表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

読書好きの少年は、感情移入も人一倍。

作者: 来々


………何度やっても不思議な気分だった。

ページを開いて、好きなキャラクターを思い浮かべる。


………あぁ、引き込まれて行く。






僕は、幼い頃から妙に大人びていて、冷静な子供だったらしい。


そんな僕に友達ができるハズもなく、読書だけが幼少の頃の唯一の趣味だったそうだ。




小学一年生の頃から、休み時間はは図書室で読書をしていたのを覚えている。

同級生達が外で元気に走り回っている声を聞きながら、僕は静かに読書をしていた。






二年生になったとき、もう一人図書室の住人が増えた。折れそうな位細くて、肌が雪のように白い、

………もの凄く綺麗な六年生の子だった。


僕は彼女を見てドキドキした。

今まで、僕と図書委員しかいなかった暗い図書室が、一気に明るくなった気がした。




そして、彼女が図書室にいる事に何の違和感も覚えなくなったある日、

彼女が僕に話しかけてきた。




彼女は去年大病を患い、ずっと入院していたそうだ。

もともとクラスでも目立つほうではなかった彼女は、「この入院のお陰で、すっかりクラスに馴染めなくなった。」

と言った。


僕は、初めて話しかけてきた彼女にドキドキしたが、

「そうなんですか。」

と、クールに答えた。



すると彼女は、

「君、変わってるね。まるで私より大人の人みたい。」

と言って笑った。




それから彼女は、よく僕に話しかけてきた。


何の本が好きか、どんなジャンルが好きか、どの作者が好きか。

僕がその質問に答えると、彼女はいつも

「大人だね〜。」

と、笑った。




その、いつもの会話の中に、僕が能力に気付くキッカケとなる会話があった。




「ねぇ、君は?」


「はい?」


「君はいつも、どんな風に本を読んでるの?」


「どんな風にって、普通にですよ。」


「そうじゃなくて、いつもどんな気持ちで本を読んでる?」


「……わかりません。何かを考えて本を読んだ事なんてないかも……。」

「ふーん、やっぱり大人は違うねぇ。………私はね、その本の中で一番好きなキャラクターの気持ちになって読むの。そうしたら、私もその本の中に入った気がして、凄く面白いんだ。」


「そうなんですか。」


「君は最後はいつもそれだねぇ〜。」



そのときは何気なく受け答えしたが、後から考えると凄く感心した。

その日から、僕も好きなキャラクターの気持ちになって本を読むようになった。




やがて時が経ち、彼女は小学校を卒業して、また図書室は暗い空間になった。

このときばかりは、さすがの僕も少し寂しさを感じたが、その事よりも、彼女から教わった本の読み方に夢中になって、寂しさは直ぐに忘れた。




そして、六年生のある日、僕の能力がついに目覚めた。






授業中に読書をしていた時だった。

いつものように本を開いて、好きなキャラクターを思い浮かべた時、




突然目の前が真っ暗になった。

僕はいつもでは考えられない程のパニックになり、地面を殴った。



すると、暗闇が一瞬にして見覚えのない街になった。


再びパニックになり、辺りを見回す。


すると後ろから肩をたたかれ、

「どうした?○×□?」

と、今読んでいる冒険小説の、僕の一番好きなキャラクターの名前を呼ばれた。


僕は慌てて後ろを振り返って、

「なんでその名前を知ってるんだ?」

と聞いた。



すると、僕に声をかけてきた筋肉質の男が、こう答えた。

「なんでって、それがお前の名前じゃないか。○×□!」


しばらく唖然となった。しかし冷静になり今の状況を見ると、街はまるで、小説を読んで僕が想像した街そのままで、僕の服装もいかにも冒険小説の主人公のようだった。



僕は自分の置かれている状況が怖くなり、

「帰りたい。」

と、心から願った。




すると再び目の前が暗闇になり、次の瞬間には元に戻っていた。




授業は普通に行われていた。

時計を見ると、暗闇に包まれる前から10秒も経っていなかった。




疲れていて、居眠りをしてしまったのだ。

と、考えて自分を納得させ、本を開くと、




もう一度、同じ体験をした。




こうして僕は気付いた。




僕には、本の中に入る能力がある。




その後の僕は、何度も本の中に入って自分の能力を確かめた。



僕の能力は、

「本を開いて自分の好きなキャラクターを頭に思い浮かべるだけで、その本の中に、その好きなキャラクターとして入れる。」

と言う物だ。



この能力を使い、どんなに長い時間本の中にいても、

「帰りたい。」

と願うだけで、元の世界の、それも、能力を使う前の時間に戻る事が出来た。






だが大変な事もあった。


本屋で立ち読みをして、

「あっこれ良いな」

と思ってしまうと、いつの間にかその世界にいるのだ。


お陰で僕は、読書ができなくなってしまった。




そしてある日、




家にあった、父の愛読書であるホラー小説を手に取った。


興味が湧いた。


ホラー小説の世界は、どうなっているのか……。



本をパラパラとめくり、死なない様なキャラクターを探して、本の世界に入っていく。



………何度やっても不思議な気分だった。







ここは、どこの場面だろうか。



何だか背中がゾクゾクする。



何か温かいものが体についている。




自分の体を見ると、

ナイフが刺さっている。




あぁ……………。



こいつも死ぬキャラクターか………。


「帰りたい。」


と思ったのに、

世界が変わらない。




僕は、

死ぬ………。


恐い、怖い、恐い、怖い、恐い、怖い。



血が体から出て行く。


意識が遠のく中、最後に母の顔を思い出した。




―――――――――――


「………貴方がいきなり倒れてから、もう十年よ?いつまで黙っているの?起きない。………お願いだから………。」






ごめん。母さん。

皆様お元気ですか。

来々と申します。

久しぶりに書いた短編。なんだか良く解らない物になりました。

次は頑張ります。

ご期待下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最後が気に食わない。 投げました? と言われてもしゃあないんじゃ…。 途中まではすげーワクワクしてたんだけど……。女の子がどう関わるのかなぁなんてね。残念残念非常に残念。
[一言]  不思議な設定を生かし、よくまとまっている作品だと感じました。全体的な流れや雰囲気も主人公や世界観にあっていると感じました。  ただ、ラストがよく分かりませんでした。そういう結果になるだろ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ