4. 期待した時点で負けだった
端末を見つめたまま、しばらく動けなかった。
【推奨お見合い候補】
【承認しますか?】
はい/いいえ。
たったそれだけの選択肢がやけに重い。
(どうしよう)
相手のプロフィールをもう一度開く。
名前。年齢。職業。
どれも普通だ。
写真を拡大する。
落ち着いた表情。
清潔感のある服装。
威圧感はない。
しばらく見て、思い出す。
いや、実物とも齟齬はない。
写真だけ良く見えるタイプではなかった。
会話内容は残念だったが、話した感じ変な印象は持っていなかった。
あれは私の話題提供能力にも問題があるだろう。
過去のお見合い相手を思い出す。
比べるまでもない。
(問題は私の方では?)
冷静に振り返ると、だいぶポンコツを晒している。
藻ドーナツにドレッシングをかけていた人間である。
普通なら引く。
相手の立場なら、私でも引く。
だが、ここで悩んでも意味はない。
私がどう思うかではなく、
相手がどう思ったかがすべてなのだ。
会うかどうかを決めるのも、
続くかどうかを決めるのも、
最終的には相手側の判断である。
私が今ここで何を考えても、
結果にはほとんど影響しない。
向こうが無理だと思えば断るだろう。
その可能性の方が、正直かなり高い。
なら、私が先に拒否する必要もない。
指が少しだけ動く。
はい。
いいえ。
深く考えるのをやめた。
どうにかなるものではない。
どうにもならないものは、流れに任せるしかない。
軽い気持ちで。
【はい】を押した。
すぐに確認画面が表示される。
【返事を確認しました】
【詳細は後日通知されます】
あとは相手からの返事待ちだ。
まあ向こうが断るかもしれない。
むしろその方が自然だ。
端末を閉じる。
日常が戻る。
仕事をして、帰って、食べて、寝る。
平穏な生活は続いていく。
——当日、羞恥で頭を抱えることになるとは、この時の私は知らなかった。




