前にいるのだから。


「ミーナ、遅くなってごめんな……助けにきたぞ」


「……ゆーと、ゆーとゆーとぉー……」


 名前をなんども呼びながらミーナは俺の胸に飛び込んできた。

 俺はうわあーと幼子のように泣きじゃくるミーナをぎゅっと抱きしめた。


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