はじまりの町。ルグトラシル
「ねぇ、ほんとうなの?エリシア。」
エリシアと名付けられた小さな女の子のぬいぐるみを両手にかかげた。
話すことなどないぬいぐるみ、エリシアだが、彼女、マリー・ドクマイアスはエリシアと心通わせているように思えた。
「これでもうエリシアと私だけになってしまったわね。」
ドクマイアス家の父親は、まだマリーが幼き頃に、この世を去った。
以降、母親である、マヌーサ・サラ・ドクマイアスは、愛する夫を亡くし、気が狂ったのか、夜通し、別の男と夜を過ごしていた。
その、マヌーサだが、何日も帰ってこない日がつづき、ついには、マリーの手元に一通の手紙が届いた。
「愛する娘、マリーよ。
わたくしは、もう家には帰れないだろう。
家には執事もいる。なんの不自由もないだろう。
わたくしは、もう家にはいられない。アザールがいなくなったいま、わたくしは、マリーを愛する資格がなくなったのだ。
ただ、言えることは、わたくしを探すな。元気に生きなさい。
あなたの母、マヌーサ・サラ・ドクマイアス。」
確かに、ドクマイアス家には執事がいるわけだが、本当使えない、ただのお子守にしかならないのだ。
1人、もうひとりと次々にやめてしまっている。
あの、執事もきっとすぐにやめてしまうだろう、
マリー自体そんなに期待していなかった。
「ねぇ、エリシア?私たち、これからどうすればいいの?
「・・・・。」
「そうね。そうしましょうか。ふふ。」