第6話 仲間になろう!②
「……何だ、あの男は?」
空中に浮かぶムーの周囲を、ホログラムの警告文が取り囲む。
『警戒レベルを更新』
『更新』
『更新』
『更新』
『計測不能』
『撤退を推奨』
ムーの視線は、一人の男に釘付けにされていた。
ダークヒーロー、クレス=ウォーカー。
クレスは今、カイルの上半身の行き先を眺めていた。カイルは陥没した地盤の裂け目から地下水道に転落し、流されてしまったらしい。
「……ゾンビを操る力、それだけか。本体は雑魚だね」
クレスの言葉を聞いて、ムーは察する。
――マントの男は、あの少年の異常な再生能力を知らない。
――少年が死んだものと見做し、関心を失っている。次に彼が目を向けるのは――。
クレスがムーに顔を向けた。
ムーは頭を抱えた。
「ありえない」
――あれは、誰だ?
――フルパワーの一斉掃射を手のひらで受け止めて、やけどさえ負っていないぞ。
――なぜあんなバケモノが現れる? この世界はどうなっているのだ?
ムーの耳元で通信機がさえずった。
『こちらガロン。緊急事態です』
ムーはわずかに眉をひそめる。
『重力装置を解析したところ、厄介な事実が判明しました』
ムーは応答しない。
ガロンが不審そうにしているのを、通信機越しに感じる。
『結論から言えば、今から約一時間半で、この地に月が落ちてきます。あの装置には、月の軌道を曲げてしまう副作用があったようです。』
「ガロン、通信を切れ、私は忙しい」
『忙しい? これ以上の優先事項がありますか? 早く手を打たねば、私たちの寿命はあと九十分なのですよ?』
「九十分か……羨ましいよ」
『は?』
こちらを見上げてくるクレスと、ムーは目を合わせた。
五十メートルは距離があるだろうか。それでも不思議と二人そろって、お互いの表情や息遣いを把握していた。
ムーは冷や汗をかきながら、苦笑いを浮かべる。
「私の寿命は、あと十秒あるかもわからんぞ」
ムーの装甲が軋んだ。
黒い外殻がスライドし、その下から銀色の多層装甲がせり出した。
白いエネルギーの結晶が六枚、背中から翼のように広がる。
胸部のコアが輝き、全身をほのかな青い輝きを包み込んだ。
「戦闘兵装……ゼレノアQ!」
ムーの切り札、防御を捨てた特攻型装甲。
一時的に摩擦と空気抵抗を無視することでき、そのトップスピードは音速を越える。
しかし、その高速機動が日の目を見ることはなかった。
何しろクレスは、ムーの目の前にいたのだから。
「やあ! 楽しい午後を過ごしてる?」
クレスが片手を上げ、明るい顔で挨拶した。
「……え? あの……いつの間に?」
ムーがそう言ったとき、胸部のコアはもう、音もなく砕け散っていた。
六枚のエネルギー体も粉々だ。
ムーの手足はバラバラで、胴も腰で二つに切り離されている。ムーの身体は血しぶきを上げながら瓦礫の街へと落ちていった。




