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16話

あれから、六年の月日が流れていた。


国中では、次期国王に【ルカ王子】を推す声が高まっていた。まだ僅か10歳の少年でありながら、魔獣討伐の遠征を自ら引き受け、見事に成功させたことが国民の間で称賛されていた。そして、誰も発見できなかった貴重な宝石を見つけ出し、国に大きな貢献をしたその行動力が、未来の国王に相応しいと評価されていた。


もはや、ルカ王子を「遊んでばかりの王子」と侮る者はいなかった。


一方で、オリバー王子の評価は、ますます下がる一方だった。周囲の期待に応えられず、母親と共に、その不満を周囲にぶつける日々が続いていた。彼の振る舞いや態度は、ますます問題視されるようになり、その影響を受けた人々の不満が溜まっていた。


そんな兄たちの姿を、影で冷めた目で見つめる者がいた。アリシアだ。


「はあー、本当にお兄様は使えない人だわ。」


彼女は呆れたようにため息をつきながら呟いた。オリバー王子の力を高めるために、あの特別な道具を作ってあげたというのに。どうして、あんなにも弱いのか。せっかく与えた力を、何の役にも立てずにいるその姿を見て、アリシアの心の中には苛立ちが広がる。


「まったく、弱いだなんて…。」


もう、これ以上は見ていられないと彼女は学園へと向かっていった。




城下町に住む女性が男に絡まれていた。


「あの、やめてください!」


「俺は男爵家だぞ?平民のあんたを嫁にしてやるといつも言ってるじゃないか!」


「わ、私は貴方のお嫁さんになるつもりはありません!」


「この!ブスが!」


そう男が女の顔を殴ろうとした時だ。


銀髪の青年が突然現れ、男を片手で軽々と投げ飛ばした。男は地面に叩きつけられ、痛そうにうめいたが、青年はそのまま無視して女性の方へ視線を向けた。


「綺麗なおじょうさん、怪我はない?」


青年は優しく微笑みながら尋ねる。その温かい眼差しに、女性は少し驚き、そして恥ずかしそうに頬を赤らめて頷いた。


「い、いえ、大丈夫です…」

「うん、よかった。」


その言葉に、青年の口元がさらに和らいだ。その瞬間、周囲でざわめきが起きた。


「ルカ王子が帰ってきたぞ!」


「ルカ王子だ!」


歓声があふれ、町の人々は一斉に顔を上げ、喜びの声を上げた。ルカ王子が城を離れて長い間討伐に出ていたこともあり、彼が帰還したことへの嬉しさが街全体に広がっていた。


その青年――ルカ王子の肩には一匹の黒い鴉が止まっており、その背後にはクラナス公爵が控えていた。さらに、クラナス家の旗と王国の旗を掲げた騎士たちが、堂々と行列を作っていた。


王国を代表するその姿は威厳に満ち、長い間姿を見せなかった王子が帰ってきたことで、町の人々の喜びもひとしおだった。

彼の帰還に、みんなが期待と安堵の表情を浮かべ、心からの歓声を送っていた。





「ルカが帰ってきたんですって!?」


メリンダの声は、興奮と怒りが入り混じったものだった。ワイングラスを手にしながら、彼女はその知らせを聞いて顔を歪めた。


「遠征まで飛ばしてたのに、なんでまた帰ってきてーーあの子は何を企んでるのよ!」


テーブルに置かれたワイングラスを握り締め、彼女の視線は怒りで鋭くなった。


その言葉を受け、近くにいた大臣が怯えたように口を開いた。


「…もう少しで、そのーー王太子式があるからではーーひっ!!」


声が震える大臣に、メリンダの視線が一層冷たくなった。


「私の息子オリバーが王太子になるのよ!!ルカじゃないわ!」


メリンダは立ち上がり、ワインの瓶を振り回しながら、口調を荒げた。


「わざわざ死ぬ場所を与えてやったのに、ドブネズミのようにしぶといんだから!しかも、民たちはルカを支持し始めているじゃない!」


その言葉を吐き出すと、メリンダは深く息をつき、再びワインを飲み干した。


「いいわ、今度こそ彼を追い込んでやる。」


彼女の眼差しは冷徹で、次の一手を決めたかのように鋭く光った。


「ルカの様子を見に行きなさい!」


彼女は部屋の隅に立っていた大臣たちに命じた。


「何をしているの、さっさと行ってきなさい!」


命令が下されると、大臣たちは慌てて部屋を出て行った。メリンダはそれを見送ると、再びグラスに手を伸ばし飲み始める。




王立学園には、二人の聖女がいるとされていた。ひとりはアリシア姫、そしてもうひとりはルカ王子の元婚約者であるソフィアだった。


その日、アリシアは学園の庭園を歩いていると、真っ赤な口紅をつけ、静かに読書をしているソフィアを見つけた。ソフィアはまるで自分の世界に浸るように本を開き、周囲の騒ぎには無関心に見える。


アリシアは一歩前に出てあえて声をかけた。


「ソフィアさん。ご機嫌よう」


その声は、わざとらしいほどに明るく響いた。


ソフィアは顔を上げ、その冷たい目でアリシアを見つめる。


「あら、アリシア【さん】、ご機嫌よう」


ソフィアは「姫」と呼ばず、冷静な態度で返した。その言葉の響きに、アリシアは小さく苛立つ。


「それにしても、ルカお兄様は酷いわよねー」


アリシアは意図的に、ソフィアが反応するであろう名前を口にした。


「6年前、急に貴女との婚約を破棄するなんて!未来の国母を狙ってたんでしょうに!」


その言葉に、ソフィアの表情が一瞬だけ微かに変わる。眉がほんの少しだけ動いた。それを見逃すことなく、アリシアは笑みを浮かべた。


「あ、私のオリバーお兄様と婚約したら?第二妃にしてくれるみたいよ?」


アリシアはその言葉を放つと、ソフィアはアリシアを睨み立ち上がった時、生徒達は何やら騒いでいた。


「おい!ルカ王子が帰ってきたんだとよ!」


「どこだ!?いまきてるのか!?」



その生徒達の言葉にアリシア「へえ。きたんだ」と呟く。



「氷と炎の二属性持ちで、素敵だわ!!婚約者もいないみたいだし私狙っちゃーーひっ!ソフィア様!」


ソフィアは女子生徒を睨みながら、遠く離れたルカを見つける。






後ろに控えているソルは、ソフィアの存在に気づき、ルカに声をかけた。


「…‥ルカ様、ソフィア様がお見えです」


「そう。なるほどね」












「おーい!シオン!聞いたか?って相変わらず、女子生徒にモテるな、アリシア姫にも好かれて羨ましい!」


金色の髪が風にゆれ汗だくな姿の青年に、女子生徒達はキャーと騒いでいた。


「別に嬉しくないよ。それよりどうしたの」


「あ!そうそう!ビックリニュース!ルカ王子がこの学園へ転入してきたんだとさ。オリバー王子もここ通ってるのに、バチバチだよなあ。」


シオンは一瞬手を止め、顔を上げて友人に目を向けた。


「…ルカ王子?」


「あぁ!謎だらけな王子だけど、実力は強いみたいだな!

ほら!魔獣討伐の時なんて呼ばれたっけ!次々とルカ王子と出会う魔物は死んで、確かーーそう別名死神王子と言われてるしな!お前は太陽の王子だっけ?あはは!剣術部に所属してくれねーかなあ!」


友人は目を輝かせながら話し続ける。


「シオンも強いからな!二人揃えば我々の部はエース二人だ!」


シオンはその言葉に反応することなく、ただ黙って友人の話を聞いていた。

彼の眼差しは、どこか遠くを見つめているようだった。


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