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僕の夢は 退魔師じゃない  作者: 三ツ星真言
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謎の声の正体

 うちの高校には定時制がない。やっぱり、校門は固く閉ざされている。

 運動音痴の私には、校門をよじ登るなんてできやしない。

 でも、私、知ってんだ。裏のゴミ置き場のマキガキには秘密の通路が

あることを。学校を抜け出し、良からぬ事を仕出かす不良生徒が、よく

使用している。そこを通って、私は、学校に侵入した。

 その時だった、また笑い声が聞こえた。

「えっ、マジ。ヤバイ。」

 やっぱ、このゴミ置き場付近に幽霊が出るっていう噂、本当なのかな。

 どこの学校にもあるよね、学校の怪談ってやつが。音楽室のピアノが

夜中に勝手に曲を演奏しているとか、生物室の人体模型がダンスを

踊っているとか、学校の階段がエスカレーターになっているとかね。

 私は怖くて怖くてしょうがないけど、勇気を振り絞り、お父さんの

形見の御守袋を探すことにした。

「あった。」

 やっぱり、ゴミ置き場の近くに落ちていた。あの時、怒りにまかせて

ゴミ袋を投げつけたから、バチが当たったのかな。チョッピリ、反省する。

「お父さんに、会いたいのかい。ワラワが、会わせてやろう。」

 今度は、笑い声だけでなく、はっきりと声が聞こえた。

 恐る恐る辺りを見渡しても、猫の子一匹いない。

「幻聴。やっぱり、うつ病になったのかな、私。」

 お父さんの形見を握りしめ、涙目でその場にうずくまる私に、またもや

謎の声が聞こえてきた。

「安心したもれ。やまいじゃないぞよ。」

 じゃあ誰よ。そっちの方が、よっぽど怖いじゃんか。

「誰、誰よ。姿を見せなさい。」

 私の必死の叫びに、謎の声が答えた。

「それは、無理というものよ。ワラワは、ほれ、目の前の石に封印

されておるからのう。」

 確かに、目の前に大きな庭石がある。ご丁寧に、縄がかけられている。

「ふん、馬鹿にしないでよ。」

 私は、その石の後ろに回り込んだ。でも、誰もいない。

 隠しカメラもマイクも見当たらない。ドローンも飛んでいない。

「ワラワは、ここじゃと言うておるのに。」

「・・・・・・・」

 私は、全身の血の気がサアツ~と引いた。ガタガタと、震えが

止まらない。

「そんなに怖がらないでたもれ。獲って喰おうと言っておらぬ。

 清廉珠美とやら、そなたに力を貸してやろうと言っておるのじゃ。」

「えっ、何で私の名前を知ってるんですか。」

 私の名前は、確かに、清廉せいれん 珠美たまみだ。

 これには、ビックリした。

「ワラワは、この学校で起こることは何でも知っておるぞよ。

 そなたが、好意を寄せておる美形の佐藤とやらが実は衆道で

あることもじゃ。」

「あのう、イケメンの佐藤君を好きなことは当たってるんですけど、

衆道って何ですか。」

「そうか、ワラワが迂闊であった。今どきの女子おなごにはわからぬか。

衆道とは、男と男が愛し合う、そう、今の世でBLっていうものじゃ。」

「そうなんですよ、衆道って、あの戦国武将の織田信長や武田信玄も

ハマっていたってやつでしょ。佐藤君に限って、そんなことはないと

思ってたのに、裏切られました。大ショックです。」

「まったく、酷い話よのう。」

 怒りが恐怖心を打ち消したのか、私はすっかりその石に心を

許してしまっていた。

「あのう、ところであなたのお名前を聞かせてくれませんか。」

「ワラワか、玉藻たまもじゃ。」

「わあ、私と同じタマチャンですか。奇遇ですね。

 それで、私に力を貸してくれるって本当ですか。」

「本当じゃとも。そなたに力を与えてやろう。さすれば、誰も

そなたには逆らえない、意のままじゃ。」

 そんなウマい話があるわけないと思いつつも、今日の私はその

話に乗るしかない。一晩、どこで過ごすかがかかっている。

「わかりました。それで、どうすればよいのですか。」

 玉藻は、親切丁寧に教えてくれた。正直、命の危険さえある

恐いことだったけど、今の私にはそれしかない。


 



 

 

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