第37話 再出発
曇り空の下、エクルは息を切らしながらサーチスワードの町を走っていた。
嫌な予感が収まらず、アルファに会いに収容所に向かっていたのだ。
その道の途中で。
エクルは遠くから微かに『力』を感じた。
エクルはそれを覚えている。アルファの霊力と、光の天使フレイムの力が交わったものに違いなかった。
けれど、何が起きたのかは全くわからなかった。
アルファは光の天使を呼び出した――霊輝光を使えたということか。でも、使うような事態ということは、まさか、アルファの所に強い魔族が現れたということ?
それと不思議なことに、アルファとフレイムの力が感じられたのは、はるか遠くから。同じ町の中にいるとは思えない距離感だ。アルファは収容所にいるはずなのに……
だが、収容所に魔族が現れたなら、魔族がサーチスワードの市壁を突破して侵入したことになる。警備が厳重なこの町でそれは考えにくいし、現実に町の中に魔族が入ってきたのなら、もっと騒ぎになっていてもおかしくないのに、町はいつもと変わらぬ平穏な様子だ。
そう言えば……
アルファに持っていった差し入れを預けた看守が言っていた。その日は偶然休みの日だったが、普段は石切り場での労役があると。
アルファは今、町の外にいるのだ。
エクルはいても立ってもいられず、行き先を収容所から、一番近い市門へと変更した。
アルファの所に行こうと夢中で走ったが、検問で止められてしまった。最近魔物が増えているため、女性一人、しかも装備もままならないような者を町の外に出すわけにはいかないと。
門を守る何十人という騎士たちを、エクルが振り切れるはずもなかった。
――ラウザーと戦った時の霊輝光の力は凄まじかった。あのすごい力なら、きっとアルファは大概の魔族に勝てるはず。
だけど、アルファはラウザーとの戦いで瀕死の重傷を負って……
あの時エクルは、アルファが死んでしまうと思った。あれほど怖い思いをしたことはなかった。
今回は何がどうなっているのか、事情が一切わからない。不安でたまらない。
町の外に出られなかったエクルは、再び収容所に向かって駆けた。
収容所でアルファのことを聞けば、何かわかるかもしれない。
いや、それより。
霊輝光を感じたのも、不吉な予感を覚えたのも、全て自分の気のせいであったのなら。何事もなくアルファがそこにいてくれたら――
ところが、エクルは収容所の入り口で看守たちに止められてしまった。緊急事態で終日立ち入り禁止とのことだ。何があったのかも一切教えてもらえずに、さらに不安が募った。
入り口でアルファを待つことも許されず、追い払われ――ルミナスに相談しようとすがるような気持ちでサーチスワード邸にも行ってみたものの、門番たちに取り合ってもらえなかった。
エクルは仕方なく、ルートホールの屋敷に戻った。
大丈夫……
アルファは、ここに迎えに来てくれると言ったのだ。
エクルは不安に押し潰されそうになりながら、途中だった廊下の掃除に取り掛かった。
エクルがアルファのために今できることはきっと、待つことと祈ることだけなのだ。
明日になったらまたきっと耐え切れずに、アルファを探しに行ってしまうだろうけれど。
気づけば空には再び太陽が輝いていたが、エクルの心が晴れることはなかった。
お願いアルファ……無事でいて……
エクルはただそれだけを祈っていた。
*
「なぁにィ~ッ!? あの小僧が『聖なる光』を使っただとぉ~!?」
「はい。私をはじめ、部下たちや多くの囚人たちも目撃しています。あの少年が光を放って魔族を消滅させたのです」
アルファを癒した後ルミナスは、アルファが光を使ったのを目撃した者たち全員に、固く口止めをしておいた。実は以前ガフトンの町においても同様の根回しをしていたのだが、アルファのことを魔族に知られぬようにするための処置だ。
ルミナスはそれから、気を失ったままのアルファを部下たちと看守に任せ、サーチスワード邸に戻り、自身が石切り場で見たものをネカルに報告したのだ。
ネカルは間抜けな叫び声を執務室に響かせ、わなわなと震えている。
散々偽者呼ばわりして投獄までした相手が、やはり本当に光継者だった。いつか光継者が世を救った時、ネカルの罪過は消せぬ汚点となるだろう。そのようなことを、ネカルが受け入れられるはずもない。
その罪の一端は、ルミナス自身にもあるのだが。
ルミナスは小さく溜息をつき、主であるネカルに訴えた。
「閣下、アルファ様は確かに光継――」
「認めんっ!!」
ネカルの鋭い声音がルミナスの言葉を遮った。
「私は認めん!! 絶対認めんぞっ!! 死んでも認めないからな……っ!!」
アルファが光継者であることも、自分の過ちも認めたくないのだ。
小物領主はますます頑なになってしまった。彼との血の繋がりが一層疎ましくなり、ルミナスは先ほどより大きく溜息をついた。
さて、どうするかな……
*
アルファは少々暑さを感じ、目を覚ました。
「お、起きたか!」
最初に目に入ったのは、看守ディックの顔だった。
アルファは寝台に横になっていて、その脇に置かれた椅子にディックが腰掛けている。
「痛みはないよな? 気分はどうだ?」
「ああ、大丈夫……だけど……」
嬉しそうに尋ねてくるディックに、アルファは体を起こしながら答える。
オレンジ色の光が窓から差し込み、部屋の中を照らしている。どうやら夕方らしいが、アルファはその部屋に覚えがなかった。
清潔で広々とした空間に、調度品は寝台と箪笥と机のみ。いずれもそれなりに高級そうに見えるが、あまり生活感がない部屋だ。
「あー良かった……お前、今朝あの魔族を倒した後、ずっと気を失ってたんだぞ」
ディックの言葉に、アルファはまだ寝ぼけ気味の思考を巡らせる。今朝、ということはまだ同じ日。ラウザーと戦った後は丸一日以上眠ったままだったから、あの時よりはマシだ。
「ここは?」
収容所内にこんな部屋はないだろうと思いながらディックに質問すると、意外な答えが返ってきた。
「聞いて驚け。ここはサーチスワードの一等地にあるルミナス様の別荘だ。特別に貸してくださったんだぞ」
……ああ、そう言えば以前、エクルに貸してやろうとしたと聞いた。それにしても、こんなにいい部屋なのに誰も住んでいないなんてもったいない。
「あれ? でも石切り場からなんでこんな所に……それに収容所の中じゃなくていいのか?」
訊きながら、アルファは首に違和感を覚えた。何だか、スースーするというか……
「おお!? 首輪がねぇ!?」
寝台の近くの壁に掛けられている姿見を見ると、あの魔法封じの首輪が外されていた。思い切り日焼けの跡がついていて変だが、首輪は確かにない。それに身に着けている服も眠っている間に着替えさせられたらしく、囚人服ではなく寝間着になっていた。
「もう首輪も、収容所にいる必要もない――晴れて真犯人が捕まったそうだ」
「そうなのか!?」
驚くことばかりでアルファは声を上げっぱなしだ。
「ちなみに、お前の傷、ルミナス様とお付きの騎士たちで治してくださったんだ。運が良かったよなー。お前を迎えに、わざわざ石切り場まで来てくださってたからな」
……そういうことだったのか。
結局またルミナスに助けられてしまった。治癒の術を受けられなければ死んでいたかもしれないし、まだまだ自分一人では危機に対処し切れないことを思うと複雑だったが、やはり命あっての物種だ。助かったことに感謝しつつ、また修行に励もう。ルミナスに会ったら礼を言わなければ。
「ほら、これ収容所に没収されてたお前の荷物一式だ。返してくれたぞ」
ディックがアルファの愛剣と荷袋を渡してくれた。袋の中を確認すると、アルファの旅装束と、水筒、エクルから預かった財布など、全て揃っていた。
これで、旅を再開できる。
「でも、みんなにアイサツくらいはしたいな……」
自由の身にはなったが、収容所の仲間たちとこのままお別れでは淋しい。
アルファのその言葉を聞くと、ディックは笑って言った。
「そう言うと思った。けどもう今日はこんな時間だしな。お前も疲れてるだろうし、挨拶は明日にして、今日はこのままここで休めよ」
「収容所には明日行く……でも、ちょっと出掛けてくる」
「え?」
「どうしても今日行きたい場所があるんだ」
アルファは寝台から降り、自身の服に着替える。ディックは何かに思い当たったような顔をすると、ニヤニヤしだした。
「ははーん、あの娘の所だな?」
……正解。だが、ディックの表情が気持ち悪い。
「あのな……いつも言ってるけど、あいつは幼馴染で妹分だからな」
「はいはい。いいから行ってこいって。頑張れよ~」
何を頑張るんだよ?
と思いつつ、ニヤニヤの止まらないディックを相手にすると疲れそうなので受け流すことにした。
アルファは部屋の窓から外を見てみた。ここは二階らしい。周辺に立派な屋敷が並んでいるのが目に入るが、この景色に覚えはない。来たことのない区域のようだ。
ディックに尋ねてみると、ここはサーチスワード邸から南に少しの所にあるらしい。
エクルがいるルートホール邸は、サーチスワード邸から北東方向。名門ルートホール家の場所はディックも知っており、ここからの行き方を教えてくれた。
ちなみに、アルファが外に出ると、玄関前に三人の騎士が立っていた。彼らはルミナスの部下で、アルファの護衛を命じられたらしい。外出するアルファに同行すると言うので、心配ないと断った。町の中だし、エクルに会いに行くだけだ。厳つい男共を引き連れていくのは気が引ける。
彼らはアルファが光継者だと聞かされているのか、妙に態度が恭しくて、アルファは何だかこそばゆかった。
ルミナスの別荘は、比較的広い通りにある。その通りは、サーチスワード邸を中心として、放射状に伸びる七つの大通りと交わりながら円を描くように繋がっている。
その通り沿いを、時計と逆回りに進んで行けば、それだけでルートホール夫人の屋敷に着くという。
レイダーにやられた傷は治してもらったが、ラウザー戦の時と同様に失血が多かったし、霊力を大放出した影響で体力の消耗も大きく、体にはだるさが付き纏っている。でも、やっとエクルに会って安心させてやれると思うと、心は弾んだ。
アルファは夕暮れの空の下を足早に歩いていく。通りを行く人々も皆、日没を前に急ぎ足だった。
この時期のサーチスワードは、夜でもひどく蒸し暑い。この時間も当然暑いが、焼けつくような日差しが弱まる分、外で過ごしやすくなる。時折通り抜ける風も心地良い。
と。
アルファは通りの先に、驚くべき人物を見つけた。
辺りが次第に暗くなっていく時間帯であるが、まだ充分見通せる。何より、その人物の顔を忘れるはずがなかった。
そんじょそこらではまず見掛けることがないほど、美しい少女だ。
その少女のほうもアルファに気づいた。驚いた顔をしたかと思うと、目を潤ませ、
「アルファさん……!」
絹のような長い黒髪をなびかせながら、こちらに駆け寄ってきた。
「アルファさん、出られたんですね……!」
この先の道を見ると、アルファは覚えがあった。道沿いに、『フロリド商会』と書かれた建物も見える。
少女――ソフィア=フロリドはアルファの間近で立ち止まり、ポロポロ泣きながら笑った。
「良かった……良かった……」
「ソフィアさん……」
投獄されてしまったアルファのことを、心配してくれていたようだ。でも、そんなに泣かれるとアルファは戸惑ってしまう。
「あの……わたし……父と仲直りしましたから」
泣きじゃくるようだったソフィアは、少し落ち着いてくるとそう言った。
それは何よりだ。アルファは「良かった」と言おうとした。
が。
「それと……アルファさんの面会に行った時のことです。看守さんがわたしに教えてくれました。アルファさんには……恋人がいるって……」
ソフィアの大きな瞳にはまた涙が溢れ、声も震えている。
看守――ディックのことだ。
だから違うって……
アルファは心の中でディックに文句を言った。
でも、ここはそういうことにしておこう。ソフィアのこの様子を見れば、まだアルファに未練がありそうだが、アルファはすぐにこの町を去る。ソフィアにしてやれることは何もないのだ。
しかし……
「わたし、アルファさんのこと諦めようって……何度も思いました。でも……でも、やっぱりダメでした。初めて会った時から好きなんです……こんな素敵な人がいるんだ、って……一目惚れって本当にあるんだ、って……一緒にいて、もっと好きになって……」
ソフィアは泣きながら、切々と想いを伝えてくる。
どうしたらいいのか、アルファは困り果ててしまった。それに、ソフィアが言う『好き』が、恋とか愛とかいった感情が、アルファにはまだ漠然としかわからない。
でも、こんな風に言われて悪い気はしなかった。自分のせいで泣かしてしまっているのだと思うと、心が痛むし、どうにかしてやりたいという気持ちもある。
……ソーラレア族は、自分の伴侶となるただ一人以外、異性として愛することは許されない。そしてその伴侶を選ぶのは、自分ではなく、神――を身代わりした両親。
つまり、親がソフィアをアルファの伴侶として望めば、アルファはそれを受け入れることになる。
だが、アルファは魔族から世界を救うための旅をしていくのに、そういったことは考えられない。
例えば、アルファがいつか魔神ヴェルゼブルを倒して、故郷に帰ってソフィアのことを両親に話して、両親から許可が下りたら問題ないのかもしれないが――アルファはソフィアに、そんな気を持たせるようなことを言うつもりはない。両親が許すかさえわからないのに、きっと何年も待たせてしまうことになるのだ。
そもそもソフィアだって、そこまで待てるほどアルファに気持ちがあるかは定かではないが、とにかく、アルファのことは忘れてもらうのがいいだろう。
ソフィアに諦めてもらい、かつなるべく傷つけないようにするためには、どう言ったらいいのだろうか。アルファは言葉を探しながら、目の前のソフィアをまじまじと見た。
……可愛い……
収容所では仲間も看守も全員男だった。アルファはこの数ヵ月男しか見ていなかったせいか、ソフィアがなおさら愛らしく見えた。実は道を歩いていても、すれ違うのが女だとつい目で追ってしまっていたが、ソフィアの容姿は飛び抜けている。今日は貴族の令嬢らしく清楚なドレス姿で、彼女の仄かな香水の匂いもまた、アルファを誘惑してきた。
さらに、ソフィアはアルファの手を握ってきた。アルファの右手を両の繊手で包み、ますます戸惑うアルファの目を見つめ、潤んだ瞳で訴えてくる。
「どうしても諦められないんです……わたし……一番じゃなくてもいい……アルファさんのそばにいたいんです……」
その言葉に、アルファははっとした。
『一番じゃなくてもいい』。それはたぶん、言葉通りというよりは、それでもアルファのことが好きだと言ってくれているのだろう。
だが、あえて言おう。
「二番も三番もありません」
恋も愛もまだ自分の感覚としてはわからないアルファにも、理想はある。
十六年間、一番近くで見てきた――仲睦まじい両親の姿だ。
父はいつも母を守り、母は父に寄り添い、支え合って……互いのことを世界一だと思っているのが、見ていてわかる。
人生は幸せな時ばかりではないが、両親は、愛する我が子の死を共に乗り越え、光継者であるアルファを育てることに、共に心を砕いてきた。
幸せな時も、困難な時も、愛し合い共に歩む。
自分もいつか誰かとこんな夫婦になりたいと、アルファは子供の頃からずっと思ってきた。
もしいつか自分が誰かを愛した時、自分はその人にとっての一番でありたい。唯一でありたい。
母にとって父がそれであるように。
そして、父にとって母がそれであるように――
「たった一人です」
アルファはそっと、ソフィアに手を離させた。こちらを見つめたまま少々呆然とした顔のソフィアに、アルファは言葉を継ぐ。
「オレにとって世界で一番だと思える女がいてくれたら――オレはその一人以外、誰も望まない」
それを聞くと、ソフィアは泣きながら走り去っていった。
アルファは胸が痛んだが、追い掛けはせず、ただ見送った。もう、ソフィアに言うべきことは何もない。きっといつか、ソフィアはソフィアに相応しい相手に出会うはずだ。
ソフィアが心配でないことはないが、彼女は来た道を戻り、フロリド商会の建物に駆け込んだ。大丈夫だろう。
アルファは立ち止まったまま、思わず自分の右手を見た。ソフィアの柔らかな手の感触が、まだ残っている。ソフィアを拒絶するのに冷静を装っていたが、心拍数が上がったまま、なかなか戻らない。
手を握られただけでこんなにどぎまぎしてしまうなんて、アルファは自分の将来に不安を感じてしまった。
「お前はそれでも男か――!!」
突然後ろから怒鳴り声が聴こえ、アルファは驚いて振り返った。
そこには苔色の制服を着た小柄な青年看守、ディックが何故かいた。彼は怒りに震えている。
「余裕だなぁモテる奴は!! ちょっと強くて顔がいいからって調子乗んなよ!? イナイ歴二十三年の俺は一体どうなるー!?」
どうやら、ディックはこっそりアルファの後をつけてきた上に、ソフィアとのやり取りを全部見ていたらしい。
喚き散らした後、ディックは落ち着くと神妙な顔つきをして言った。
「でもまぁ……お前はそれだけあのエクルって娘が好きなんだな……」
「……」
もういい。訂正するのも恥ずかしい。
ほとんど日が落ちる頃、アルファはルートホール家の屋敷前に到着した。ついて来るなと言ったのに、ディックも一緒だ。
屋敷を囲む白い鉄柵の門を潜り、少し緊張しながら玄関横の呼び鈴を三回揺らした。
だが、中から反応がない。この時間に留守とは考えにくいが、聴こえていないのだろうか。
もう一度呼び鈴を鳴らすことも、それ以上待つこともできずに、アルファはつい、鍵が掛かっていなかった玄関扉を自分で開けてしまった。
三階建ての豪邸は内装もなかなか見事だったが――アルファの視線はただ、向かって右側の螺旋階段に吸い寄せられた。
階段の途中に、会いたかった少女がいる。
階段を下りてくるところだったのだろう。少女はアルファを見、一階まであと五、六段を残して立ち止まっていた。
アルファは少女の名を呼んだ。
「エクル……!」
「アルファ……?」
エクルは呟き、呆然とアルファの顔を見たまま、再び階段を下り始める。
が、なんとエクルは足を踏み外した。
エクルの体が前のめりに落ちてくる。
「バッ、バカ、何やって……!!」
アルファは慌ててエクルに駆け寄り、手を伸ばした。
エクルを受け止めようとしたのだが、自分が消耗して力がないせいか、エクルが重いせいか、落下の勢いに負けた。エクルに圧し掛かられるように、アルファは背中から床に倒れた。
「てて……」
咄嗟に受け身を取ったおかげでそれほどの衝撃ではなかったが、とにかく驚いた。痛みの次に、エクルが自分の上に乗っかっているという状況を認識する。
エクルがアルファの胸の上に伏せていた顔を上げた。倒れたままのアルファと目が合い、エクルはその体勢のまま、まだ信じられないような表情をして、ただじっとアルファの顔を見る。
アルファは動けなかった。
幼馴染で妹同然とは言え、ある程度分別がつく年頃になってからはエクルにむやみに触れたことはない。腕を引いたり、エクルが気を失った時仕方なく背負ったりしたことくらいはあるが……
幼馴染の顔が、妖精のように美しい顔が、今、すぐ目の前にある。その無垢な瞳に見つめられている。その体温が、柔らかさが伝わってくる。
アルファは焦って叫んだ。
「重たいだろ! 早くどけ!!」
エクルは飛び退くようにアルファから降り、上体を起こしたアルファの傍らに座り込んだ。
アルファの心臓は、ソフィアに手を握られた時の比ではないほど騒がしい。エクルには絶対に気づかれたくなくて、アルファは大声でエクルを叱り飛ばした。
「エクル! 何ボケッとしてんだ! しばらく会ってねぇのにお前ときたら相変わらずどんくせぇ!! 少しは気をつけろ! 見てるこっちがヒヤヒヤする……!!」
すると。
エクルの目からぽろりと、涙がこぼれ落ちた。
しまった。
またきつく当たってしまったとアルファは慌てたが、エクルは涙をポロポロ流しながらも微笑んだ。
「アルファ……良かった……良かった……無事だったんだ……私、アルファと光の天使の力を感じたの……だけど……」
涙を拭いながらどうにか笑って、それでもまた涙がこぼれてしまう。
「何が起きたのか……全然わからなくて……でも、アルファが無事で良かった……」
アルファは自分の力が、こんな離れた場所でも感知されたことに驚いた。
でも、今はそれが問題ではなく、エクルに掛けてやる言葉のほうが大事だ。
「ごめんな……本当に心配掛けちまったな……」
今日のことだけではない。エクルにはずっと、心配を掛け続けてしまった。
「ごめん」と、声に出してエクルに謝ったのは、ずいぶん久しぶりな気がする。子供の頃から、自分が悪いと思ってもエクルには詫びた記憶がほぼない。
そして、アルファはエクルに手を伸ばしかけて――慌てて引っ込めた。知らず、エクルの頭を撫でようとしていたのだ。
何してんだオレ?
今日の自分は何だかおかしい。
ふと見ると、玄関前に突っ立っているディックのニヤニヤ度合いが過去最高を更新していた。アルファは気まずく思いつつ奴を無視し、霊輝光を使った経緯と、冤罪が晴れたことをエクルに話して聞かせた。
「良かったぁ。アルファが霊輝光使えるようになって、釈放もされて……」
心底嬉しそうに笑うエクルに、自分も嬉しくなる。でも、霊輝光についてはあまり自信がない。
「んー……今回は自分の意志でフレイム呼んだけど……まぐれかもしれねぇ。ちょっとやってみるか」
ラウザーと対戦した時も、今回も、霊輝光を使えた時の状況を考えれば、生きるか死ぬかギリギリの場面だった。生半可な気持ちで光の天使を呼ぶことは許されないだろう。
だが、そこまで追い詰められた状況でしか使えないというほど、不便な力ではないはずだ。
エクルに見せてやりたいなどという動機ではだめだろうが、今後のために力を確認しておきたいと思うのは、間違いではないだろう。
アルファはこれまでのように剣を握り、目を閉じ、霊輝光を使った感覚を思い出す。そして、心の中でフレイムを呼びながら自身の霊力を高めると――
アルファは再び赤の光を纏い、自身の背後にフレイムの姿を見つけることができた。
これはものすごく嬉しかった。これまで霊技を学び、霊力を使うことに慣れたのが幸いしたのかもしれない。もう、奇跡でもまぐれでもなく、アルファは自分の望む時にその力を得ることができるのだ。
エクルも目を輝かせてアルファとフレイムを見ている。
しかし、フレイムは何故か浮かない表情して、アルファに言った。
「……一つ、忠告しておこう」
「忠告?」
アルファは訊き返しながら、急に眩暈がした。体がふらふらし、立っているのがつらくなる。
「そなたのように未熟なうちは、霊輝光の使用によって体に著しい負荷が掛かる」
え?
「慣れれば次第に肉体への負担は軽減していくのだが……。我はそなたが魔の者たちと戦う時、そなたの心が正しくある限り、そなたに力を貸す。しかし、力を使う状況をよく見極めるように――」
そう言い残し、フレイムは消えた。
と同時にアルファは倒れてしまった。気を失うまではいかなかったが、脱力して起き上がれない。
「大丈夫!?」
うつ伏せに倒れたアルファの顔を心配そうに覗くエクル。ディックも駆け寄ってきた。
「お、おい、どうしたんだよ!?」
「うう……」
霊輝光で体力を消耗するのはアルファも感じていたが……ここまで体に負担が大きいとは思っていなかった。朝一度光を使ったことによる消耗がまだ回復し切っていないとは言え、今回はただフレイムを呼んだだけで、光を放出してはいないのにこの疲労感だ。
過去二回、霊輝光を使った後に気を失い、長時間眠ってしまったのは、重傷を負ったせいもあるだろう。だが、『未熟』なアルファでは、体調が万全の状態で霊輝光を放ったとしても気絶してしまうのかもしれない。
これでは、力の行使には慎重にならざるを得ない。霊輝光は当面、生きるか死ぬかという時の切り札としてしか使えないだろう。それでも、その切り札を自分の意志で使えるようになったのはすごい進歩だ。
それに、慣れれば体への負荷は減るという話だったし、希望的に考えていいだろう。
アルファはディックに体を起こしてもらった。気づくと、いつの間にか近くにルートホール夫人が来ていた。その後ろには、夫人そっくりの少女と、エクルと同じメイドの格好をした女たちもいた。
夫人はアルファに、ここは男子禁制だと苦情を言ったが、怒っている風ではなく、以前に比べるとずいぶん顔つきが穏やかになっていた。さらに、あの時は無茶を言ってすまなかったと謝罪もされた。アルファはエクルの手紙である程度のことは知らされていたが、夫人の変わりぶりには驚いてしまった。
アルファはエクルに、明日迎えに来るから旅の準備をしておくようにと言い、自分より背の低いディックに体を支えられながらルミナスの別荘に戻った。
翌朝、アルファは仲間たちに会うため、ディックと共に収容所にやってきた。
アルファが建物内に入るなり、所長をはじめとする看守たちが一斉に出迎え、床に跪いた。
「申し訳ございませんでした!!」
「よく調査もせずに犯人と決めつけ拷問に掛けるとは……っ」
「看守としての職務を果たさず自分たちだけ逃げるとは……っ」
……どうやら、アルファが光継者だと聞かされたらしい。
看守たちに交じって一人、囚人服の男もいたが、驚いたことに『騎士団長宅強盗事件』の真犯人だそうだ。あの灰色ローブの中身は、三十歳前後の平凡な男だった。看守たちと共にアルファに頭を下げて詫びる。
「よりにもよって光継者から盗みを働き陥れるなんて……! どうかお赦しを……!」
そして、全員で声を揃えてもう一度。
「本当に申し訳ございませんでしたっ!!」
可笑しそうにそれを眺めていたディックが、悪魔の笑みを浮かべてアルファに囁いた。
「煮るなり焼くなり好きにしていいそうだ」
「こっ、こらお前……!」
と、慌てる看守たち。
アルファは深々と溜息をついて、彼らに言った。
「オレは大事な旅の途中だった……それをこんな所に入れられて、ずいぶん時間食っちまった。だから――」
看守たちと真犯人の顔が強張る。どんな報復をされるか恐れているらしい彼らに、アルファは笑った。
「オレはすぐにここから出発しなきゃならない。これ以上、あんたたちに構ってるヒマはないんだ」
アルファはさっさと彼らの横を通り抜け、仲間たちのいる受刑所へと歩き出した。
本当は――
何事もなく旅を進められたら良かった。それが一番良かった。
ずいぶん遠回りした……
でも、そうして手に入れたものも、きっとあったはずだ。
無駄なことなど、一つもなかった。
仲間たちは受刑所の庭にいて、歓声でアルファを迎えてくれた。
それぞれが思い思いの言葉をアルファに掛けてきた。
「助けてくれてありがとう。お前がいなかったら、もう二度と娘に会えないところだった」
とグスタフ。
「俺、こっから出たら、村に帰って親父と仲直りして……跡継いで大工になる。今度会う時は違う姿見せてやるから」
とアンディ。
「オレだって。ここ出たら仕事探してマジメに働くぜ!」
とブレッド。
「ボクはもちろん絵描きになるよ」
とパトリス。
「なんか、アルファ無茶しそうで心配だなー……」
「……言えてる……気をつけろ……」
余計なことを言うデービッドとフィル。
けれど皆、これから旅立つアルファを応援してくれた。
名残惜しいが、アルファはもう行かなければならない。
「また会おうな! 今度は塀の外で……!!」
アルファは手を振りながら、ディックや仲間たちに別れを告げた。
アルファの背中を見送った者たちは……ある者は思い出に浸り、ある者はこっそりと涙を拭い、ある者は呟いた。
「まるで……太陽みたいな奴だったな――……」
*
収容所を後にしたアルファは、エクルを迎えにルートホール家の屋敷へと向かう。
実のところ、アルファの体は一晩休んだくらいでは回復し切れなかった。だが、それでも体感で八割くらいまで復調したので、予定通り今日、サーチスワードを出発する。出て来る魔物たちを退治しつつ今日中に次の町まで歩くくらいは、問題ないはずだ。
長いこと足止めされてしまったので、少しでも早く旅を進めたい。
アルファは、もうこれ以上の厄介事はないようにと願いながら街を歩き、あと少しでルートホール邸という所で、なんとエドガーに遭遇した。
「良かった会えて……! 君が出所できたと聞いて、探していたんだ……もうこの町を出てしまったかと思ったよ」
中太りのエドガーは息を切らし、汗だくだった。この暑い中、アルファを探して走り回っていたようだ。
「エドガーさん、真犯人を見つけるのに尽力してくださったって聞きました。ありがとうございます」
アルファが礼を言うと、
「いや、元々牢に入れられたのも私のせいだから……本当にすまなかった」
と改めて謝られてしまったので、もう気にしないでほしいと頼んだ。
エドガーはアルファに、商会で手に入れたという三つの稀封石をくれた。それを渡すためにアルファを探していたらしい。石の中にはそれぞれ、治癒、結界、爆破の法術が込められているから、役立ててほしいとのことだ。
稀封石の結晶、それも魔法入りは貴重で高価だ。アルファはただではもらえないと断ったが、エドガーがどうしてもと言うので、ありがたく受け取った。
それから、エドガーはソフィアからの伝言を預かっていた。
『わたしは家を継いで、フロリド商会をもっと大きくしてみせます』
ソフィアは自分の夢に向かって頑張るようだ。
アルファは安心したが、
『どうか恋人さんとお幸せに』
というもう一つの伝言を聞かされた時は、反応に困ってしまった。
アルファがエドガーと別れ、ルートホール邸に着くと、エクルは既に旅装束を着て待っていた。玄関で旅の荷を背負い、雇い主である夫人や家の者たちに挨拶をする。
「今まで本当にお世話になりました」
「とんでもない! 世話になったのはこちらですのよ。できればずっとここにいてほしかったですのに……」
夫人は優しく微笑んで言う。
「本当に残念ですの。ワタクシに息子がいたら嫁にほしいくらいだったですのよ」
「そ、そんな、褒め過ぎですよ……!」
照れて慌てているエクル。アルファは何故か複雑な気持ちになった。
けれど、夫人に受け入れられるまでエクルが相当頑張ったであろうことを思って、感心もした。そして、夫人の変わりぶりはもはや別人だ。
エクルはメイド仲間や夫人の娘らしい少女とも別れの言葉を交わす。
「淋しくなっちゃうわね……」
「また会いに来るんだぞ」
「ワタシたちのこと、忘れないでほしいですわ」
「……はい」
エクルは涙目だった。やはり名残惜しいようだ。
水やたくさんの食料を持たされて、アルファとエクルはルートホール家の屋敷を後にした。
それから二人は、サーチスワード領主の館に赴いた。
が、門番たちが中へ通してくれなかった。信じられないことに、領主ネカルがアルファとエクルを出入り禁止にしたのだと言う。
アルファが光で魔族を倒したことは、おそらくネカルにも伝わっているのではないかと思うのだが……
ルミナスに会って礼を言いたかったのに……仕方ない。
あわよくば命暘の剣も手に入れたかったが、あの剣は、自分が剣に相応しい剣士になった時に堂々と受け取りに来よう。
アルファとエクルは、プロッツ門へと続くアミス通りへと足を進めた。
「いろいろあったけど、やっと出発できるな」
「うん! 今度はどんな町か楽しみだね」
二人は本当なら、三ヵ月以上も前にこの町を出て、プロッツの町に向かう予定だった。だいぶ遅れたが、その予定は変わらない。光の書――光継者の仲間である三星臣を見つける手掛かりとなる本――を探すため、プロッツ法術学院を目指す。前にルミナスから聞いた話では、学院長が所持している本が、もしかしたら光の書かもしれないというのだ。
アルファとエクルは無事にプロッツ門を潜り、町を出た。前途には、プロッツの町へと続くサッツ街道が真っ直ぐ伸びている。
市壁の周辺は、防衛上見通しを良くしてある。舗装された幅広の街道の両側には、まばらに木が生えているばかりで特筆すべきものはない。
夏の盛り、何物にも遮られることのない太陽の光が容赦なく照りつけ、蝉たちの鳴き声が響いている。
暑苦しいはずのそれらも今のアルファには、まるで自分たちの前途を祝福してくれているように感じられた。
アルファはエクルと共に、サッツ街道を歩いていく。
と。
街道脇の木の背後から突然、人影が現れた。
「遅いよ。待ちくたびれた」
不遜にも聞こえる台詞を吐きながら登場したのは――
黄金の髪と空色の瞳を持つ、あまりにも端整な顔立ちの青年。
「ルミナス……!?」
「どうしてここに……!?」
驚くアルファとエクルに、何故か旅装に身を包んでいるルミナスは明後日の方向を見ながら答える。
「まぁ……アルファが光を使うのをこの目で見たとは言え……やっぱり君たちだけだと頼りないんだよね。今回みたいに僕の知らない所でおかしな事態に巻き込まれたりしたら気が悪いし……」
ルミナスはアルファとエクルに視線を戻し、いかにも彼らしい余裕の笑みを浮かべた。
「仕方ないから、もうしばらく君たちの旅に付き合ってあげるよ」
「ほっ本当か!?」
「ありがとうルミナス……!」
これはありがたい。文句なしに強く、法術も使えるルミナスが一緒だと助かる。
もちろん、自分一人で魔族たちと戦えればそれに越したことはないし、あまりルミナスを頼るのは悔しくもあるが、安全かつ有利に旅を進めるには、協力してもらったほうが絶対にいい。
「……けどお前そーいう言い方しかできねぇのか?」
アルファが不満げに言うと、
「だってホントのことだし」
と涼しい顔で答えるルミナス。
「お前な……」
……そうだ。ルミナスはこういう奴なのだ。根はいい奴なんだけど。
「でも、騎士団の仕事は大丈夫なの?」
「あ、それに、あの領主がよく許可したな?」
エクルとアルファが尋ねると、ルミナスは渋面になった。
「それがさ……許可、もらってないんだよね」
「は?」
「このところサーチスワード近辺の情勢は落ち着いてるし、部下たちも優秀だから任せることにしたけど……ネカル様には黙って出てきたんだ。しばらく休むって休職届だけ置いてきた。もし、僕が光継者に同行したいなんて申し出れば、ネカル様は僕を検問で止めて町から出られなくするくらいのことは平気でやるからね。だからその前に勝手に出たのさ」
だから町の外で待っていたのか。ルミナスは自分の立場を危うくしてまで、アルファたちと来てくれる。本当にありがたい。やっぱりいい奴だ。
「ネカル様はどうしても君たちのこと光継者って認めなくって……アブレスの剣――いや命暘の剣、あれを渡してくれるどころか、いつの間にか僕にもわからない場所に隠したみたいだ」
「そりゃ……あんだけ否定しといて、今さら認めづらいだろうけど……」
別に、看守たちのように伏して詫びてほしいとは思わないが、そう意固地になられても困る。
「まぁ、その代わりにはならないけどさ……これ、騎士団から君に」
ルミナスが背中の荷袋から出して手渡してきた袋には、硬貨が大量に入っていた。
「か、金? こんなに……何でだ!?」
「犯人扱いされてひどい目に遭わされたんだからね。それくらいは当然」
ルートホール夫人への弁償はなくなったし、アルファが護衛として稼いだ分、エクルがメイドとして稼いだ分も合わせると、かなりの金額だ。これなら当分は資金に困らない。
結局領主の力は得られなかったが、これからは何だか順調にいきそうな気がする。
「よっし!」
アルファは意気揚々と、夏空に拳を突き上げた。
「プロッツの町に出発だー!!」
*
ようやく旅を再開した光継者たちの様子を、彼らがいる地上界とは次元を異にする世界から見つめる者たちがあった。
地上における生を終えた者たちの魂が集う、霊界。その一端である花畑の空間にて――
「……良かった……一時はどうなることかと……」
アブレス王子に仕える三星臣の一人、ガレナが胸を撫で下ろした。
「ほんと良かった……」
同じく三星臣のミモザが頷き、アブレスに笑い掛けた。
「ずっと騒々しかったガレナが、やっと落ち着いてくれましたね」
「はは、確かに」
アブレスは苦笑した。
ガレナは……アルファやエクレシアに何かある度に大声で叫び、彼らに危害を加える者に呪いの言葉を吐いていたのだ。
アブレスも声にこそ出さなかったが、光継者たちに仇なす者らにはひどく憤慨したものだ。けれど、アルファもエクレシアも、何を恨むでもなく、よく乗り越えてくれた。
あの二人が最初に領主の信頼を得られなかったところから歯車が狂い、彼らを取り巻く様々なものが崩れ、失われてしまったが、それでも彼らはこの三ヵ月余りに、図らずもその一部を取り戻してきた。
領主ネカルの力は手に入らなかったけれども、当面の資金とルミナスを得たのだ。
彼らの受難に一区切りつき、アブレスもとりあえずは安堵しながら、臣下たちに言った。
「たぶん、これからも色々なことが起こるだろう。でも……信じて見守り続けよう。光継者たちを――」
第2章、ようやく終わりました。
長期間の更新停止が二度もあり、迷走が始まったと思われかねない展開にもなり。
それでもここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
ほぼプロット通りに書いたというのに、恐ろしい遅筆です。
作者は慢性的に忙しく、体調を崩すことも多いため、執筆速度は残念ながら上がらないと思いますが、気楽にのんびり書いていくつもりです。
第3章もある程度書き溜めができたら更新する予定ですが、間が空いてもあまり気にしないで頂けると幸いです。




