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僕の夢は 退魔師じゃない  作者: 三ツ星真言
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珠美の挑戦状

「ふう、疲れたわい。」「本当に、疲れましたわ。」

 祖父と奏絵さんが、無事、僕んちの道場に戻って来た。

「お疲れ様でした。」

 僕は、二人にタオルと冷えた麦茶を差し出す。

「何、チンタラやってんだよ。トドメさせたやろ。」

 僕たちは、祖父と奏絵さんの被っている頭巾、鎖が入っている合戦用の

頭巾に盗聴もできる隠しカメラを着けさせ、道場に設置したモニターで、

リアルタイムで観戦していたのである。

「お前の眼は節穴か。あやつは、本気を出していない。ワシら相手に余裕で

遊んでいたのが、わからんのか。」

 まだまだ未熟の龍美に、祖父は教え諭した。陳 桃陽も大きく頷いた。

「確かに、恐ろしい敵でした。まだ、手が震える。」

「どれ、どれ。もう、大丈夫じゃよ。」

 祖父と奏絵さんは、僕たちの前で手を握り合うではないか。もう、勝手に

してくれって感じだよ。キラちゃんは、眼がウルウルしてるけどさ。

 その時であった。

 突然、真っ暗なモニターの画面が揺れたかと思うと、ヌウ~と何者かの顔が

ろくろ首のように伸びて飛び出した。

「ヒエエエエエエ~」

 真っ先に悲鳴をあげたのは龍美だったから、面白い。転んでも只では

起きない女は、武にすがりつく。武の追っかけだったもんな。

 キラちゃんは、健気に悲鳴を押し殺して、僕にすがりつくから可愛い。

「ほほう、ジジイとババアの他に、若者が六人いるではないか。

 おや、そっちの中国人は退魔師かい。」

 清廉 珠美であった。流石、妖狐が憑いているだけのことはある。

 祖父と奏絵さんの気を追ってきたのであろう。意外と、ハイテクだな。

「いかにも、香港一の退魔師 陳 桃陽だ。首を洗って、待っておれ。

 直に、封印、いや滅殺してやるからな。」

「まあ、威勢だけはよいこと。できるものなら、やってもらおうかしら。

 私も、下校の度に襲われるのも嫌だし、ご近所にご迷惑をおかけする

わけにはいかないから、みなさんをご招待するわ。明後日の日曜日、

午後八時、私、十時からどうしても見たい学園ドラマがあるからさ。

 その時間に、うちの高校の正門を開けておくから、いらっしゃい。

 逃げても、無駄よ。みんなの気は、覚えたから。じゃあね。」

 清廉 珠美は、ウインクとともにオホホホと高い笑い声を残して、

去って行った。

「無理、無理、無理、絶対に無理。私、降りるからね。」

 あれほど、タイマンするやら、拉致するやらと強き発言をしていた

龍美が、異常なほどに震えている。普通の女の子みたいだ。

 確かに、僕も怖いけど、キラちゃんの手前、じっとやせ我慢。

 武と三四郎君も黙ってるけど、額に冷汗が流れている。

「降りるってことは、一人で殺されるってことだよ。それでいいんだね。

 僕、寂しいなあ。悲しいなあ。君の葬式で泣いちゃうかも。」

「自分も。」「僕もだ。」「私も。」「ワシも。」「私もですわ。」

「私もかな。」

 武の太陽と北風作戦に、すかさずみんな乗る。チームワークばっちりと

言うべきか、底意地が悪いって言うべきか、どっちなんだろうね。

「仕方ない、そこまで言われたら、やってやろうじゃないか。みんな、

気合入れて闘うんだぞ。根性、見せろや。」

 龍美は、立ち上がり、拳を高く突き上げ、吠える。そこら辺のヤンキーと

不良が恐れ、泣く子も黙るホワイトデビルのリーダー復活だ。

「それでは、みなさん、最後の仕上げと参りましょうか。」

 自称、香港一の退魔師の陳 桃明の特訓が再会された。付け焼刃は却って

身の危険を及ぼす。祖父と奏絵さんの闘いを見た通り、それぞれが習得している

武術、武道を基礎にするのが最も有効であるというが、それはそれは、もう

厳しいもので、普通の若者ならまず逃げ出すどころじゃない、逃げる前に

死んでいるよ。祖父と奏絵さんは、若い頃の荒稽古を懐かしんで楽しんでいるから、

嫌になるね。龍美と三四郎君は柔道の乱捕りを基礎に当身技も盛り込み、

真剣に取り組んでいる。僕とキラちゃんは大東流合気柔術を基礎に取り組む。

 武は一人で居合の型を繰り返していた。



 

 

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