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第6話 仲間になろう!③

「何だ、司令官を殺しても止まらないのか」



 イクリプスの数百のレーザー光線の砲門が、クレスに向く。

 主砲が再び光を放つ。



「もう効かないのは知ってるだろうに」



 クレスが空に浮かぶ、イクリプスの外殻へ拳を叩き込む。

 衝撃波が王都全体を揺らす。

 数十メートルにわたってイクリプスの外殻が裂け、内部構造が露出する。

 しかし――。



「ああ、ここに来る前に戦ったエイリアンが自慢してたな。自己再構築有機装甲……だったっけ?」



 裂けた装甲が、ゆっくりと動き始める。

 金属が液体のように流れ、破壊された部分へと集まっていく。

 数秒後。

 装甲は、完全に元の形へ戻っていた。

 クレスが眉根を上げ、今度は蹴り食らわせた。

 音速を越えた一撃が、艦体を横から叩きつける。

 しかし、潰れた装甲は再び(うごめ)き、歪みを元に戻していく。



「……面倒な」



 絶対防御と再生能力のマラソンバトル。規模は違うが、数刻前にカイルとムーの間で繰り広げられた肉弾戦と同じ様相を(てい)していた。

 ただ一つ、明確な違いは、両者の間に埋めがたい力量差があることだ。

 イクリプスは再生に多大なエネルギーを消耗している。やがて力尽きるのは目に見えていた。


 クレスは一度地表に戻ってきて、ため息をついた。



「無駄な抵抗……これは、時間がかかるな」



 その時、土煙がふわりと揺らいだ。



『「『「困っているようだな、クレス!」』」』



 市街地を焼く炎を、黒い人影が(くぐ)り抜けた。映画で見るようなヒーローコスチュームに身を包んだ七人の男たちが、瓦礫の上に颯爽(さっそう)と降り立った。



挿絵(By みてみん)


 ブレイズ・エリック

 ――都市を焼き尽くせる炎の能力者。

 サンダーボルト・ライアン

 ――雷速で戦う電撃ヒーロー。

 メテオストライク・ブレット

 ――空の筒から超質量の砲撃を放てる。

 ストーム・タイラー

 ――竜巻を叩きつける嵐の支配者。

 ショックウェーブ・コナー

 ――空気振動を操る衝撃波の使い手。

 フロスト・ダニエル

 ――街区を凍結させる極低温を操る。

 ソーラーフレア・アレックス

 ――太陽エネルギーを吸収しビームが撃てる。


 クレスを信奉するヒーロー組織、七本槍セブンス・ヴァンガードである。クレスが無辜(むこ)の民を殺し世界を滅ぼした後も、彼らはクレスに身を捧げている。本物の狂信者だ。



「今回の(ヴィラン)はあの戦艦か!」

「なんて凄惨な街だ。町中死体だらけだぜ!」

「あと少し早く駆けつけていれば……クソッ、第三皇子(ミモザ)の邪魔さえ入らなければッ……」

「……かわいそうに、祈りを捧ぐ姿勢のまま亡くなったらしい」

「ん? あれ、今あの死体、動かなかったか?」

「気のせいだろ。どう見ても死体だ」

「さあクレス、俺たちの手で仇を討とう!」



 ヒーローたちが構えて叫ぶ。炎に雷に衝撃波、多種多様なエネルギーが彼らの手元で()められる。



「さあ、俺たちの力を一つにしよう!」



 クレスが薄く笑う。



「ああ、そうだね。君たちの力を一つにしよう」



 そう言って、クレスはブレイズ・エリックの心臓を素手でぶち抜いた。

 続いて、サンダーボルト・ライアンの首が、肩から滑り落ちる。

 メテオストライク・ブレットは、頭から先が消し飛んだ。

 ストーム・タイラーの身体が縦に割ける。

 ショックウェーブ・コナーの胸が陥没する。

 フロスト・ダニエルの首がへし折れる。

 ソーラーフレア・アレックスは、頭を握り潰された。


 次々と崩れ落ちていく死体たちに目もくれず、クレスが肩を回す。



「助かったよ。日が暮れてしまうところだった」



 彼はイクリプスを見上げる。



「ちょうど、遠距離の火力を補強したかったんだ」





「そんなわけで、このままではイクリプスが破壊されてしまうようです」


 薄暗い廃墟の中。

 ダークヒーローの動向を映したスマホを掲げ、リシェルが言った。


挿絵(By みてみん)


 近場のゾンビでマーキングして視座(ビューポイント)を使ったらしい。


「……不味(まず)いな。戦況は悪化する一方だ……悪化させたのは俺なんだが」


 (あご)に手をあてて、カイルが言った。

 地下水路に転落したカイルの上半身は、リシェルの手で回収されていた。既に新しい服に着替えている。


「イクリプスとダークヒーローをぶつけて消耗させる計画だったんだけどなあ……」


「あの人おかしいよ、強すぎです。今のところノーダメじゃないですか」


「パワーバランスが崩れた今、俺たちはエイリアン側に加勢するしかない。力を合わせてダークヒーローを討ち、イクリプスを守り抜くんだ」


「私たちの考えは大体そんなところですよ、ムーさん(、、、、)



 ムーは五体満足の身体で床に寝かされていた。



「???」



 バラバラにされたムーの半死体は、リシェルが回収していた。

 精神を乗っ取る特性を失い、身体強化と再生能力に特化させた改造版パラサイト・コア――それを身体に埋め込まれたムーは、一命をとりとめた。

 ムーは感覚で理解する。

 あと数分安静にすれば、以前より頑丈な身体を手に蘇ることだろう。


 カイルが親指を立てる。



「思ったより強い奴を呼んじゃって悪かったな! そんなわけでムー、仲間になろうぜ!」



 ムーが叫ぶ。




「どの立場で言ってんだ貴様ァッ!?」

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