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10話 本格始動

 駆けつけた国境警備隊によって夜盗たちも全員捕まった。

 カジャール内務相に今回の夜盗襲撃事件の一部始終を報告した。


 クライドは重傷ではあったがリザードマンの硬い皮膚のお陰で致命傷はまぬがれる。

 だが左目失明で衛兵は辞めることになった。

 今は王都の病院で治療中だ。


 麦畑を過ぎると王都の城壁が見えてきた。

 やっと帰ってこれたー


「ミーナ、あれが王都だよ」


「こんなに大きい城壁みたことなーい」


「……ところでさあ、ミーナ……」


「なあに? ご主人さま」


「……君はさっきから、なにをしてるのかな……?」


「なにって……ご主人さまに抱きついてるけど?」


「きのうから、ずっとだよね……」


「そうだよ、きのうからずっとだよ、知らなかったの?」


「いや、知ってるけど……そうじゃなくて」


「じゃあ、なんなの?」


「もうすぐ、お城についてみんなに会うけど、ちょっと離れてみない?」


「絶対いやよ!」


「すごくめんどくさいことになるから、ね、お願い……」


「えー、どうしよーかなー」


「頼む、手だけつなぐとか、自然な感じにちょっと変えてくれない?」


「わかった、じゃあ、服脱いで抱きつくね」


「そうそう、裸だと自然だよね…………てっ、自然なわけねーだろっ!!」


 つっこんでもらえて満足そうな顔で微笑むミーナ。

 こいつもめんどくせー。


 王城に到着するとまずアズ国王が目を腫らしてのお出迎え。


「二代目さま、おかえりな……」


 我慢できなくなったアズ国王は俺の胸の中に飛び込むと泣き出す。


「ゆうとさま……生きてて本当によかった……わあああっ!」


「アズ、心配かけてごめん……」


「バカバカバカ!もう許さないんだから……」


「いっぱい遊んであげますから……涙を拭いてください」


「……また泊まりにいっていい?」


「もちろん、いつでもおいでください」


「ところで……その二代目さまの横にくっついている変わった生き物はなんなのかしら?」


 声のトーンが急に変わる……


「……やっぱり、見えちゃいました……?」


「当然です、むしろ見えないほうがおかしいのではありませんこと」


「……ですよねぇ……」


「確か二代目さまはラートシスに精霊石を買いにいかれたのですよね?」


「まぁ一応……」


「それとも二代目さまはわざわざラートシスまで女の子を、買いにいかれたのですか?」


「いえいえ、とんでもない」


「ではその女の子はどうしたのですか、まさか勝手についてきたとでもいうんですか?」


「それは成り行きというか……そのぉ……」


「はっきりとおっしゃってください!」


「ごめんなさい、奴隷商から買っちゃいましたっ……」


「どうせ、かわいそうになってのことでしょうけど……はぁ―」


 耳元まで近づいたアズ国王は小声で


「約束破ったから今度一晩いうことを聞いてもらいます」


 約束!? うーんそんなものしたっけ? …………

 まさか、出発前の「ゆうと、浮気したら許さないから……」か……

 そもそもこれは浮気になるのか?


「シャルとマリーもすごく心配してたんだから、早くいってあげてください」

 

「主さまー、おかえりなさい。わああああっ―」


 泣きながら抱きついてくるマリー。


「マリーごめんなっ……」


 泣くなよマリー、こっちまで涙がうつっちゃうじゃねえか……


「やっぱり、主さまは嘘はつかないのであります……」


「おかえりニャア、信じてたニャ」


 三人とおまけがひとり、ただ抱きあって泣いた。

 生きてて本当によかった。


 俺はこの世界に骨を埋めるつもりだけど、こっちに転移できたんだから

 元いたところに転移をしたとしてもおかしくはないからな。


 早くこの子たちが幸せに暮らせる国にしなければな。

 徐々にやる気がみなぎってきた―。


 翌日になり、いよいよ本格始動である。

 顔の傷や首の歯型や絆創膏のことはつっこみ禁止だ。


 まずひとつ。

 カジャール内務相に王国内で精霊石の買取りを国の改革予算でお願いした。

 定価より3割増しで買取ると公示した。

 精霊石は技術開発やコスト削減には欠かせないものだ。


 ふたつ目は

 セインガルド大学に王国内の資源鉱物調査の協力をお願いした。

 アリシュクナ教授にデジカメを貸し使い方を教える。

 デジカメを見て異常なほど興味をもったみたいだ。

 原理がわからなくて相当悩んでいたと聞く。

 

 経済のことはあまり詳しくない、一般的な知識があるぐらいだ。

 経済を回すには市場に出回る資金を増やさなければならないよね。

 たぶん……


 資産を溜め込んでいる貴族や商人たちの金庫に眠る金を使わせたい。

 商品や金を動かしたい。


 ただ商人から貴族が買うのもいいがそれだと効果はそんなに期待できない。

 庶民の商店街の店や農民、亜人から貴族に買わせたほうが経済効果がある。


 その点、異世界オークションはとてもいいが備蓄には限りがある。

 

 そしてみっつ目が学校だ。亜人の若い子(25才以下)を中心に集まってもらった。 

 このグループはハーフエルフ、エルフ、猫族、犬族、リザードマン(女)ドワーフ(女)約40人。


 男女比は男2女8といった感じか、

 奴隷市場では女のほうが価格が高く男は安いため地方や隣国へ売られることが多いらしい。


 学校はまだ建設中なので王城内の俺の家の前で勉強を教える。

 いわゆる青空教室というやつだ。


 ここではまずセインガルト語と日本語と数学を教える。

 王家に仕えるマリーとシャル以外はセインガルト語の読み書きともにできない人がほとんどだ。


 時間があるときは俺が講師をすることもあるけど

 普段はマリーに日本語、シャルに数学を任せる予定だ。


 ちなみに今の日本語のレベルはシャルは中学校3年生レベルでマリーは高校3年生レベル。

 数学のレベルはシャルが中級(中学生)レベルでマリーが初級(小学生)レベル。


 マリーの場合はアニメやラノベが読みたいという執念が日本語習得の上達スピードに表れてる。


 セインガルト語

 日本語

 小学校低学年レベル

 小学校高学年レベル

 中学校3年生レベル

 高校3年生レベル 

 数学

 初級(小学生)レベル

 中級(中学生)レベル、四則計算、応用問題、分数、割合。

 上級(専門)レベル、簿記、統計、データ管理、マーケティング。


 まあどれも俺の知ってる範囲なので高度な内容じゃないけど。

 試験に合格すれば次のレベルへ進めるという完全能力主義でいこうと思う。

 

 その他、特別授業もある。

 今、考えているのは接客、調理、木工、陶芸、絵画。

 この学校では個々の適正を見極めていきたい。


 もうひとつのグループはリザードマン(男)ドワーフ(男)約30人。

 建築(大工)、鍛冶、家具(木工)などの専門的な仕事を教える予定。

 ドワーフですでに大工職人や鍛冶職人として働いてる人にも講師をしてもらう予定だ。



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