恋多き絡新婦の嘆き
ゴクゴク、と。
ボリボリ、と。
ムシャムシャ、と。
飲む。咀嚼する。喰らう。
胸の内に燻る熱い衝動のままに、あなたを貪る。
柔らかい肌に歯を立て、肉を裂き、骨を砕く。
腹に、肚に、あなたが満ちている。
それがたまらなく悲しく、たまらなく嬉しい。
白い糸が赤く染まり重くなる頃になり、ようやく私はあなたの腹から顔を上げる。
あなただったものが私の顔を、肩を、乳房を、腕を、腰を、足を、ベッタリと濡らしていた。
私のそんな姿を、昇った日が照らしていた。
ああ、ああ。またやってしまった。
今度こそ共に朝を迎えたかったのに。
私は八本の脚を動かして崩れた社から出る。
次こそは、次こそは愛した男と共に朝を迎えよう。
そう決意する私の背後の社には、人一人が入りそうなほどの大きさの、赤黒く染まった繭のようなものがいくつもいくつも置かれていた。
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