第2話 パニック・パーティー③
八王国がひとつ、ギデオンハートの王が告げる。
「よくぞ来てくれた。異世界からの勇者よ。お主を呼んだのは他でもな……」
「助けてください!」
王の言葉を遮ったのは他でもない、異世界からの勇者だった。
「頼む……俺たちの世界は、もう……ダークヒーローに滅ぼされて」
それが勇者が発した最後の言葉になった。
赤いマントを着たブロンド髪の大男が、勇者の心臓を素手で貫いてた。
大男は群衆を見渡す。
「……君たちは、きっと何かに虐げられていたんだね。助けを求める顔をしてる。懐かしいよ。一年前の僕なら、君たちを救ったと思う」
男の目元から赤いレーザービームが放たれ、群衆を焼いた。甲高い悲鳴が沸き上がる。
「いつからだろう? その顔が、大っ嫌いになったのは」
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八王国の一つ、カーディナルの王が告げる。
「よくぞ来てくれた。異世界からの勇者よ。お主を呼んだのは他でもな……」
「助けてください!」
王の言葉を遮ったのは他でもない、異世界からの勇者だった。
「頼む……俺たちの世界は、もう……メガシャークに滅ぼされて」
それが、勇者にとって最後の言葉となった。
三百メートルはあろう巨大な鮫が光の輪をぶち破って飛び込んできた。宙を漂う鮫が群衆に狙いをつけ、人も地面も建物も、片っ端から食い尽くしてく。
城にいたものは皆平等に、サメの腹に収まった。
人語を話すものは、もう誰もいなかった。
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八王国の一つ、ディアボロス王国にて。
王が告げる。
「よくぞ来てくれた。異世界からの勇者よ。お主を呼んだのは他でもな……」
「助けてください!」
王の言葉を遮ったのは他でもない、異世界からの勇者だった。
「頼む……俺たちの世界は、もう……****〇*■※****に滅ぼされて」
モザイクになったり、白線で割れたり、一瞬だけホワイトアウトしたりと、映像が乱れる。
電波の悪い場所で無線機を使ったような、ザザーという雑音が混じる。
ある時、画面が静止し、無音になる。
静寂の中、はっきりと、男の声がした。
「ごめんね。でも、僕らの世界は契約につき見れないんだ」
映像が途切れる。
勇者がどうなったかは、わからない。
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俺とリシェルは二人でスマホ画面をのぞき込んでいた。液晶の明かりを喪ったスマホの黒いガラス面が、俺たちの顔を反射していた。
「コピペっぽーい。されど、実録無修正なんですよ、これ」
「わからんことを知らん言語で説明するな。何だこれ? 何が起きてる?」
「八王国全て、異世界召喚を事故ったみたいです」
「は?」
「八王国がつないだ八の世界。全部滅亡してたんですよ。我らがゾンビ映画の世界、SF映画の世界、ギャング映画の世界、災害映画の世界、ホラー映画の世界、ヒーロー映画の世界そしてサメェッ! いやー、多種多様ですね」
「人類のやらかしが酷い」
「せまりくる異世界の侵略者に、王国の戦力じゃ全然相手になりません。しかし、まだどの王国も滅んでおらず、必死の抵抗を続けています」
「え? 何処にそんな抵抗勢力が……」
「七人の皇子たちです」
「バケモンにバケモンがぶつかってきた……」
一応、王国からすれば本来の計画通りなのが皮肉である。
勇者を皇子にぶつけようとはしたのだから。
「今や七人の皇子たちは、外敵から世界を守りうる最後の砦なのです」
「……それが、七人の皇子を生かす理由か?」
「ええ。ゾンビを見たあなたならわかるでしょう? 外敵は時間が経てば経つほど増長し、手が付けられなくなる。皇子の誰かが抑え込みに失敗し、陥落すれば、その脅威が世界のすべてを埋め尽くすでしょう」
「お前ら今日まで陥落させる側だったんじゃねえのかよ」
「事情が変わったんですよ。アストリア王国は唯一、カイルさんの存在で滅亡を免れた。外敵を隷属させた貴方は、いわば世界の特異点。人類サイド最強の存在です。そんなあなたが素敵な提案をしてくれて、私はもう、嬉しくて嬉しくてしかたないのです」
リシェルはまるで恋する乙女のように両ほほに手を添え、うっとりとした顔をする。
俺は頭を抱えた。
脳内に天秤が現れる。左には、騎士の誇りと勇者への憧れが重なる。右は、エイリアン、ギャング、隕石、怨霊、ダークヒーロー、サメと、あらゆる脅威がテンポよく、乱雑に積まれていく。人を護りたい気持ちを胸に、左も頑張っているが、右があまりに理不尽だ。世界を護る勇者って、こんなに過酷なお仕事だったか?
天秤が、静かにゆらめく。
「……あの提案、今からでも取り消せたりする?」
「駄目ですよ。私は魔王になるし、あなたは今日から、世界を救う勇者になる。あなたがやると決めたことです」
リシェルが笑い、少し申し訳なさそうに首を傾げ、手を合わせた。
「さあ、カイルさん。私たちの世界を助けてください」




