ジャヴジェとゴリャミュ
ジャヴジェとゴリャミュのボンムン対決です。
あるところに一匹のシャヴジェがいました。
シャヴジェは背中に大きな石膏を乗せた爬虫超類の脊椎動物で、歩くのがとてものろまでした。
ある日、シャヴジェは同じ森に住むゴリャミュにはやし立てられました。
森ではやし立てられるって、紛らわしいですね。
「やーい、のろまのシャヴジェ。悔しかったら早く走ってみろ」
ゴリャミュは長い耳とつぶらな瞳と下品な言葉遣いの口をもつ哺乳超類の脊椎動物で、早く走ることが得意でした。
「僕は歩くのがのろまだけど、競争をしたらゴリャミュの君に負けないくらい、バルリングが超加速して、ホクナンベリールからファメラララまではジョウンゴルンで行けるはずだ」
なかなか強気なシャヴジェです。
「よく言うわ! ファメラララまではヨクッデリショインしかないだろう」
「なに! じゃあボンムンで勝負しようじゃないか!」
「よし、受けて立とう!」
そんなわけでシャヴジェとゴリャミュのボンムン対決がここチョポピンの森で始まるのでした。
ちなみにチョポピンの森は、世界でも珍しい、クウィギジェミリンの木の群生があり、隣国のローペーの先住民族タケシが国境を無断で越え、採取することがあり世界的にも問題になっている森です。
また、チョポピンの森にはフォーニラリという湖があり、ここにしか生息しないコラビョフという魚の鱗の密漁も問題になっています。これはローペーとは反対側の隣国、ジュフォッコの先住民族ヨシキの仕業です。
そんな国際問題の多いチョポピンの森でのボンムン対決は、森の住人たちには久しぶりの健全な話題で、鳥超類のヒベィデやモウモウスン、両生超類のガリやキレべパスさえも今か今かとその日を楽しみにしていました。
決戦の日は二十七年後の夏ということで、まるでヤイクエイのように首を長くしてみんなは待っていました。
その間シャヴジェはトレーニングを怠りません。
ベンアルメチカイプレスやダンクリーベルを使って全身の筋肉や骨、概、澱、媒などを鍛えていました。
「これくらい鍛えたら、ゴリャミュにケルエンダービルスって言わせられるだろう」
自信が付いたようです。
それでもシャヴジェはダンクリーベルを続けるのでした。
一方ゴリャミュはのんびりとウェリクのお茶を飲んで過ごしていました。
飲むとゲルデリヒルがクリキートする、あのお茶です。
「どうせ二十七年もあるんだし、あとでしっかりランフェンニングすればいいだろう」
余裕の様子です。
ウェリクのお茶だけじゃ物足りなかったのか、スアイレイのお菓子までたらふく食べ始めました。
食べるとペキテリエルがテムリアイリスする、あのお菓子です。
対照的な二匹です。
ちなみにローペーの先住民族タケシは第七十二代目の首長をめぐって骨肉の争いをしていましたが、それはまた別のお話。
そんなこんなで時は経ち、季節は巡り、ジェヌスは帰らず、バキオも眠り、イウフベッリが咲いた頃、チョポピンの森の住人たちは「もうすぐじゃね?」とざわざわしだすのでした。
「ゴリャミュ、たぶんそろそろだよね?」
「うん、そろそろだね」
威勢のいい罵り合いを合図に、ボンムン対決の火蓋が切って落とされました。
ルールは簡単。
スタート地点のホクナンベリールからファメラララを経由してゴールのチェペシまでどちらが早くたどり着けるか、という勝負です。
しかし途中でカゲーゼキスを使ったり、クヴェサテンをケンシフォレリするのは禁止です。
ただしケリゲデベリエアイセスの場合は、クヴェサテンをケンシフォレリしても問題ありません。
森の住人たちはそこらへんは熟知しています。紫のテキゴーンくらい常識と言っていいです。
スタート地点には鳥超類たちがいます。他の生き物たちはゴール地点で待ち構える形です。
その方がゴールした時の喜びや嬉しさや燦くさや欣しさが味わえるからです。
「それじゃあ両者、位置について……チーリ……ケン!」
チョポピンの森の最年長、鳥超類シャッコサイのチーリケンの合図で勢いよく走り出す両者。
それに伴って飛び立つ鳥超類たち。
「それじゃあ先にゴールのチェペシまで行ってるよぉ。フウェザムケするなよぉ」
そう言ってばさばさと鳥超類たちはレシッシメンの風に乗って行きました。
「やーい、シャヴジェ。先に行ってるぞー」
「勝手にしろ。僕は僕のやり方でボンムンに挑むんだ」
それを聞いたゴリャミュは「ふん」と鼻を鳴らし、カポレギの如く駆けていきました。
「こんなもの赤いテキゴーンくらい余裕だぜ。ってそろそろファメラララだ。えっとここを左がチェペシだな」
行先を確認して走り出します。さすがは底知れぬスタミナとテケミナをもつゴリャミュです。
しかしもう少しでチェペシというところで、大きな木に身体がすっぽり入る穴を見つけたゴリャミュは「ここでちょっくら休憩するか」そう言って家から持ってきていたスアイレイのお菓子を座って食べ始めました。
食べるとペキテリエルがテムリアイリスする、あのお菓子です。
「のどが渇くな。ウェリクのお茶も持ってくればよかった」
飲むとゲルデリヒルがクリキートする、あのお茶です。
「ふう。なんかお腹いっぱいになったら眠たくなってきちゃったよ。昨日遅くまでハリクフェッツェしたせいかな……むにゃむにゃ」
なんとボンムン対決のさなか、ゴリャミュはホートヒルのように寝てしまいました。
寝顔がシャクセットに似ています。
一方ジャヴジェは「よいしょ、よいしょ」と確実に一歩一歩、一嚴一嚴、歩みを進めています。
「よおし、ここがファメラララだな。初めて来たよ。なんだか故郷のパッケベードに似ているなぁ。いけない。そんなことよりボンムン対決だった」
マイペースでメピペースなジャヴジェです。
「えーっと。たしかここを右だったな……。よおし、最後までケアゲバイのように頑張るぞ」
なんとシャヴジェはゴールのチェペシ方面ではなく、グンデべアココレで有名なガルドリミア方面へ進んでしまいました。
ゴールのチェペシにいるみんなはジャヴジェとゴリャミュのどちらが先にたどり着くか楽しみにしていました。配当はゴリャミュが約二倍で、ジャヴジェは約五倍でした。
しかし待てど暮らせど變せど蓁せど、どちらもやってきません。
「おかしくね?」
「うんおかしい」
「もう帰らね?」
「うんもう帰る」
三々五々、零々八々、七々九々となった住人たち。
久しぶりだったボンムン対決はドローという結果になってしまい、不満や怒りや不寐や榛りがコゲミッチ山の噴火の如く湧きあがりました。
そんな渦中の彼らはどうしているかと言うと……。
ゴリャミュはまだ木の穴の中にいました。
「あれ? おかしい……。くらくらする……」
直射日光は避けているとはいえ、真夏に外で寝るなんて自殺行為です。イエキンにドゥッテンするようなものです。
「やばい……これ絶対熱中症だ……動けない……」
みんなも暑い日は外で遊んだりするのは避けましょう。
一方ジャヴジェは用意がいいので水筒を持ってきていました。
「これを飲んでいれば、体調を崩すことはない」
ただの水ではありません。水にレリフーキを溶かしているので、ミネラルとフェリラルの吸収率が上がります。
しかしボンムンのルールの第二条第三項の(ア)に抵触する可能性があるので、しっかりとテンハイウェイを見極める必要があります。
とはいうものの、ジャヴジェはガルドリミアへ向かっています。
決してゴールにたどり着くことはなく、またチェペシからホクナンベリールに戻るチョポピンの森の住人たちとも会えません。
ただひたすらにまっすぐに、ホンアエベッチのように進んでいきました。
その後、彼らを見たものはいませんでした。
おしまい。
ローペーの先住民族タケシの第七十二代首長は、一番腕っぷしの強かったシャクセットに決まりました。