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17 ヤックたちの優美な冒険者稼業

18時予定が遅くなり申し訳ありません。

 バカンスから這々の体で逃げるように迷宮都市スピアーノへ戻ってきたヤックたちは屋敷で貴族が追ってくるのではないかと数日の間、みっともなくおびえて過ごしていた。何度も何度もカーテンの隙間から外をみやり人が尋ねてこないか外を観察する。

 ただ道を歩いている人を見かければ、身なりがどうかや、借家へ踏み込んでこないかビビリ倒していた。

 しかし、数日経ってみても屋敷へ誰もやってこない。他の連中に後押しされて、冒険者ギルドへおそるおそる顔を出してみても、受付の職員は至って通常通りの対応で終わった。

 気になることといえば、レガードさんは抜けたのですねといった具合の内容だ。あいつが抜けたことに何か問題でもあるのか尋ねれば、スルーされる始末。

 翌日もう一度だけ冒険者ギルドの受付嬢にルドッカが探りを入れてみても、自分たちに貴族が何かをするといったことはなさそうだった。

 これなら彼らはもう何も怖いものなしだった。それまで逃げるように飲んでいた酒を、豪快に飲んで鬱憤を晴らす。レガードが残した金貨がどんどんと目減りしていったが、まだまだ余裕があるレベルだ。どうせすぐに日銭など稼げる。今までもそうだったのだ。


「ま! 問題ねーってことだな!」

「俺たちゃ金級目前パーティーだぜ! そりゃ貴族だってあっちから自重すらぁ!」


 雑貨店が閉まって冒険者たちはダンジョンに潜るのも自重する空気が街にできていたのか大きい。エルミも潜れないなら仕方ないといった具合で、少々目減りした金貨を見ても金を稼ごうという意欲がわかなかった。

酒を飲みながらゲラゲラと日々を過ごす中で、冒険者ギルドから人が来たのはしばらく経ってからだった。


 冒険者ギルドの職員が夕暮れにそまった借家へ慌ただしく訪れた。ヤックたちへ依頼票をパーティメンバーが集まった応接室のテーブルの上に乗せる。

 ヤックはその依頼票をしげしげと眺めて、内容にまず眉をひそめた。領主からの至急の呼び出しがあったが行き違いのなったため北の森へ行き急ぎ2人を街へ連れ戻してほしいというものだ。


「俺たちに街の外へ出たレガードたちの呼び出し? とうとう食い詰めて、あいつ何かやったのか!」

「へへ、ちげーねぇ!」

「いえ、こちらでは出頭の命令があったことしかわからず。理由は不明なのですが」

「はっはっは! 隠さなくていいぜ。領主からの出頭なんざよほどの大罪人だ! 報酬もまあまあだな」

「大罪人……そういうことでは。報酬はかなり相場と比べて高いのですが」

「へ、俺達は金級間近の赤に鳴く鳥だぜ。それなりの報酬が必要ってことさ」


 ゲラゲラと笑うヤックとルドッカに職員が汗をふきながらそうですかと答える。ヴィルへは報酬に満足そうにうなづき口を出さず、エルミは興味なさそうにただ話が終わるのを待つように本を読んでいた。

 本当にこれで大丈夫だろうかと不安を覚えながらも、たしかに登録上は銀級のため浮かび上がる疑問を内心で打ち消していく。それに冒険者ギルド内にあったパーティーに関する備考欄についても窓口などへの対応は誠実、ミスは少ない。クエストの失敗が有った場合もリカバリーにより解決実績有りと、中々の評価だった。


「とりあえず至急受けていただけるということで。明日朝、すぐに出発していただけますか」

「おうおう、問題ねー。明後日には両手足をロープで縛って領主の館へ突き出してやるよ! これで俺たちも領主に売り込みできるな! くっくっく、領主専任クエストなんざぁ、法外な高額報酬があるらしいじゃねぇか。良い機会だぜ」

「あの、皆様、問題は起こさないでいただけると」

「あぁん? 俺たちはしっかり仕事をやる! 領主が俺たちを評価する! それだけじゃねーか!」


 ヤックの妄想に職員が口を挟めばそれをルドッカが遮って豪語する。職員はとりあえず呼び戻せればそれだけで良いと諦めて、そのまま館を後にした。


「これは本当にチャンスだな! この前の休暇では貴族に良いようにやられたが、あんな小貴族を見返すにはまずこの国でも大都市なこの都市の領主の覚えがよくなるが第一歩だぜ!」

「報酬も増えればいい女もガンガン呼びつけて酒も飲める。俺は問題ないぜ」


 ルドッカが酒を持ってきてグラスに注いで勢いよくあおってそう応えた。ヴィルへとエルミも彼らの意見に続いて頷く。


「私も報酬が十分であれば構いませんね」

「……ん。私は危険がなくてお金がたくさん入るなら問題ない」

「危険なんてねーよ! 北の森はもう1年も前だが行ったことがある。その時もほとんど魔獣がいなかった楽勝な森だ」

「森の奥と言ってもさほど魔獣の強さも変わらないでしょう。もしかすると素材集めの討伐の余裕もあるかもしれませんね」

「ダンジョン潜れない。ついで稼ぐのも良いかも」


 レガードが残した金が減ってきたところに転がり込んできたネタだ。ヤックはニヤニヤと笑った。もっと金を残して置かなかったことはイラッとするが、今回連行する際に金は俺たちのものにしちまえばいい。そんな考えを抱いて、レガードがどれだけ金を溜め込んでいるのか。

 四人は好き勝手に言いながら、明日の仕事は楽勝と考えて準備もそこそこに酒盛りを行い夜は更けていった。

毎日更新していきます。

次話は明日18時更新予定です。お読みいただきありがとうございます。

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