表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/23

第7話 劇場版3作目でよく見る展開③

『ゲームに勝つコツは、敵がやりたそうなことを徹底的に邪魔することだ。たとえ敵の計画が見えないにしてもね』


 昔、クレスが仲間から聞いた言葉だ。



「だとすれば、あれが(まと)だな」



 クレスは氷の槍を作り出す。

 街頭ビジョンに向けて投げ放とうとしたとき、横からムーに殴りつけられた。

 クレスの身体が吹き飛ばされる。



「ああ、すまない。付き合うという約束だったか」



 クレスが放つ衝撃波がムーの頭を木っ端微塵に吹き飛ばす。

 そのままムーの両手を握り、左右に引きちぎる。



『おーっとクレス選手。容赦ない攻撃! 内心まだキレてる様子です!』


『何なんだあの男……怖ええよぉ』



 巨大スクリーンは二つに分割されていた、

 上部ではムー視点での戦闘が繰り広げられている。

 下部では、実況のリシェルと解説のゲイリーがスタジオで椅子に座っていた。

 体を引き裂かれる動画を見て追体験したのか、ゲイリーは震えている。


 画面の中にクレスの眼に、青い光が灯る。



「えっと、寄生虫の位置は……ああ、そこか」



 コアの位置を特定したクレスが、拳を構える。

 バラバラにされた挙句凍らされ、ムーは抵抗する術を失っていた。


 トドメを刺すその瞬間、炎の竜巻が空に生じた。

 灼熱(しゃくねつ)の渦がうねり、ムーもろともクレスの身体を飲み込んでいく。


 続けて飛び込んできた鉄の砲弾がクレスの腹にぶち当たる。体勢を直そうとしたクレスの顎を衝撃波が襲い、アッパーカットを喰らったかのようにのけ反った。



「……これは? 七本槍セブンズ・ヴァンガードの異能?」



 クレスは平気な顔で、前に向き直る。



「マジか、これでもノーダメ? ヤバいなお前」



 クレスの前には、目を丸くした少年がいた。



「……君も死んでないのか、本当に、嫌になる」



 拡声器を持った少年――カイルは、相手を挑発するかのように首を傾げている。


 その背後に七人の影が並ぶ。

 彼らはかつて、クレスを信奉していた七人のヒーローだったもの(、、、、、)だ。


 今、彼らの瞳に生者の光はない。

 肌は灰色に乾き、血管には血とは異なる黒い何かが浮かんでいる。

 それでも、能力は生前と同じだった。

 炎が揺れ、雷が鳴り、竜巻が唸る。

 七つの異能がカイルの背後で静かに渦巻いている。


 クレスがつまらなさそうに鼻を鳴らした。



「……君は死者を操る能力だったな。しかし、生前よりも能力の精度が悪い。君がどんな命令をしても、私にダメージは入らないさ」


「それはどうかな?」



 カイルが拡声器を構える。



『奴に示せ。お前たちの最期を』



 カイルの言葉と同時に、七人のヒーローの動きが止まった。

 七つの視線が、ゆっくりとクレスへ向く。


 誰も攻撃の所作は取らない。

 誰も異能は使っていない。

 それでも、クレスの呼吸が止まる。


 ある者は、歯を食いしばりながら涙を流していた。

 ある者は唇を震わせ、喉の奥でかすれた空気を吐き出していた。

 またある者は、まるで小さな子供のように、怯えきった顔をしていた。


 助けを求める顔を、していた。



「……やめろ」



 七人の目の奥には、絶望以外に、もう一つの感情があった。

 彼らはクレスを許さない。

 まるで――クレスの罪を訴えるように、恨めし気な視線を送る。


 カイルが満足気に笑う。



「うん。見た感じ、大ダメージだ」



 クレスがうつむく。



「……君は、卑劣だ……僕には君が理解できない」


「そいつは皮肉だな。俺はお前の最大の理解者なのに」


「……何だって?」


「この七人からお前の話は聞いた。お前の心には、世界で唯一、俺だけが理解できる側面があるのさ」


「……そんなもの、あるはずない」


「あるさ。俺たち二人は、他人の命を犠牲に力を得た者同士、分かり合えるはずなんだ」



 カイルが両手を広げて空を仰ぎ、微笑を浮かべた。






「死んだ奴を踏みにじるのは、気分がいいよな?」






 クレスはただ、じっとカイルを見つめていた。

 焦点は合っている。しかし、その目に光はなく、無限の暗闇が広がっている。

 彼の中で、一本の糸が切れる。

 大きな表情の変化はない。

 ただ静かに、強く噛み締め、血を滴らせる。

 彫りの深いその顔から、一筋の涙を流した。



「君には、人の心がないのかッ!?」


挿絵(By みてみん)


 クレスが拳を構えた。

 カイルもゾンビに合図し、異能を使わせ襲い掛かる。



「お前にはありそうだよ、可哀そうにッ!」




【街頭ビジョン、あるいはゾンビたちのスマホ画面】


『さあ! カイル選手の煽りスキルが火を噴いた! フィジカル面では勝ち目がない分、クレス選手のメンタルブレイクを狙いに来ている! 薄々思ってたけどやっぱあの人性格最悪だぁっ!』


『……いやこれ単に怒らせただけだって……あのヒーローの顔、怖すぎる』


 ゲイリーが身震いする。


 その所作を追うように、スマホやタブレット、街頭ビジョンを見つめるゾンビたちも震えた。ゲイリーの恐怖はデバイスを通じ、王都全域に伝播(でんぱ)する。


 かつては平和の代名詞であったクレス=ウォーカーは今、皮肉にも、王都のゾンビたちにとって恐怖の象徴(シンボル)と化していた。


 ゾンビ十五万人の恐怖心――彼らの(おそ)れが、今、クレスの色に統一される。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
面白かったです! 異世界転生が“救い”ではなく、終末世界と繋がって厄災を招き入れるという設定が新鮮で、刺激的でした。 ゾンビやエイリアン、ヒーローなど、それぞれ単体でも魅力的な世界観が一度にぶつかり合…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ