僕は変態ではない
「許さないか。その子、彼女かな。目覚めた時、君が死んでたら
さぞかし驚くだろうね。」
ラミアーは、キレイな顔に似合わず、ヘビーなことをサラリと
言うではないか。
「彼女だよ。目覚めた時、君が死んでたら、さぞかし喜ぶだろうね。」
「言うじゃない。できるものなら、やってごらん。」
ラミアーは、本物の蛇のようにスルスルと地面をはい、僕に襲い掛かる。
こんな妖怪、いやモンスター相手に大東流合気柔術の技は通用しない。
僕は、全身脱力した。両手に隠し持った寸鉄で、迎え撃つつもりだ。
蛇ににらまれた蛙と勘違いしたラミアーが、僕の体を胴体でガチガチに
がんじがらめにし、両手で僕の両腕を掴む。その力も、ヘビー級だ。
そして、僕の体の自由を完全に奪ったと油断し、最後は大きな口を開け、
僕の頭を丸ごと喰らおうとした。
「ギャア~。」
悲鳴をあげたのは、ラミア~。ラミアーに掴まれた左腕で逆に右腕の
関節を極め、外した右腕に隠し持っていた寸鉄を、ラミアーの額に
打ち込んだ。こんなの、どこの柔術でも基本だよ。
寸鉄は、もちろん、護符が巻きついているので、効果抜群。僕の怒りに
燃えた破邪の気も、ハンパない。
断末魔の叫びをあげて、ラミアーは全身を痙攣させながら、やがて
動かなくなった。見る見るうちに下半身が、人間へと戻り、口から、
見たこともない気味の悪い大きな寄生虫を吐き出したので、僕は速攻で
地面に膝を着き、寸鉄を打ち込み、滅殺する。
ラミアーが呼吸しているか、心臓が動いているかを、確認した。
人殺しには、なりたくないからね。こんなことで、人生を、僕の明るい
未来を棒にふりたくないよ。
「キャア~、リズ君、何やってんの。変態。」
ラミアの悲鳴に気絶から目覚めたキラちゃんは、僕を見て叫ぶ。
「何言ってんの。あっ、これ不可抗力だよ。」
言われてから、気が付いた。ラミアーは、下半身は何も身につけて
いなかったからだ。知らない人が見たら、確かに変態、変質者に
間違えられるだろうな。
「本当、ガン見してたんじゃない。」
「してないよ。倒すに、必死だったんだから。」
「ふう~ん、怪しいな。」
疑いの眼を向けるキラちゃんを納得させるには、どうしたら
いいんだろう。「君の方が、キレイだよ。」って、この場合、絶対に
ふさわしくない。逆に、「イヤラシ。大っ嫌い。」って、頬を往復で
ぶたれるだろうな。
僕が、頭を悩ましている時に、仲間たちは死闘を繰り広げていた。




