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第14話 仲間になろう!①

【ヒーロー、クレス=ウォーカーの独白】



「君の能力は素晴らしい。逆境を乗り越え敵を打ち砕く、物語の主人公(ヒーロー)にこそふさわしい力だ」


  かつて僕の能力を指して、ヒーロー管理局の長官が言った。

  僕はその日、長官を殺した。




 僕の世界には、特殊な能力をもって生まれた人たちがいて、彼らはみんな、世界を守るヒーローとなることを運命づけられていた。


 僕が初めて自分の能力を知覚したのは、飼い犬のベスを殺したときだった。


 ある雨の日、僕はベスを連れて散歩に出ていた。

 その日のベスは何か機嫌が悪かったらしい。ぐずって横断歩道を渡ろうとしなかった。僕は苛立って、ベスの身体を押し出したんだ。


 その瞬間、信号無視のトラックが突っ込んできた。


 僕が押したせいで、ベスの身体は一瞬でグチャグチャになった。

 すると何故か、僕の身体は変容した。

 僕の嗅覚は研ぎ澄まされ、数キロ先の匂いも嗅ぎわけられるようになった。


 かくして、僕は自分の能力を自覚することになる。


 能力のルールはシンプルだ。

 殺した相手の能力を継承する。

 発動条件は、本当にクソ。

 殺す相手が、僕を愛してくれていること。

 敵をどれだけ殺しても強くなれないが、友だちを殺せば、僕のパワーは際限なく膨れ上がる。

 そんな、最悪の力だった。




 でも僕は気にしなかった。こんな能力、どの道必要なかったんだ。

 だってヒーローに仲間入りした僕には、素敵な仲間たちがいたんから。

 ジョー、ネイサン、オリビア、デイビッド。みんな、僕を可愛がってくれた。



「呪われた力? 気にするなよ」

「君の嗅覚は索敵に有用だ。自信を持て」

「戦えなくたって、クレスは私たちの仲間だよ」

「僕らはチームだ、誰も欠けてはいけないんだ。もちろん、君も」



 転機が訪れたのは、凶悪な(ヴィラン)、アイアンレイスと相対したときだった。

 戦闘で疲弊した僕たちは、廃倉庫に隠れて息を殺していた。アイアンレイスに見つかれば一瞬で殺される、緊迫した状況だった。



「勝てる方法が、一つだけある」



 ジョーが言った。



「クレス、俺たちを殺せ。俺たち四人の力を、お前ひとりに集約する」



 他のみんなも覚悟を決めた顔で頷いた。



「私たちはきっと、君の中で生き続ける」

「僕らは幸せさ。僕たちの意思は、君が(まっと)うする」

「正義を執行してくれ。俺たちの代わりに」



 誰一人、涙を流さなかった。

 泣いてたのは、僕だけだった。

 そのとき僕は思ったんだ。この人たちは本当のヒーローなんだって。


 僕は四人を殺し、彼らの力を継承した。新たな力を身につけた僕にとって、アイアンレイスは敵じゃなかった。



 月日は流れ、僕にも新しい仲間ができた。

 マシュー、ニコラス、クリストファー。みんな、前の仲間より強かった。



「初めて会ったとき思ったよ、僕と君は生涯のライバルになるって」

「若いな、お主。若すぎる。死なせるわけにはいかんなあ」

「俺が君を鍛えよう。最高のヒーローになれるまで」



 みなと一緒に努力を重ね、僕はますます強くなった。

 でも、次の転機は訪れた。

 僕らの力じゃ到底太刀打ちできない(ヴィラン)、ブラックコメットに会敵し、僕らは瀕死の重傷を負った。

 何とか逃げ延びた僕は、また仲間を殺すことになった。僕以外は満場一致の決定だった。



「あの世で君を待ってる。百年後くらいに、また競い合おう」

「我儘ですまん。だが、託させてほしい。次の世代に」

「クレスはもっと強くなれるよ。俺が保証する」



 みんな、何一つ文句も言わず、黙って僕に首を()ねられた。

 これまでの努力なんて鼻で笑えるくらいのスケールで、僕はパワーアップした。僕はブラックコメットを瞬殺した。


 それからも、僕は殺した。



 星を刈る者(スタ―リーパー)を討つため、僕は仲間を殺した。

 虚空の暴君(ヴォイドタイラント)を討つため、僕は仲間を殺した。

 異星の戦王(ウォーロード・ゼノス)を討つため、僕は仲間を殺した。

 殲滅者(アナイアレーター)を討つため、僕は仲間を殺した。

 赫き処刑人レッド・エグゼキューターを討つために、僕は仲間を殺した。



 僕の仲間はみんな勇敢で、かっこよかった。

 命を惜しむ人なんて、誰ひとりいなかったんだ。

 当然か、だって彼らはヒーローだったから。

 自分が死ぬと決まったときも、前を向く。みんな、目に希望を宿すんだ。



「僕らの世界は終わらない、だってクレスがいるんだから」

「君の未来に栄光があらんことを」

「クレスは、僕らが紡いだ最後の希望だ」

「私の道はここまで。でも、君はまだ歩き続ける、君の後ろに道ができる」

「泣く理由なんてないよ。だって、クレスがいるもの」

「あとは頼んだよ」

「君が生きてくれれば、それでいい」

「愛してるわ、クレス」



 ねえ、誰か教えてよ。

 なんでみんな、同じ顔をするの?

 みんな、別れの言葉をかけるとき、覚悟を決めて、僕に微笑みかけてくれたんだ。

 僕には、わからないんだ。

 どうしてみんな、誰ひとり例外なく、僕が首を()ねる直前になって――。



 笑顔を消して、僕に向かって――。










 助けを求める顔したの?









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