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僕の夢は 退魔師じゃない  作者: 三ツ星真言
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色気より食い気

「ドスコイ」

 河童は、大きく片足を宙高くあげ、見事な四股を踏んだ。

 武と陳 桃陽が立っている辺りまで、地面が揺れる。

 なかなかの腕前と見た。相手にとって不足なしと林崎

武は 不敵な笑いを浮かべる。

「見合って、見合って、八卦良い 残った。」

 前から憧れていた行司役、陳 桃陽が声高らかに叫んだ瞬間、

河童は身長2mの巨体に似合わないスピードで、武にぶち当たった。

 ダンプカーにぶつかったかのように、武は後ろに大きく猛スピードで

吹っ飛ばされる。5mは、飛ばされたかな。

 全身に駆け巡る衝撃に堪えながら、武はかろうじて、地面に

両足で立った。頭がクラクラして、膝が笑っている。

 それを黙って見ているほど河童は甘くない。地響きを上げながら

突っ込み、素早く鉄砲を打って来た。当たれば、首がもげるかも。

 その瞬間、河童は武の姿を見失った。と同時に、左膝に激しい痛みを

感じた。

 グエッ

 摺り蹴り、身を沈めて相手の視界から消えて蹴る技、相撲では

当然使えない技だが、これは相撲対骨法、異種格闘技戦だ。

 河童は、右足を軸に左足を宙高く上げ、左足の四股で武の頭を

踏みつぶそうとする。慌てて、転げる武。武の頭があった場所が、

隕石が落ちたかのように大きな穴が開いた。

 大きく間合いを空けて立ち上がる武。この圧倒的な不利な状態で

凛とした佇まい。瞳の奥には、決して勝負をあきらめない不屈の

熱い炎が見える。平和ボケしたチャラい男が多い日本に、これほどの

男がいようとは・・・・。

 陳 桃陽は、秘かに胸のキュンキュンを感じた。

「オリャア~」

 河童が、もう一度ぶち当たってきた時、武は気合もろとも、河童の

ぶちかましを胸で受け止めながら、腰に手を回し、ブリッジで後方に

反り倒した。居反り(いぞり)。相撲の決まり手にもあるが、滅多に

見ることはできない技である。プロレスのフィッシャーマンズ・

スープレックス、水車落とし及びその派生技であるリバース・

スープレックスに近い技である。

 ギエッツ~

 河童の頭が地面にめり込み、頭の皿が割れたが、それでも

立ち上がってくる。怒りに燃えた瞳に、普通の人間なら、気を失う。

 スウ~と呼吸を整え、気をためた武は、鋭い気合、「破!」と

骨法の奥義、浸透性のある「徹し」を河童の顎目掛けて打ち出した。

 河童の脳は頭蓋骨の中で激しく何回も揺れ動かされた。

 どんなに固い弁当箱に入った豆腐でも、弁当箱を軽く揺らしただけで、

豆腐は粉々に崩れるのは、子どもでも知っている。

 河童は、たまらず意識を失った。

「破邪」

 武は、河童の額に護符を張ると、河童はたちまち元の人間へと

戻って行く。二人は知らなかったが、それは、この前の関東大会

相撲の部で優勝した護鬼学園の選手であった。

 口から見たことのない大きな気味の悪い寄生虫を吐き出す。

 太極拳の發剄にも似た技を駆使する武の勇姿に胸ドキュンであった

陳 桃陽であったが、武が滅殺する前に、寄生虫をつまみ上げ、ポイと

口に放り込み、モグモグと美味しそうに食べる。色気より、食い気。

 流石に、剛勇無双の林崎 武でも、ドン引きだ。

 やっぱり、森 星明のような奥ゆかしい大和撫子に憧れる。


 


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