表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の夢は 退魔師じゃない  作者: 三ツ星真言
9/46

私の母親

「今、帰ったよ。」

 夜中の2時過ぎに、母親が帰って来た。

 今日は、まだ帰りが早い方だ。私のベッドに近づく。

 私は、深夜の学校から戻り、全力で狸寝入りを決め込んでいる。

 私の母親、久美帆くみほは小さなスナックのママを一人で

やっている。お店の名前は、ハイドランジア。

紫陽花あじさいという意味。土の成分で、花の色が変わるあの花

なんだよね。花言葉も、色々ある。

 さて、スナックは立地条件も良い中々の物件で、そこそこ流行っている。

お得意さんも、多い。死んだ旦那の遺産で建ててもらったと言っているが、

どうも嘘くさい。

 それは、さておき、私の母親は20歳で私を産んだというから、

まだ30代なんだけど、スタイルも良くめっちゃ若く見える。

 とても高校生の娘がいるようには見えない。

 そんで、私は高校生になって、忙しい日は、スナックの

お手伝いをさせられるんだけど、お店ではママの歳の離れた20歳の妹に

なっている。昭和か。

 お客さんに体を触られても、抱き着かれても、文句を言えないから、

本当はお手伝いなんかしたくないけど、食べさせてもらってるし、

高校にも行かしてもらってるから、嫌とは言えない。

 でもね、そんな酷い母親でも、一つだけ、私が誇りに思えることが

あるんだ。それは、歌が超ヤバイくらい上手いんだ。

 マイクを握ってステージに立つと、まずオーラが違う。

 その歌声は、華があり、艶があり、迫力がある。

 聞き手の心に響くほど、魂が込められているんだ。

 お客さんに聞いた話、若い頃はプロの歌手だったというのも信じられるかも。

 とにかく、お客さんは、私の母親の歌を聞くと虜になり、デュエットでも

した時には、メロメロになる。

 それほど、歌が上手い母親は、歌番組が大好きなんだけど、何故か紅白だけは

見ないんだよね。不思議なんだよね~。 

 さて、私の祈りが通じたのかもしれない。

 母親は何も言わず、私を叩き起こすこともなく、立ち去り、シャワーを

浴びている音が聞こえてきた。

「助かった。」

 あのダメ男と、中年の獣男の話は、知らないようだし、帰った私にわめきたてる

二人を私がどうしたのか教える必要もない。

 私は、そのまま、深い眠りについた。


 私は、知らなかった。

 シャワーを浴びながら母親が、笑っていたことを。

 「やっと、この日が来たのか。」

 そのつぶやきに、どんな恐ろしい意味が込められているかを・・・。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ