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別に怖くは無い

作者: 瑞樹

 もしも目前に『死』という回避できない絶対があったとして―――僕はそれを怖いと思わない。

 お化け屋敷なんかに入った時だってそうだ、恐怖らしい恐怖を覚えなかった。

 寧ろ、生ぬるいとさえ感じていた。

 クラスメイト達は怖い怖いと泣いていたり叫んでいたりしていたけれど、僕にはその感覚がどうにも理解しかねる。わからない。

 何が怖いのだろう、と僕は考えた。

 お化け屋敷というのは、その名の通りお化けの屋敷である。

 お化け―――幽霊や妖怪の類―――が棲みついているから怖いのか? いいや、違う。

 確かにそれも恐怖を感じさせる一因であるのは間違いないだろうが、もしも、このお化けとやらが居る場所が、燦々と降り注ぐ太陽の下だったらどうだろう。

 ―――どうだ、全く怖くないだろう。どちらかといえばシュール極まる。

 なら、お化け屋敷特有のひんやりとした空気だろうか? いいや、それも違う。

 もしもそうだとしたら、僕達は毎度毎度冬が到来する度にお化け屋敷と同等の恐怖にさいなまれることになる。そんなのはごめんだ―――そして、冬に恐怖を感じる事はない。

 なら、何がお化け屋敷を恐怖の要因として考えるか。

 僕は、あの屋敷が放つ『死』に近い空気だと思う。

 今にも死者が沸いて出そうな、おどろおどろしく、何処か現実離れした、生きている人間にはそうそう感じられないあの空気。

 大抵のお化け屋敷と銘打っている娯楽施設の外観は、すたれた洋館や日本屋敷を摸しているだろう。

 僅かに人間の生の痕跡が感じられるが、確かに死んでいる屋敷。

 今にも、屋敷の主が出てきそうな、何処か生きているような屋敷。

 生きているのか、死んでいるのか、判別しがたい―――そんな屋敷。

 僕は、別にお化け屋敷を怖いとは思わないが、僕が恐怖を抱くとしたら、お化け屋敷に残る、人間が生きていたという痕跡だろう。

 いつ、誰が、其処で死んだのかなんて―――何年さかのぼっても、分からないことだったとしても、ね。

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