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6話 奴隷の少女 ミーナ

 奴隷の少女は名前をミーナといった。

 アーリシア出身の14歳、小麦色の肌で日本人のような黒髪。

 長さは肩ぐらいで真ん中から分けている。


 ミーナの話によれば父が貿易商の事業に失敗して自殺。

 借金返済のためがんばっていた母も父を追うように病死した。

 それでミーナは奴隷として売られたということみたいだ。


 裕福だった家庭のお嬢様から奴隷へ転がるように落ちていった。

 この話、なんかひかかるんだよね。テンプレすぎる。

 ミーナはどうみてもお嬢様には見えないし。

 なにか言えない事情でもあるのかもしれない。


 気になることがあったのでとりあえず宿の俺の部屋に少女を連れてきた。

 今日は貴族も泊まる少しいい宿にした。


 そのなかでも一番いい部屋を選ぶ。

 大きめのベッドと壁に絵画、小さなテーブルの上には水差しが置いてある。

 洗面台も備え付けてありこの宿で一番高い部屋だ。

 宿代も普通の部屋の6倍以上の金貨2枚もした。


 気になったこととはミーナの匂いだ。

 ここラートシスは王国の南方にあり日本で言えば南九州ぐらいだ。

 今は秋だがまだまだ暑い一日じゅう狭い部屋に大人数押し込められれば汗だくになる。

 それに着てる服が汚い、たぶん数ヶ月は洗ってないと確信できる悪臭がする。

 さすがにこの匂いでは服を買いにいけない。


 宿屋にはこの部屋でさえ風呂場ももちろんシャワーもない。

 たらいのような大きな洗面器と水の入った木桶が置いてあるだけだ。

 風呂好きの日本人としては宿に風呂がないなんてありえない。

 しかも水だ、日本の温泉が恋しい。


「ミーナ、早く服を全部脱いで水浴びして」


「え……ここでですか……」


「もちろん、ここで……後ろむきで脱いでね」


 少し躊躇したものの覚悟を決めたらしく服を脱ぎはじめた。

 大きな洗面器の中に座り水を浴びる。

 俺の石鹸とタオルを渡し、体全部丁寧に洗わせる。


 いっておくがミーナの裸が見たいから監視しているわけではない。

 ちゃんと監視してないと適当に洗うからだって俺は誰にいいわけしてんだ。

 洗っているのを確認した俺はミーナが着ていた服を洗う。

 パンツは…………捨てよう……


「ミーナ、パンツは捨てるぞ」


「えーもったいない、困ります……」


「臭いからだめ!」


「……十日前に洗ったから、そんなに臭くないです」


 十日前って…………嗅がなくてよかった……。

 シャルたちだって毎日パンツ替えてるのに。


「そんなに臭くないもん…………!? ぎゃあああ……………」


 ミーナは断末魔の叫びをあげ盛大に自爆し後ろに倒れた。


 おまえは動画サイトで見た自分の尻の穴の匂いを嗅いで卒倒するオラウータンか!


 お嬢様というのは絶対嘘だ。

 この残念臭、どこかでしたような……あっ、教授か……


 ミーナは嫌がったが俺の着替えのパンツとロング丈Tシャツを着せた。


 食堂で夕食を食べて部屋に帰る。


「ご主人さま、奴隷ってなにをすればいいのですか?」


「は……?」


 奴隷になったばかりのミーナは戸惑っていた。


「ミーナはどんなことされると思うのか想像していってごらん」


 ミーナは少し考えてから答える。


「裸にして、ムチで叩く……とか? 裸にして逆さ吊りとか……」


 SMプレイじゃねえか……妄想すごっ。


「ローソクをおしりの穴にさすとか……」


「ち……ちょっと待った……」


 え、なにそのマニアックすぎる変態行為……

 聞いたことねーよ、少なくとも地球にはないはず。

 異世界のSMってすごいのか? それとも……


 ミーナがバカなのか……


 最近まともに飯を食わせてもらってなかったみたいで

 皿まで食べそうな勢いでがっつくミーナ。 


「ミーナ、おかわりあるからあわてて食べなくていいから」


「ホント?おかわりしてもいいのですか」


「ああ、だからもっとお嬢様らしくお上品に食べなさい」


 ミーナは……あっ、しまったという顔をした。


 思ったことが面白いぐらい顔にでる娘だな。


「なぁ、おまえ本当にお嬢様なのか? なんか変だぞ」


「……ほ、ほほ……ホントでありあそばせのことよ、おほほほ……」


 知ってるかぎりの言葉をくっつけやがった……

 お嬢様は、おほほほ……なんて笑わねーから。

 ま、最初に運ばれてきたフィンガーボールの水を飲もうとしてたから、嘘ってバレてるんだけどね。


 おバカキャラ決定か。


 追加したステーキがナイフとフォークとともに運ばれる。

 さあ、どーするミーナ、これは難易度高いぞ。


「……お嬢様、ステーキがきましたよ」


 ごめん、ミーナを見るとつい、いじめたくなるんだ。


 顔がひきつってますよ、お嬢様。


「……こ、こんなもの……簡単ですわ……」


 ミーナは覚悟を決め、ナイフとフォークを手にする。


「お嬢様、それ逆です、逆……」


「……わかってるわよ、冗談ですわよ……」


 ナイフとフォークを交差させて固まるミーナ。

 それでどーやって食べるんだよ……。

 笑いすぎてお腹痛いしかわいそうだからそろそろいじめるのやめておこう。

 

 食事のあと大きめのダブルのベッドに座る俺。


「ご主人さま、ミーナを買っていただき、ありがとうございました」


 と深々と頭を下げるミーナ、一応教育されているようだ。


「ご主人さまのためになんでも致しますので、可愛がってください」


 というと服を脱ごうとするミーナ。


「……いやいや、脱がなくていいから……」


「すみません……、ご主人さまは服を脱がさずにヤるのがお好きなんですね」


「だれもそんなこといってません!」


「……では服を破ってからヤります?」


「そんなマニアックなことやりません!」


「ご主人さまが……何をいってるのかわかりません……」


 予想外の展開に戸惑うミーナ。


「だからミーナはそんなことしなくていいから」


 急に不安そうな顔になるミーナ。


「……私のどこが不満かいってください」


「いや、不満とかいう問題じゃないから……」


 困った顔のミーナ、ふとなにか思いついたらしく


「私が14歳なのにまだあそこに毛が生えてないからですか」


「そんなこと今知ったし……」


 しまった……という顔のミーナ 、この子バカだ……

 そんな子供なんか抱いたら人生終了たよ。


「と、とにかく奴隷を買ったんだからご主人さまには抱く義務があります」


「奴隷だから俺が好きにしていいんじないの?」


 偉い俺、今いいこといった。


「うるさい。とっとと抱きやがれです、童貞なのですか?」


 それキャラが違う……


「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわー」


 なんか主従の関係が逆転してるような気がするんだけど……


 ミーナは抱いてくれないのは他のだれかに売るつもりではないかと思ったみたいだ。

 俺は自分のいた国では未成年にそういうことをしたら捕まるということと。

 ミーナを他のだれにも売らないといって説得した。

 完全には納得はしてないが、わかってはもらえたみたいだ。


 いつまでも俺のシャツとパンツってわけにもいかないので、とりあえず新しい服と下着を買いにいく。

 ラートシスのメインの大通りを歩いて服飾店を探す。


 服飾店は何軒かあるらしいが、このあとお土産を買いにいかないといけないし


 日が暮れる前には宿に入りたいので

 一番最初に見かけた服飾店に入る。

 客層をみると貴族の女性はいないので高級店というより一般庶民の店みたいだ。


「いらっしゃいませ、今日はいかがなさいますか?」


「この娘に似合う服を一式揃えてくれ」


 自慢じゃないが女性に服を買ってあげたことは一度もない。

 着替え終えたミーナが出てくる。


 えんじ色を基調にしたドレスでクリーム色のエプロン、襟と手首の辺りは黒色で

 ヨーロッパの村娘のような服装だ。 


「いかがですか? かなりお似合いですよ」


 ミーナは照れてるけどそれお世辞だから。


「……じゃ、それにします、いくらですか?」


「金貨1枚と銅貨3枚です」


 日本の女性の服の値段さえわからない俺に異世界のドレスの値段なんて想像もできねえよ。


 アズたちにお土産を買って帰路につく。

 ヘイムトゥスで一泊して、今回の旅の最後の宿泊地クヌスに到着した。

 明日はみんなが待っているセインガルドに帰れる。


 宿の食堂にいるには、女連れの太っちょ貴族と屈強な護衛がふたりと

 行商人の3人組、リーダーはおそらくあの口ヒゲの男。父と息子の親子連れ

 目つきの鋭いラートシスの国境警備兵が二人、たまにこっちを見てる。

 アーリシア人の兵士が4人。


 警戒してるせいかみな悪人に見えてくる。

 もしあの国境警備兵やアーリシア人の兵士たちに襲われたらやられる気がする。

 護衛もうひとりいたほうがよかったな……


 いかんいかん、小心者の悪い癖だ、必要以上に疑ってしまう。

 仲良くなって情報共有したいけど今はまだ無理っぽいな。


 最後の夜を無事迎えられてことを祝い、俺はミーナとクライドと3人で乾杯した。

 奮発して鶏の丸焼きを追加を頼む。


「毎晩、警護ご苦労様、朝まで寝ないで頑張ってくれたね」


 クライドには昼に仮眠して、夜中は朝まで見張ってもらった。


「いえ、これがあっしの役目なんでだいじょうぶっす」


 真面目なクライドらしい受け答え。

 楽しい宴のはじまりだ。


「ゆうとさまぁ、このお肉、皮ぱりぱりで中ジューシーれすぅ……」


「ミーナ、……おまえ何クライドの酒飲んでんだ!」


「だってえ、クライドってば、全然飲んでないんだもーん、もったいないんだもーん」


「……だもーん……じゃねえよ、それにゆうとさまっていうな、ご主人さまといえ!」


「……じゃあねえ、ゆうとさまが抱いてくれたら……ご主人さまって呼んであ・げ・る……」


 ウインクしながら、あ・げ・る……じゃねーよ……


 完全に舐められてる……叱るの苦手な俺の自業自得だけど……

 躾は最初が肝心なのになぁ……へたれだ俺……


 最後の夜の宴は日付が変わるまで続いた。

 部屋に帰り恒例の寝る準備をする。


 重量2キログラムの軽量防刃チョッキを着込む。

 一番強度なものにした、軽さより強度重視だ。

 それにもうひとつの仕掛けも仕込む。

 あと、これはできれば使いたくないがお守りでもっておく。


 部屋の前で警戒してるクライドには防犯ブザーを持たせてある。

 最後の夜といえど油断しないのが超小心者の俺だ。


 その夜遅く、夜盗に襲われる。

 そして今から12時間後に王家に悲報が届く。



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