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2話

私は、いつも独りぼっちだと思っていた。でも、実は誰にも言えない秘密のお友達がいる。

私の寝床は、院で一番狭くて汚い部屋。そんな場所でも、夜になると少しだけ心が温かくなる瞬間がある。深夜、私は古びた手鏡を手に持ち、それを見つめながら話しかけるのだ。


院長先生がどこからかもらってきたその手鏡は、少し割れてしまい、捨てるようにと言われた。私は捨てる前に、まだ使えるんじゃないかと少しだけその鏡を見てみることにした。


「あれ?」


鏡の中に、何かが映っている。そう思った瞬間、鏡の向こうから声が聞こえてきた。


『え?!女の子?』


「え?!オバケ!!」


私が驚いて飛び退いたその瞬間、鏡から見えたのは予想に反して恐ろしい存在ではなく、見知らぬ少年だった。


それが、シオン君との出会いだった。初めは驚いたけれど、シオン君はすぐに私に優しく話しかけてくれ、私たちはすぐに友達になった。鏡の向こうにいる彼と話すことで、私は孤独を感じることなく、少しずつ心が安らいでいった。


『また虐められたの?』


「ち、違うよ‥‥私が鈍臭いからだよ。でもね、今日は少しだけお花が売れたから、良かったよ」


シオン君は私の話に反応し、いつも温かい言葉をくれた。


『ルナはどこの孤児院にいるの?僕、絶対君を探してあげるから!』


「‥‥たまに街に行くけど‥‥私、文字が読めなくて‥」


『そうなんだ?じゃあ、僕が教えてあげるよ!でも、僕もあまり外に出ないし‥‥僕、父上のように騎士団を率いるほど強くはないから』


「そ、そんなことないよ!シオン君はとても強いよ!私はわかるよ!」


そう言ったとき、シオン君は少し照れたように頬を赤らめて、恥ずかしそうに笑った。


『でも、君には魔力があるんでしょ?それなら、きっとどこかの貴族の子なんだろうね』


「‥‥私、いらない子だったのかな」


『ルナは、いらない子なんかじゃないよ!』


シオン君はそう言って、ニッコリと太陽のような笑顔を見せてくれた。その笑顔だけで、私は心の奥が温かくなった。どれほど暗い日々を送っていても、彼がいてくれるから、少しだけ前を向ける気がした。


この国では、貴族はほとんど魔力を持っているとされ、その中でも王族は炎の属性を持つ者が多いと言われていた。シオン君が話す魔力のことも、私は不思議に思いながら聞いていた。


『ルナは‥凍らせちゃうんだっけ?』


「う、うん‥‥。あ、昔からね、胸元に、ほら!ちょこんと、お星様のアザがあるんだ!」


『ル、ルナ!見せなくていいよ!?だめだよ!そんなすぐに人に見せちゃ!』


「あ、ごめんね。みんなにもあるのかなって思って‥‥」


シオン君は慌てた様子で言ったが、その後も私に優しく話しかけてくれた。


『あ、そうだ!最近僕、犬を飼ったんだよー名前はベン!』


ただのたわいもないお喋り。だけど、それが私にとっては唯一の支えだった。シオン君はきっと、良い家柄の子なのだろう。だからこそ、彼が私に優しくしてくれるのはとても嬉しく、心強かった。


『あ!そろそろ、メイド達が様子を見に来る時間だ!ルナ、おやすみなさい!へへ』


「うん、おやすみなさい。」


鏡の向こうから、シオン君の声がふわっと消えた。その時間が過ぎると、私はひとり部屋の隅で静かに目を閉じる。シオン君が私の秘密のお友達だということを、誰にも話すことができないけれど、私にとっては何より大切な存在だった。




一方、遠く離れた城内では、国の運命を左右する人物たちが暗い話をしていた。


ベラズレル国の国王と王妃は10年前に他界し、現在は国王の妹であるメランダが国を動かしていた。しかし、そのメランダは苛立ちを隠せず、周囲の騎士たちに声を荒げていた。


「まだルカ王子は見つからないの!?あの継承者を持っている邪魔な存在が、また外に出歩いているのであれば、殺すチャンスがあるわよ!」


「メランダ様、しかし‥‥ガハッ!!」


「‥‥メランダ『陛下』と呼べと言ったでしょう。ああ、我が甥っ子であるルカ王子は本当に困った存在だわ。ねえ、オリバー。」


メランダが、自分の息子であるオリバーに話しかけると、オリバーは穏やかな笑みを浮かべて答えた。


「母上、僕はルカと『仲直り』をしたいので、探しに行ってもよろしいですか?」


「‥‥あら、オリバー。そうね、貴方なら仲直りできるわ。私も甥っ子が心配なの。あの子に何か起きないかと心配しているのよ、ふふふ。」


その言葉には、どこか不吉な意図が込められていた。


彼らがどんな計画を立てているのか、この時私はまだ知らない。どうやら私の周りの世界は、ますます暗いものになっていく予感がした。

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