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僕の夢は 退魔師じゃない  作者: 三ツ星真言
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尾行者との楽しい決闘

「面白い。この私を尾行するとは。」

 下校途中、清廉 珠美こと私は二人の尾行者の存在を

察知していた。人間相手なら十分通用する見事な隠形術と

褒めてあげたいが、千年以上生きた妖狐、玉藻が憑依している

私には通用しない。

 わざと、闘いやすい場所へと誘ってやる。

 再開発でつぶれたままになっている工場跡、ここなら

誰にも邪魔されず、遊べる。

「さあ、かかってらっしゃい。」

 二人の尾行者が姿を見せた。ジジイとババアだ。

 もしかしてこいつらか、一応用心する。

「妖怪、朋輩ほうばいの仇を討たせてもらうぞ。」

「いざ、尋常に勝負。」

 二人の気迫は真剣そのもの、燃え上がる闘気が不動明王の迦楼羅炎の

ように私の目には見える。

 これは楽しめそうだと、思わず嬉しくなる。

 ジジイとババアは私の前後に回り込む。呼吸がピッタリだ。

 すかさず、手裏剣を打って来た。それも、二人とも両手打ち。

 前から二本、後ろから二本が飛燕の如く、襲い掛かる。

 プロ野球選手の時速160kmの剛速球も場外ホームランを

打つ自信があるし、大阪なおみと硬式テニスの試合をしても勝つ

自信がある私は、余裕で叩き落とそうとしたその時。

「危ない。飛べ。」と玉藻が教えてくれた。

トウ~

 日曜日の朝の特番の変身ヒーローのように、ジャンプして避ける。

 華麗に宙で回転することも忘れない。着地も、見事に決まったぞ。

 それぞれの手裏剣は、壁に刺さり、大爆発した。それだけではない。

 二本の手裏剣は何やら見えにくい糸でつながっている。

 危なかった。玉藻が教えてくれたから、助かったよ。

 ジジイとババアは調子にのって、乱れ打ちで攻めてきた。

 今度は、私の番よ。私は、念動力を使い、倍の速さで返してやる。

 やはり、ジジイとババアは只者ではなかった。すべて、躱している。

 この二人の武の境地は、銃弾さえ躱せるところまで至っているから

当然であろう。

 しかも、二人とも、アトラクション施設でデートを楽しむかのような

表情だ。仲睦まじい様子に、何だかムカつく。

 手裏剣を全て打ち尽くした二人は、私に素手で襲い掛かる。

 これは、二人そろってかなりの達人だ。もしかして、地上最強かも。

 しかし、それはあくまで相手が人間の場合だ。私には、通用しない。

 私は、二人の攻撃を余裕でかわし、さばき、いなした。

 調子に乗るなよって、私がババアをぶん殴りに行ったら、何と私は

宙に舞うではないか。信じられないことに、投げられた。こいつら、

魔法使いか。それでけではない。ジジイが、ジャンプして、私の

首に膝を入れ、受け身を取らさないように、地面に叩きつける。

 スゴッ

「今のは、痛かったぞ~みたいな。」

 私は、あの有名なアニメの背の低い悪役のようなセリフを吐きながら、

立ち上がった。普通の人間なら、首の骨は折れ、頭蓋骨陥没で即死だ。

 こいつら、日本のサムライか。すごい神技だ。

 しかも、陰陽師みたいな霊力をもってやがる。何やら、体がしびれる。

 実際に、透視してみると、衣服や、手甲、銅、膝当て、拗ね当ての裏に

お札が張ってあるのが分かった。

「おまえら、陰陽師か。」

「問答無用。」「死にゆく者に、答える必要なし。」

 嫌だね~、だから年寄りは嫌いなんだよね。

 これでも、敬老精神はあるつもりだけど、そろそろ本気を出そうと思ったら、

ババアが笛を吹き始めた。笛に合わせて、ジジイが鎖鎌を振り回しながら、

奇妙な舞を始める。

「気をつけろ。」

 そんなこと言われなくてもわかる。ジジイの全身から青白い闘気、

静かで清らかなオーラが立ち上るのが、はっきりと見える。

 笛の音色が妙に頭を刺激し、体の身動きが鈍る。

 勝機と見たジジイが鎖鎌を私目掛けて、投げつける。分銅は私の体に

巻きつき、鎌の方が私の顔面を襲う。

 ガシッ

 これぞ、本当の真剣白歯取りだ。私は、歯で鎌を銜えた。

 ジジイの攻撃は、エゲツナイ。すかさず、駆け寄り、隠し持っていた

手裏剣を私の額に突き立てようとした絶体絶命のピンチにあの救世主が

現れた。

 ドカ~ン

 暗視術を極めているらしいジジイとババアにも見えない黒い煙玉、

煙幕が爆発したのだ。

 ババアの笛も止まった。私はその隙に、救世主とともに、瞬間移動、

テレポートした。けっして、逃げたのではないからね。ほら、あれよ、

私、チャーシュー麺のチャーシューは最後まで楽しみにとっておくタイプ

だから。

 今日は、よく眠れそうだ。久しぶりに、体を動かしたぞっと。

 



 

 

 

 



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