↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生した私は猫である。  作者: 草川斜辺


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/275

エージェント・シイラ その2

「え? シイラちゃん、ライゼルに行くの?」

長い間出かけることになるので、持っていく服についてリスタに相談に来ているのだ。今回の仕事は猫の姿が主で、人間の姿は仕事の報告の時だけだが。


「ライゼルでの仕事を引き受けたのだ」

「どんな仕事?」

「詳しいことはいえないのだ」

仕事の内容は誰にも言うなと言われている。

「へー、重要な仕事かな。シイラちゃんは活躍しているからね」

「誰と一緒に行くの?」

「ライゼルのギルド本部から来ている男と一緒だ」

「本部の仕事かぁ」

本部というよりは、レブランの依頼のように思う。


「遠いところだと聞いているのだが」

リスタはライゼルから来ていると聞いたことがある。

「うん。乗合馬車で、夜明けから日没まで毎日走って6日かかる。6日目は夜遅くに着くんだ」

「確かに遠いな」

この前の暗号表を運んだ仕事で馬車に1日乗ったが、あれを6回続けるのか。


「ライゼルには何日いるの?」

「5日から10日くらいの予定だと聞いている。もっと長くなるかもしれないともいっていた」

証拠を押さえることが目的なので、それがどのくらいでできるかにかかっている。


「アリナさんが何かいいそうよね。そんな長い間、ネズミ狩りしないと」

数日なら戻ってきてからその分のネズミを狩ればよいのだが、今回は長すぎる。その疑問はもっともだ。

「私もそこが気になったのだが、レブラン、一緒に行く男だが、彼がなんとかしてくれた」

「へー、どうやったんだろう」

「私を雇う期間分のお金を払ったということだ」

「なるほど。それならアリナさんも納得ね」

アリナさんはお金が好きな人間だからな。


「そうだ、もし何か困ったことが、私の妹がライゼルにいるから頼るといいよ。手紙送っておくから」

姉妹がいるのか。手紙というのは文字で書いた紙を送るものだったか。

「初めて行く街で会ったことのない人間をどう見つければいいのだ?」

ライゼルはここよりも大きな街だそうだし。

「え? あ、そうか、住所ってわかんないよね」

「聞いたことがない言葉だ」

「ライゼルの地図があるから渡しておくね。簡単な地図だけど」

リスタが机の引き出しから出し渡してくれた紙には絵が描かれており、これは街を小さく書いたものだという。ライゼル市は広い街で三重の城壁に囲まれているそうだが、その一番内側の城壁で囲まれたところの地図ということだ。妹がいる場所に印がつけられ、彼女の名前が書かれている。

「何かあれば行ってみることにする」

「うん。わからなかった本部の人に聞いてみて」

「そうだな」

何かあればレブランにいえばいいように思うが、まあこの地図は持っていくことにしよう。


さて、リスタによると、人間に変身するのが短時間なら服は1組もあれば十分で、下着を複数持っていけばよいとのことだった。今回は鎧や剣は不要なので荷物は少なく済む。もっとも、仮に荷物が多かったとしても猫の姿で荷物を運ぶのは大変なので、レブランにもっていってもらうのだが。


翌日、白兎亭までレブランに迎えに来てもらい、荷物を運んでもらう。早朝だというのにリスタとベルナが見送りに来てくれた。


今回も馬車には猫の姿で乗るので運賃は不要だ。座席は空いているのでレブランの隣に座ることにする。人が増えてきたら膝の上に乗せてもらおう。


「気を付けてね」

「無理しないでくださいね」

リスタとベルナが私に話しかけるのをみて、正面に座っている男がほほ笑んでいる。言葉が通じているとは思っていないだろう。

「みゃあ」

大丈夫だ。

「レブランさん、よろしくお願いしますね」

ベルナがちょこっと頭を下げる。

「もちろんです」


「発車しまーす」

御者(ぎょしゃ)の声が聞こえ、乗合馬車が動き出す。


乗合馬車が動き出した。レブランは本を読み始めたが、揺れる馬車では読みにくいのかすぐにやめてしまったようだ。先は長いが、寝そべって長時間過ごすのはいつものことなので私は気にはならない。

ライゼルについてから行う諜報活動だが、昨日説明してもらったことを思い出してみる。



「諜報活動とは何なのだ?」

「あ、そうですよね。先ほど話したように、ボス達は悪いことをしているのを知らないふりをしているんですが、その悪いことをやっているという証拠を(おおやけ)、つまり誰もが知れば、知らないふりはできなくなるんです」

「なるほど」

私が何をやるのかという話がこの後に説明されるのだろうか。


「猫の姿なら、机の下とか本棚や家具の上に隠れることができますし、シイラさんは言葉がわかりますから、ボスたちの話をきくことができるんです」

「まあそうだが、猫から聞いた、で通じるものなのか?」

猫が人間の言葉を解するというのはあまり知られていないように思うのだが。


「いえ。さすがにそれでは無理があります。なので、シイラさんが聞いた話を元に我々が改めて調査するんです」

それでうまくいくのかはわからないが、まあ悪いやつらを捕まえる手伝いができるというのならそれはそれでよいだろう。

ということで引き受けることにしたのだ。



途中立ち寄るすべての宿場町には、ギルド本部で借りている家がある。ライゼルとガレスウェルのギルド本部で働いている人間は頻繁に行き来しているそうで、その宿泊用にずっと借りているのだという。


5つの宿場町で一泊しながら6日目の夜、ようやくライゼルにたどり着いた。馬車は途中何度か休憩で立ち止まったりはするが、ずっと寝そべっているのも退屈なので、馬車の屋根に登ったり、私に声をかけてくる人間の膝に乗ったりして人気者になった。まあ、私は人間に好かれているから無理もない。


到着したライゼルの街は確かに大きな町で、最初の塀にある門を通り中に入ってから二つの塀を超えるのにもしばらくかかった。到着したところはガレスウェルにもあるような広場だが、広場を囲む建物もはるかに大きい。

その日は夜も遅いので特に何をすることもなく、レブランの部屋に向かった。これからしばらくはこの部屋に泊まることになる。


翌日、ライゼルのギルド本部に向かう。本部は大きな建物の中にあるが、この建物すべてがギルド本部ということではないそうだ。この街の近くにダンジョンはなく、登録されている冒険者はガレスウェルよりも少ないそうだ。


レブランがやろうとしていることは、本部の公式の活動ではない。捜査を中止するようにいわれているのだから、それはそうだろう。だが、レブラン一人ではなく協力者はいるようだ。


「紹介します。こちらがシイラさんです」

会議室で、二人の人間に紹介される。若い女とギースくらいの年の男だ。

「みゃあ」

よろしく、とあいさつするが、二人の人間は驚いているというか戸惑っているような感じだ。私のことは説明していないそうなので無理もない。


「かわいい猫ちゃんですね」

女がしゃがみ込んで私の背中を撫でる。

「レブラン君、これはいったいどういうことなのかな」

男がレブランに向かっていう。


「実は、この猫は人間の言葉がわかるのです」

あらためて戸惑いの表情を浮かべる二人。

「えーと、レブランさん、大丈夫ですか?」

女がいう。この街に人間の言葉を解す猫はいないようだ。


「信じられないのは無理はありません。証拠をお見せしましょう」

レブランはそういうと鞄から大きな布を取り出す。

「じゃあ、シイラさん、さっき話した通りです。よろしくお願いします」

「みゃあ」

わかった、と答えるとレブランが私に布をかぶせる。

「手品ではありませんが」

人間に変身すると裸なので人前では変身するなと強く言われている、と伝えたところ、布を使うということになったのだ。


「何をやろうとしているのかな」

男の声が不機嫌な感じになってきた。

早めに変身してやった方がよさそうだ。


「シイラさん、もう大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ」

「え?」

女が驚く声がする。

布から頭をだし、布の端もって体に巻き付けながら体を起こす。

「初めまして」

二人にあいさつする。

「こ、これは...」

男が驚いている。

女の方も同様だ。


「シイラさんは人間の言葉を理解する猫で、さらにこのように人間の姿に変身ができて、人間の姿なら言葉もしゃべれるんです」

レブランが説明する。ちょっと自慢げな感じだ。

「人間の姿でもかわいいですね」

女が私の方を興味深そうに見ている。

「猫の姿なら机の下でも家具の上にでも隠れることができます。そこで聞いた内容を元に調査するんです」


それからしばらくいろいろと質問された。人間の言葉をちゃんと理解しているかを確認しているという感じだった。

主に質問をしてきた男はレブランのボスだということだ。名前はセドネスと紹介された。ボスといってもこの男は悪いやつではないそうだ。ボスは大勢いるそうで、調べるのは他のボスだという。

女の方はリスティナという名で、男の秘書ということだ。秘書というのはセドネスの仕事を手伝う役割ということだ。


リスティナは私を気に入ったようで楽しそうな表情だったが、ボスの方はどうも私が気に入らないのか始終険しい表情だった。結局、言葉の理解については問題なさそうだということで、レブランの作戦が行われることになった。ここに居る3人は、捜査の中止命令に納得がいかず、何とかしたいと考えていたようだ。6日もかけてここまでやってきた甲斐があるというものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。