さようなら
「la~lala~la~」
燃えて灰しか残っていない国旗
朽ち 倒れているヴィクトリア像
倒れているネピア
全てのガラスが割れているドミニオン劇場
赤色に染まっているテムズ川
折れたロンドン橋
餓死した動物園の動物
ずっと止まっている鉄道
かつての英華の証拠を失った博物館
十字架が消えたセントポール大聖堂
これも全て 私が見て 記憶し 記録に残しているもの
3029年 地球は異常気象まみれになっていた
異常な赤潮
未曾有の大地震
300年ぶりの北極の氷溶け
オゾン層の穴の発見
酸素濃度の変更
ジブラルタル海峡の陸地化
アマゾン・インドネシアの森林火事
阿蘇カルデラの噴火
ハワイの沈下
電子機器の異常停止
天然痘の復活
そして
人類同士の核戦争の開始
これで人類は衰退どころか絶滅しかけた
これは勿論 わたしがいまいるロンドンのみじゃなく ワシントン・東京・モスクワ・パリ・ベルリンとか大都市でもすべてが壊れた
私はここまで 200年記録しつづけた
これがわたしの仕事だから
私の仕事は星の見届け人
星が一周したとき 一年を書き残す
そして その星が終焉を迎えた時 その記録と歴史の文書を神に渡す
これが私の仕事
'見届け人'としての使命
そうだ 一つだけだけど見せようか
[3025年の記録
国連が解散した もう人類は気づいてるらしい 手遅れなことに
ここ最近では平和な一年だった気がする
でもやはり世界の各都市では暴動が起こっている
あ そうだ 最近人類の偉い人がスバールバルまで行ってた
もう始まるのかな?
正直想い人も作らなかったし 友達も一人しかいなかった
そろそろもうこの星での仕事も終わりかな
アインシュタインが言ってた通りになるのかな
もう10年後にはもうこの日記?を作ることは無くなるだろう]
こんな感じの事を200年書いてた
気が狂いそうだったよ
でもそれは最初の100年でなくなったかな
私は自由に天界と地球を行き来できるし
私は人類じゃないからね
...
そろそろ帰ったほうがいいかな?
最後に友達の墓でも...行くか
なんの花にしよう
あの子は...彼岸花が好きだったかな
あの子の名前は...ラファエル
私の 初恋だったかな
なつかしいなぁ あの頃は楽しかったのに
人間というのは寿命が短くて いつも 絶対私より先に死ぬ
だから 友達は作らない
だったはずだったのに何故か この子とは友達になれて
そして 忘れもしない2986年..あの子は 通り魔に殺された
信じれなかった
嘘だと思った
ラファエルは18という短い人生で生を終え 魂が天に向かった
葬式にも参加した
あの子は...笑顔で死んでいた
私は泣いた
悔しくて 悲しくて
私には無いと思った悲という気持ちが湧いて湧いて湧いて離れなかった
もう友達は作りたくない
というかもう作らない
絶対悲しくならないために
そして
次もし泣くなら
あの子に会った時だと思う
あー...もう墓地に着いちゃった
あの子がもし 天界でまだ生きてるなら...届いて欲しいな
「ねぇラファエル 私 もう行くよ?」
「ここに...お墓はあるけど もうお参りできないよ」
「もし聞こえてるなら...もう一度 姿だけでも見せて..くれない?」
そんな言葉を墓にかける
勿論 返答なんてこない
「ねぇ 彼岸花好きだったよね」
「彼岸花の花言葉って知ってる?」
「'再会'...だってさ ほんとにそうならいいのにね」
乾いた笑いをする
もう会えない そんな事実が私の精神に針を刺す
「ねぇラファエル 私 まだあなたが生きた証持ってるよ?」
私は骨を出す
これは...そう 彼女の遺骨
ラファエルが生きた証
「この遺骨...永遠に持ってるから」
「絶対あなたの事を忘れない」
少し 涙が出てきた
だけど 言葉を続けないと
最後の言葉を
「だから 次の世界の時は また会えたら」
「声を...かけてほしいの」
あぁ 言えた
よかった
「それじゃ...もう行くよ」
「今までありがとう」
「さようなら 私の初恋の人」
「絶対また会おうね」
???「その言葉 忘れないからね」
「っ?!」
急いで後ろを振り返った
でも誰もいない
だけど あの声は絶対ラファエルの声
絶対だ
ふふ...
最後に一言くれたのか..
嬉しいね
「そんなこと言われたら...もっと泣いちゃうじゃん...」
涙がもっと出てくる
もう止まらない
絶対また会ってくれる
絶対だ
「あー...辛い」
私は歩き始めた
「最後に...旅行するか」
世界を周ろう
人類が生きた証があるとこ
例えば
エジプト・チベット・フロリダ・南極...etc
それで 写真を撮り また会えたらそれを見せよう
私は歩き始めた