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悪魔に転生してました。

悪魔に転生してました外伝〜ニワの迷宮主日記3〜

作者: ぐっちょん

今年初投稿ですが

短いです。

「はふぅ、半身浴は最高じゃのぅ。ワシの記憶も大したもんじゃ。のぅ迷犬チロよ」


「わふ」


「うむ」


 ニワは僅かに残る前世の記憶の中に、半身浴という美容と健康にいい入浴方法があることを思い出していた。


 クローのおかげで不純物ポイントに困ることのないニワは、ハンターを確保するという大義名分のもと、ハの迷宮内に温泉付きの新たな安全部屋を数カ所設けていた。


 もちろん自室(主部屋)を拡張し温泉室を設けたことは言うまでもない(お湯だけの階層はあるが温泉はない)が、実際これによりハンターが増えてしまうのだから目の付け所は良いのだろう。


「くーんくーん」


 そんな時、頭までずぶ濡れになった迷犬チロが悲しそうに鳴きニワを見ている。


「どうしたのじゃチロよ?」


「く、くーん」


「何、半身浴が難しくてできない、とな……」


 主人(ニワ)のマネをしたくてたまらないチロなのだが、何度やってもできないことで、自信をなくしたチロのしっぽと耳はへにょんとして力が入っていない。


「わぅん」


 そんな悲しげな表情のチロは、主人に近づきその周りをちょろちょろくるくる犬かきで動き回っていた。


「うむ……これは身体の芯までぽかぽか温まって気持ちいいのじゃが、口と耳にお湯が入るからのぉ。チロにはちと難しいのじゃな」


「わぅん」


「チロよ、そうしょんぼりするではない。温泉から上がったらいつものフルーツミックス俺オーレを飲むのじゃ。

 男らしいネーミングだけあって喉越しがよく、冷やしておくと最高にうまいのじゃ」


「わふん」


「何? チロはミルク俺オーレのほうが良いじゃと?」


「わん」


「いいじゃろ。今日は特別じゃぞ」


 と言いつつも、この流れは毎日のように繰り返されている。


「うむ。ぽかぽかになったから右半身は終わりじゃ。次は左半身じゃ。よっ」


 ちゃぷん。


 そう言って深めの温泉に潜りってくるりと体勢を変えるニワに可愛らしい声がかかる。


「ニワ。グゥも温泉入る」


 その声にゆっくりと温泉から顔を出したニワの目の前には、すでに丸裸のグゥがふわふわぷかぷかゆっくりと浮遊していた。


「グゥ」


 グゥはドの迷宮の主でハの迷宮の主であるニワとは古くからの迷友だ。


 本来、迷宮主が他の迷宮主と直接会うという行為は、そう簡単にできるものではない。

 だがニワもグゥも、悪魔クローが設置したゲートがあった。


 そのゲートを利用することで直接会うことが可能になっていたのだ。


「んー。今日も来た」


 ぷかぷか浮かんでいるグゥの表情は、まだ人化に慣れておらず無表情に違いが、嬉しいグゥは小さく手を振ってニワに応えた。


 グゥは、元は土偶の姿の迷宮主で人化など別に興味なんてなかった。


 だが、お菓子をおいしそうに頬張るニワの姿を見て、自分も食べてみたいと思ってしまったのがきっかけで、悪魔クローに人化できるようにしてもらったのだ。


 そして、その姿はドの迷宮魔物(グゥの迷宮魔物)のドワーフ娘を模して人化してもらったため、くりっとしたお目目が可愛らしいショートボブカットのちんちくり娘姿になってしまっている(もちろんおっぱいはニワと同じくらいのちっぱいである)。


 人化ができるようになったことで、できることが増えたグゥは、わりと活動的になっていた。


「そんなところ浮かんでおらんで、はよ入るのじゃ」


「んー。入る」


 こくりとうなづいたグゥもニワの温泉に何度となく入っているのでもう慣れもの。

 グゥもニワと同じように半身浴をはじめた。


 もちろん、その半身浴はニワに聞いているのでグゥも右半身から温泉に沈める。


「んー、ぶくぶくぶく……」


 右半身を沈めたグゥが左手上げて気持ちがいいと、ニワに合図を送る。


「うむ。半身浴は健康と美容によいが気持ちもよいからのぉ……かっかっかっ。……口と耳にお湯が入るがたまに傷じゃがのぉ」


 そんな迷友であり温泉仲間であるグゥの姿に満足したニワも、ゆっくりと左半身を温泉に沈めた。


「ぶふぅ、さいこうなのじゃ……」


 明らかに間違った半身浴をしているニワとグゥだったが、その後も、本人たちはおかしいことに気づくことなく半身浴を楽しんだ。


「くーん、くーん」


 ただひとり、いや一匹、頭からずぶ濡れになりつつ悲しげな表情を浮かべる迷犬チロを除いて……


 ――――

 ――


「ぷはぁ……冷たくてさいこうじゃ。うまいのじゃ」


「んー、うまい」


 温泉から上がったニワとグゥは裸のまま揃って腰に手を当て、揃ってフルーツミックス俺オーレを片手で飲んでいた(これもニワの記憶から)。


「わふっ」


 もちろんチロには専用の容器があり、それに入ったミルク俺オーレを勢いよく飲んでいる。


「おぉ、チロもうまいか」


「わん」


 悲しげな表情を浮かべていたチロはもうどこにもいない。耳はピンと立ち、しっぽははち切れんばかりに振られ嬉しそうふりふり激しく揺れ動いている。


「うむ。ワシは明日も温泉に入るのじゃ」


「グゥも」


「わん」


「うむ。もちろんフルーツミックス俺オーレも飲むのじゃ」


「グゥも」


「わふん」


「……今から冷やしておくのじゃ」


「グゥのも」


「わん」


 結局、三人、じゃなく二人と一匹の一番の楽しみは温泉上がりに飲む、よく冷えた俺オーレ飲料だったのだ。


 ◯月△日 今日はグゥとフルーツミックス俺オーレを飲んだ。おいしかった。



最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^

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