1. 結婚を急かす方法として宇宙を選択するかね
これはストレス発散のために書きました。
後書き参照。
「そろそろ結婚相手を見つけなさい。さもなくば――宇宙に放り出すぞ。」
親族会議の場に響いたのは、信じられないような言葉だった。
ホログラム越しに並んだ親戚たちは真剣そのもの。冗談ではなさそうだ。
(……いやいやいや!?
“宇宙に放り出す”って、比喩だよね? 息できませんけど!? 漂流して死ぬってこと!?)
「○○家のお嬢さんは三件目で婚約が決まったそうよ」
「××商会のご令嬢も、AI推薦の相手と交際順調だそうだ」
「あなたも次のパーティには必ず参加しなさい」
(……仕事→ゲーム→寝るで生きている干物の私が? 婚活パーティーですって!
いやここでマジレスしてる場合じゃない……視線が痛すぎる……)
「はいぃぃい、分かりましたぁ…」
⸻
私は渋々ドレスに袖を通し、慣れないハイヒールで会場へ向かった。
一歩ごとに足首がガクガク震える。すでに婚活どころかサバイバル状態だ。
会場に入ると、そこは光の洪水だった。
華やかな令嬢たちがきらびやかに笑い、候補者たちと次々に談笑し、端末をかざしては連絡先を交換している。
(……な、なんなのこのスピード感!?
ゲームで言うなら、私がチュートリアルに入った瞬間、周りはもうラスボス戦やってるんだけど!?)
勇気を振り絞って声をかけようとしたが、目が合った瞬間に相手はすっと視線を逸らし、別の令嬢と会話を始めてしまった。
(……え、今、私透明になった? 存在認識されなかった?
婚活会場ってステルス機能標準搭載なの!?)
必死に笑顔を作ったが、誰も近づいてこない。最終的に——連絡先ゲット、ゼロ。
(……ゼロ!? 一件も!?
ポイント増えないどころか、最初から存在してなかった扱い!?)
追い打ちのように、提供された食事を口にする。
ドーナツは油と藻の香りがする、これなら塩味の方がマシ。
プチケーキは見た目キラキラだが、味は虚無。
(……無理。婚活でもご飯でも、私は敗北者……!)
でも誤解しないでほしい。服装も容姿も、人並み程度にはちゃんとしている。
ドレスは流行り物、髪もメイクもプロ仕上げ。致命的な欠陥はない。
ただ、問題は——。
(多数の人と一度に会話するの、無理ゲーすぎる……!
でも一対一のお見合いなら……まだ、ワンチャンあるかも?)
私はシステムに申請を出した。
「集団イベントではなく、一対一のお見合いに切り替えたい」と。
——これが、さらなる地獄の入り口だった。
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一対一なら、まだマシかもしれない。
そう思って臨んだお見合いだったが、システムが自信満々に送り込んできたのは——
まずは『ママ依存くん』。
「母が選んでくれた服を君に着てほしいんだ。母もきっと“私の見る目は正しい”って褒めてくれるよ!」
(……母経由!? あんたの意思はどこ行ったの!? 私、母のコスプレ人形じゃないんだけど!?)
次は『スタコラ皇子』。
スタスタ先を歩き、出先でゴミを放置してはため息。
「やれやれ……ついてこれないようだな」
(……婚活で競歩すな! こっちはピンヒールだぞ!!)
さらに『週七ブラック様』。
「妻は貞淑に。夜間外出、酒などもってのほか。休日は家業を手伝え。平日は外で稼げ。」
(……週休ゼロ!? “貞淑”ってオブラート剥がしたら奴隷契約でしょ!?)
そして極めつけ、『スキップCMマン』。
お見合いの最中、視線を宙に泳がせ手で空をシュッシュッ。
「…どうかされましたか?」
「ごめん、今ちょっと脳内広告をスキップしてて……」
(……お見合い中に動画見るな、広告消すなーーー! 婚活に集中しろバカー!!)
こうして私は悟った。
(漂流死を避けたいのに、私が先にストレスで死にそう……!)
⸻
現実に疲れ果てた私は、ついに禁断の逃避先に手を伸ばした。
VR婚活シミュレーターである。
ログインすると、そこには完璧にプログラムされた理想の紳士が待っていた。
私の話を最後まで聞いてくれる。母の話もしない。歩くスピードも普通。広告も見ない。
(……ああ、これよ。これが私の求めていた婚活……!)
夢中で理想を語り終え、システムに反映させた。画面に無慈悲な数字が表示される。
「その条件での結婚確率は——0.1%です」
……え?
(ちょっ……0.1%!? それもう隕石直撃レベルじゃん!? 私、詰んでるの!?)
私はVR空間の真ん中で絶叫した。
「漂流死イヤーーーー!!! どうなっちゃうの私ーーーー!!!」
ちなみにこの4つのケースは実話です。
同情するなら笑ってくれ(ヤケクソ)




