2、世界は一度終わりを迎えました。
隕石はすごい光を放ち、煙をまき散らしながらもの凄いスピードで落下している。
こんなの逃げようがないじゃないか……。
とりあえず、家の中に戻って、祈るような気持ちで幼馴染のつぐみや、海外にいる両親にも電話をかける。
だが全くつながらない……。
テレビも同じく繋がらなかった。
それでも隕石は落ち続けている。
いつ落ちてもおかしくはない。
残されている時間はもうなかった……。
この世界は、今日終わるんだ。
こんな唐突にかよ……クソ。
そう思った矢先だった。
「……うっ……痛い……」
なんだこの痛さは。
頭が割れそうなほど痛い。
今まで体験したことがないほどの痛みだった。
俺は思わずその場に崩れ落ちる。
だめだ、意識がもうろうとしてきた……。
するとわずかにだが、周りから爆発音が聞こえた。
爆発音は一回や二回というレベルではない……。
それが色んな方向から聞こえてきた。
その音はまさに隕石が落ちたような音だった。
この状況は数分間続いた……。
(全世界に謎の波動が起きた。それに合わせてか、数千個の隕石が地球上に落下した。その被害は想像を絶するほど酷いものだった……。だが、それは隕石が落ちたところに限っての話だ。隕石が落下した場所、真下の被害はすごかったが、そもそも隕石が落下していない場所や落下した付近などは、隕石の被害が完全になかった。普通の隕石なら、落下した場所の数百キロメートル付近にわたって大きな被害が出るほどの規模だったのだが……。今回の隕石には、付近の場所には完全に被害がなかったのだ。隕石が落ちる前と何も変わっていないほどに……。)
――今回の隕石は特殊だったのだ――
俺はハッとした。
気を失ってたのか……?
近くにあったスマホを見る。
一時間ほど気を失っていた。
さっきに続いてまた寝てたのかよ……。
そう思いながら、家族やつぐみに連絡を送れるか試したが、やっぱり駄目だった。
つぐみ、頼むから無事でいてくれ……。
俺は心の底から、そう祈った。
辺りを見渡す。
さきほどの爆発音が止んでいた。
頭はまだジンジンするが、だいぶ痛みは引いていた。
さっきの痛みはなんだったのだろう。
とてつもないほどの痛み。
今まで感じたことのない痛みだった。
とりあえず、頭を押さえながら立ち上がる。
無事なのか……。
俺は奇跡だと思った。
あの巨大な隕石から生き残れるとは思ってもみなかった。
もしかしたら、つぐみも家族も無事だという希望が湧いた。
いや、俺が生きてたんだからきっと無事だ。
今はそう思うことにした。
(だが、すぐにそれは奇跡ではないことに気づく。)
俺は辺りを見渡す。
部屋の様子は特に何も変わっていない。
おかしい……。
おかしすぎる……。
部屋の窓ガラスは割れていない。
本棚の物も、棚から落ちていなかった。
部屋が変わってなさすぎる。
それは、隕石が落ちる前かのように。
とりあえず、窓を開け外を見る。
人の気配はない。
周囲の家も、特に変わった様子はなかった。
隕石が落ちた様子も、火事になった様子もない。
あまりにも、被害が無さすぎる。
あんなに隕石が目に見える距離に、しかもたくさん落ちたはずなのに、こんなにも被害がでないのは流石におかしい。
流石の俺でも、この状況がおかしいことは理解できた。
とりあえず、どうしよう……。
家にあったラジオや、テレビなどの情報を集めるものが何も使えなくなっていた。スマホの連絡機能や、ニュースなどもダメだった。スマホのほとんどの機能が使えない状態だった。
それと、家の電気、水もガスも全て止まっていた。
これは致命的だった。
流石に水までも止まってるとは思ってもみなかった。
このまま家の中にいて、誰かが助けにくるまで待機するか、それとも、危険かもしれないが一度外に出て助けを求めた方がいいのだろうか……。
俺は少し考えた後、隣人宅に行くことにした。
もし、隣の家に人が居なくても、すぐに自宅に帰って来れるし、一人より誰かといた方が絶対いいもんね。
なにより隣人さんは老夫婦で、顔見知りということもあって緊張せずに話せそうだなと思ったからなんだけど……。
この状況で人見知り発動してる場合か……って?
人見知りは、どのタイミングでも発動してしまうものなんです。はい……。
俺は勇気を出して外に出てみることにした。
鍵だけ持っていこう。
一応外出するわけだし……。
数メートル先だけど。
とりあえず、ドアを開け玄関の外へ出た。
よし、鍵もちゃんとしてっと。
外に出たものの……、周りはやけに静かだった。
車が通ってる感じもしない。
とりあえず、隣の家の前まで来てインターホンを鳴らした。
返事がない……。
あれ、まじかよ……。
嫌な予感するわ。
頼むから誰か居てくれ。
俺はそう思いながらもう一度インターホンを押した。
すると、――ガサっ――中から物音が聞こえた。
それは数回に分けて聞こえてきた。この物音は誰かが確実にいる時の音だった。
誰か居るじゃん。
なんで出てくれないんだろう……。
もしかして、隕石のせいで、瓦礫や棚が崩れてきて下敷き状態になっているんじゃ……。
インターホンの音が聞こえてきて、下敷き状態になりながらも、音を立てて必死に助けを求めているんじゃ……。
俺はそう思うと、ドアノブを回してみた。
ドアが開いた……。
マジかよ、鍵かけてないのかよ。
めっちゃ不用心じゃん。
俺はこの距離でもちゃんと鍵かけてきたっていうのに……。
「隣人の者です、鍵開いてたんで入りますよー」
俺は一応そう言って、隣人宅へと入っていく。
家に入ると、部屋中に変な臭いが充満していた。
とても生臭い臭い……。
嫌な予感はしたが、俺はリビングの方へと歩いていく。
そして俺の目には、ありえないものが写った。
「えっ、マジかよ……。」
それはほとんどの人が知っているであろう存在……。
そして、ゲームや漫画などにしか登場しない架空の存在……。
「ゴ、ゴブリン……?」
少しでもいいなと思ってくれた心優しいそこの君!!
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