昭和のラブロマンス
朋輩のかたき討ちをすると、今にも飛び出さんばかりの勢いの
祖父を止めることは、難しい。現代に生きる武人、大東流合気
柔術の達人だから。
「あなたにもしものことがあったら、後に残された私はどうしたら
よいの。私、あんな思い、二度としたくない。」
背中にすがりつく奏絵さんのこの言葉に、祖父は落ち着きを取り戻す。
「すまぬ。奏絵。」
「義明・・・・」
肩を抱き合い見つめ合う二人、昭和のラブロマンスだ。
事情を知っている僕とキラちゃんには、ウルウルしそうになる感動の
名場面だが、堕天使と悪魔には関係ない。
「二人一緒なら、いいんじゃない。」
「そうだ、二人に鉄砲玉になってもらおう。」
怖いもの知らずの陳 桃陽と龍美の爆弾発言に対して、怒るどころか、
祖父と奏絵は乗って来た。この先、病気で寝たきりになる恐れもあるし、
一緒の日に同じ場所であの世へ行くことはありえないからだ。
「死ぬときは一緒なんて、素敵だわ。」
「あの世で、結ばれようぞ。」
こうして、祖父と奏絵さんが鉄砲玉、もとい先発隊となることが
決まったが、僕たちは必死になって清廉 珠美の自宅の住所、家族
構成など、あらゆる情報を集めるのであった。




