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第2話 パニック・パーティー③


 八王国がひとつ、ギデオンハートの王が告げる。



「よくぞ来てくれた。異世界からの勇者よ。お主を呼んだのは他でもな……」


「助けてください!」



 王の言葉を遮ったのは他でもない、異世界からの勇者だった。



「頼む……俺たちの世界は、もう……ダークヒーローに滅ぼされて」


 それが勇者が発した最後の言葉になった。

 赤いマントを着たブロンド髪の大男が、勇者の心臓を素手で貫いてた。

 大男は群衆を見渡す。



「……君たちは、きっと何かに虐げられていたんだね。助けを求める顔をしてる。懐かしいよ。一年前の僕なら、君たちを救ったと思う」



 男の目元から赤いレーザービームが放たれ、群衆を焼いた。甲高い悲鳴が沸き上がる。



「いつからだろう? その顔が、大っ嫌いになったのは」



******


 八王国の一つ、カーディナルの王が告げる。



「よくぞ来てくれた。異世界からの勇者よ。お主を呼んだのは他でもな……」


「助けてください!」



 王の言葉を遮ったのは他でもない、異世界からの勇者だった。



「頼む……俺たちの世界は、もう……メガシャークに滅ぼされて」



 それが、勇者にとって最後の言葉となった。


 三百メートルはあろう巨大な(サメ)が光の輪をぶち破って飛び込んできた。宙を漂う鮫が群衆に狙いをつけ、人も地面も建物も、片っ端から食い尽くしてく。


 城にいたものは皆平等に、サメの腹に収まった。

 人語を話すものは、もう誰もいなかった。



******



 八王国の一つ、ディアボロス王国にて。

 王が告げる。


「よくぞ来てくれた。異世界からの勇者よ。お主を呼んだのは他でもな……」



「助けてください!」



 王の言葉を遮ったのは他でもない、異世界からの勇者だった。



「頼む……俺たちの世界は、もう……****〇*■※****に滅ぼされて」



 モザイクになったり、白線で割れたり、一瞬だけホワイトアウトしたりと、映像が乱れる。

 電波の悪い場所で無線機を使ったような、ザザーという雑音が混じる。

 ある時、画面が静止し、無音になる。

 静寂の中、はっきりと、男の声がした。



「ごめんね。でも、僕らの世界は契約につき見れないんだ」



 映像が途切れる。

 勇者がどうなったかは、わからない。



******



 俺とリシェルは二人でスマホ画面をのぞき込んでいた。液晶の明かりを喪ったスマホの黒いガラス面が、俺たちの顔を反射していた。



「コピペっぽーい。されど、実録無修正なんですよ、これ」


「わからんことを知らん言語で説明するな。何だこれ? 何が起きてる?」


「八王国全て、異世界召喚を事故ったみたいです」


「は?」


「八王国がつないだ八の世界。全部滅亡(、、、、)してたん(、、、、)ですよ(、、、)。我らがゾンビ映画の世界、SF映画の世界、ギャング映画の世界、災害映画の世界、ホラー映画の世界、ヒーロー映画の世界そしてサメェッ! いやー、多種多様ですね」


「人類のやらかしが酷い」


「せまりくる異世界(アポカリプス)の侵略者に、王国の戦力じゃ全然相手になりません。しかし、まだどの王国も滅んでおらず、必死の抵抗を続けています」


「え? 何処にそんな抵抗勢力が……」


「七人の皇子たちです」


「バケモンにバケモンがぶつかってきた……」



 一応、王国からすれば本来の計画通りなのが皮肉である。

 勇者(バケモノ)皇子(バケモノ)にぶつけようとはしたのだから。



「今や七人の皇子たちは、外敵から世界を守りうる最後の砦なのです」


「……それが、七人の皇子を生かす理由か?」


「ええ。ゾンビを見たあなたならわかるでしょう? 外敵は時間が経てば経つほど増長し、手が付けられなくなる。皇子の誰かが抑え込みに失敗し、陥落すれば、その脅威が世界のすべてを埋め尽くすでしょう」


「お前ら今日まで陥落させる側だったんじゃねえのかよ」


「事情が変わったんですよ。アストリア王国は唯一、カイルさんの存在で滅亡を免れた。外敵を隷属させた貴方は、いわば世界の特異点。人類サイド最強の存在です。そんなあなたが素敵な提案をしてくれて、私はもう、嬉しくて嬉しくてしかたないのです」



 リシェルはまるで恋する乙女のように両ほほに手を添え、うっとりとした顔をする。

 俺は頭を抱えた。

 脳内に天秤が現れる。左には、騎士の誇りと勇者への憧れが重なる。右は、エイリアン、ギャング、隕石、怨霊、ダークヒーロー、サメと、あらゆる脅威がテンポよく、乱雑に積まれていく。人を護りたい気持ちを胸に、左も頑張っているが、右があまりに理不尽だ。世界を護る勇者って、こんなに過酷なお仕事だったか?

 天秤が、静かにゆらめく。



「……あの提案、今からでも取り消せたりする?」


「駄目ですよ。私は魔王になるし、あなたは今日から、世界を救う勇者になる。あなたがやると決めたことです」



 リシェルが笑い、少し申し訳なさそうに首を傾げ、手を合わせた。



「さあ、カイルさん。私たちの世界を助けてください」


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― 新着の感想 ―
ここは、完全に“スケールの跳ね上がり方”が気持ちいいパートでした。 ダークヒーローやメガシャークなど、災厄のバリエーションをさらに広げつつも、「勇者の最期の言葉→即崩壊」という型を維持しているため、混…
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