恋愛相談
バイト先の女子高生の子。小柄で、大人しそうで、可愛らしい顔立ち。本人曰く童顔で、その自己評価自体も間違いではない。初心な雰囲気だが、その子の知り合いが言うに、それは見た目だけ。これまで、五人の彼氏がいたらしい。
まぁ、だから何だと思ってはいたが、今は違う。
女性目線の恋愛に関して言えば、僕の知り合いで、一番のエキスパートと言える。
「というわけで、告白したい女の子がいるんだ」
その日、お互い夕方に終わったということで、僕はその子を連れて喫茶店へ、ソファー籍を譲り、ココアを奢る。
「……志摩さんですか?」
「なぜわかる」
「わかりやすいですよ。結構。神地さん、私と話す時と、志摩さんと話す時とじゃ、表情、全然違いますし」
「結構よく見てるな」
「あ、この人私のこと好きだなって、すぐわかるので。神地さんは違うのはわかっていました」
「へぇ。それはすごい」
「ただまぁ、たまーに、私を見る目が危なかった気がしますけど」
少し気まずくなって目を逸らす。ちょっと誤魔化したくて、コーヒーを一口。
仕方ないじゃん。大人しそうで、可愛くて、けれど経験豊富って、逆に萌える。
バイト先の女の子を萌えの対象で見るってどうかと思うけど、それを咎めるには、僕は志摩さんのことが好きになり過ぎている。
「どうしたら良いと思う?」
「そうですね、チャットはしてます?」
「してない」
「そういうので日常会話していくのですよ。あとは、通話です。そして、デートは三回、そこでお互いわかりあってから、告白です」
「なるほど、デートは、三回。……いきなりメッセージ来るようになったら、引かない?」
そう言うと、渋い顔される。
「確かに、そうですね。……一回デートしてからですね。次の予定を聞いて、そこから広げましょう!」
なるほどなぁ。しかし、意外だな、こういう話になると饒舌だな、この子。
「あっ、いた。お疲れ様でーす」
「あ、はるちゃん」
「マイマイもいたんだ。お疲れさまー」
「……マイマイ?」
カタツムリ?
マイマイと呼ばれた須賀麻衣さんは少しズレて、高藤春香の分の席を作る。
志摩ちゃんや須賀さんとは対照的な、背が高く、すらっとした印象を受ける。少し気が強そうな顔立ちだが、実際のところは、結構抜けたところのある、なんだろう……ぽわっとした人だ。
「なんではるちゃんがここに?」
「そろそろ相談しておきたくてな」
「ルリのことですよね」
「うん」
「最近よく聞きますよ、神地さんのこと。毎日店に来るから、暇かよ。とか。今月末に、お出かけに誘われる予定とか」
「志摩ちゃんに会いに行っているだけだ」
「怖い怖い。でも最近明るくなってきている気がするんですよね、ルリ」
「それは良いことじゃないか」
「自分から神地さんの話をするのも、珍しいですし。頑張ってください。あいつ、彼氏いたことないんで、恋するルリ、見てみたいんですよ」
「はぁ」
高藤さんはニッと笑う。
「意外と頑張っているみたいで良かったです」
「まぁな。本気出せば、こんなもんだ。僕は」
どんなに頑張っても足りない気がするから、尻に火が点いたように、走り回るんだ。
志摩るり。最近、あの子のことばかり考えている気がする。
おかげで、色々手につかなくて、困っている。
「ありがとな。二人とも」
「いえいえ」
それから、それぞれのマグカップが空になるまで、ちょっとしたお茶会を楽しんだ。




