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異世界に転生した私は猫である。  作者: 草川斜辺


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収穫祭 2日目

昨夜の白兎亭はこれまで経験したことがないほど騒がしかったが、あれより騒がしくなることがあるとは。

収穫祭初日の夜はさらに騒がしく、洗濯物干場まで酒を持ってきて飲んで騒ぐやつらがいた。こんなことならアルマのところで人間の服を着て過ごしたほうがよかったかもしれない。少なくとも彼女は大声を出して騒ぐことはない。


収穫祭2日目。

今日の警備の仕事は、4回目の鐘、昼と夕方の中間の時間から5回目の鐘が鳴る夕方までが担当だ。今日はちょっと時間が短い。場所は昨日と同じ。

午前中は寝転んですごしたかったが、アルマが収穫祭を見物するということで一緒に出かけることになっている。護衛役でもあるが。


ということで、これから彼女と一緒に朝食だ。白兎亭の朝食は不要と昨日のうちに伝えてある。人間の服はアルマが用意しているので猫の姿のままでクラル館に向かう。護衛役なので、剣は持っていくことにするか。魔法力も以前よりは上がり、空間魔法で剣と剣を腰に付けるための帯をしまえば猫の姿でも持ち運びができる。


白兎亭の前の通りにでると、ものすごい量のゴミが散らばっていてちょっと驚く。まあ、建物の屋根を伝って移動するから問題ないが。


人間の姿でアルマとの朝食。食事自体はおいしいのだが、その前に風呂に入らされて体を洗われた。何10日か前に風呂に入ったばかりだというのに、アルマは鼻がいいのかにおいが気になるといわれたのだ。まったく。

「シイラちゃんと一緒に収穫祭を楽しめるように、警備の仕事、始まる時間を遅くしてもらったんだよ」

そういうことか。

まあ、警備から彼女の護衛に変わっただけともいえるが。



通りに出ると朝から人通りが多い。

人間の姿のままでアルマが肩にかけている鞄の上に座って通りに出たのだが、人が多くて周りが見えないので肩の上に座ることにする。剣を腰の左側につけているので、彼女の左の肩だ。

アルマには警備の男と女が1人ずついて、ちょっと離れたところからついてきている。アルマの姉のリスタは毒ムカデを倒すくらいの剣の腕があるが、アルマは戦うのが苦手なのだろう。魔法も使えそうにないし。

まあ、私がいるから何かあっても警備の2人が戦う必要はないだろうが。


「おいしそうな屋台がいっぱい! 朝食少なめにして正解だったねー」

あれは少なかったのか。

「この街はパンで料理を包んで焼いたのが流行ってるって聞いてたんだけど、この辺の屋台は半分はそうみたいだね」

確かに。包んでいる料理は違うようだが。

「でも、猫ちゃんはパンとか食べないよね。広場の方に行ってみようか」

そうだな。人間の姿で食事をする際に食べたことはあるが。


広場に向かう途中、焼いた肉を串に刺したものを買ってもらう。これはおいしいが、人間用なのでちょっと大き過ぎる。

まだ食べている途中なのに、何かを焼いた平たいものも買っている。さすがに食べきれないので、食べ物はもういらないと伝えると、今度は服に付ける飾りのようなものとか財布とか鞄とか服を売っている店で私に何か買おうとしているようだが、人間用の物でほしいものはない。アルマは不満そうにしているが、いらないものはいらない。


広場に来ると、例の舞台で音楽を演奏しているのが聞こえてくる。そういえば音楽を聞くのは久しぶりな気がする。以前いたところでは同居人が音楽をよく聴いていたものだったが。


「闘技場で剣士が魔物と戦うんだって!」

広場に作られた大きな木の板に張られた紙を見上げるアルマ。

街の地図と、どこにどんな店があるのかとかが書かれているようだ。


「魔物って見たことないから見てみたいけど、日が暮れてからかー」

「魔物は暗いダンジョンに住んでるからな」

「そういうことかー、なるほどねー」


「闘技場は、今は弓の大会やってるって。後は、城壁の周りを走る大会の出発と到着が闘技場になってるみたい」

「どっちも賞金が出るらしい」

白兎亭の住民がそんなことを話していた。

「へー、それは盛り上がりそうね」


それから、街を巡回する馬車に乗って闘技場に行き、弓の大会を見ることになった。

賞金というのは、弓の大会に出る人間に出るものかと思ったら、誰が勝つかを予想してそれが当たると賞金が出るのだそうだ。予想するのには金を払うようだが、見るだけの人間が金を払ったり賞金をもらえるとは、いつものことだが、金を稼ぐ方法をいろいろと考える人間には感心する。


そんな感じでアルマと一緒に収穫祭を見物したが、私にとっては人間が多くて騒がしいだけのように見える。たまに喧嘩しているのを見かけることもあったし。ただ、ほとんどの人間は楽しそうにしていた。


さて、そろそろ警備担当の時間だ。アルマと別れ、いったん白兎亭に戻り猫に戻る。

アルマと一緒に歩いている際に剣を使うようなことはなかったので、今日は何もない平和な日なのかと思っていたが、持ち場の憲兵団の詰め所に行くと、牢屋に3人入っていた。ひったくりらしい。この時間で3人というのは昨日よりも少ないな。私がいなかったからだろうか。


夕方までの担当の間に3回巡回したが、特に悪いやつらを見つけることはなかった。やはり今日は泥棒が少ない日なのかもしれない。

秋になると日が暮れるのも早くなり、5回目の鐘が鳴る頃には薄暗くなっていた。そろそろ闘技場で魔物との闘いが始まる頃か。アルマは見に行ったのだろうか。そういえば、アルマと分かれる際に、今日の夜に止めてもらいに行くといっておけばよかったかもしれない。白兎亭は今日も騒がしいだろうからな。


さて、警備担当の時間も終わったし白兎亭に戻るとするか。

「あ、シイラさん、ちょっと待ってください」

詰め所の屋根から降りようとしたところで、憲兵団の男に呼び止められる。

見ると、指を指しているので指が指す方を見る。

通りの無効の建物の上にいる憲兵団の見張りの男が旗を振っている。


「あれは、武装憲兵の出動要請です!」

そうなのか。

「私は憲兵本部に知らせますので、シイラさんは報告書を受け取りに行ってください!」

「みゃあ」

わかった。

「あ、あの建物ではなく、塀の上、向こうの塀の上の見張りが発信元のようです。そっちに向かってください」


塀の上か。いったい何事だろう。

まあ、行けばわかるだろう。近くの建物の窓枠を伝って屋上まで駆けのぼり街を囲む塀に向かう。塀にはこれまで登ったことはない。直接駆け上ることもできるかもしれないが、建物の壁と違って窓枠のような突起がない。なので、人間が昇るために作られた階段に向かう。

階段の入口には格子の扉があり閉まっているが、猫にとっては大きな隙間なので難なく通り抜ける。塀の上に出ると、見張りのいる方向に向かって走る。


見張りのいる場所にたどり着くとすでに報告書を作成した男が待っていて、背負った剣差(けんさし)に丸めた報告書を差し込み落ちることがないよう固定する。

「これ、お願いします。闘技場から大サソリが逃げ出したそうです」

「みゃあ」

なんと。

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