ゴミ捨て場で
そんな不幸を絵に描いた様な私なんだけど、一つだけ楽しみがある。
クラスの学級委員の佐藤健斗君だけは、私に優しかったんだ。
ジャニーズ風のイケメンで、クラスだけでなく、学校中の
女子にモテるが、本人はそんなことどこ吹く風と、まったく
相手にしない。見ていて、気持ちいいくらい爽やかなのよね。
その佐藤君は、掃除の時間、お掃除班のメンバーから、私を
庇ってくれる。
今どき、掃除が好きな高校生はいないんだけど、みんな
大人しい私にイヤな仕事を押し付けて、スマホをいじったり、
サボっている。特に、教室のゴミ捨てを私に押し付ける。
「いいよ、ゴミ捨て、僕が行くから。」
佐藤君だけは、そう言ってくれる。私は、素直に喜べない。
「・・・・・・」「・・・・・・・・」
同じ班の女子たちの突き刺すような視線に、顔を上げることが
できない。私は、佐藤君からゴミ袋を無理やり、奪った。
「いいんです。私、行きます。みんな、先に、帰っていいよ。」
「そう、悪いわね。」「ラッキー。」「じゃあ、よろしく。」
口ではそう言いながら、みんな先を争うように、教室から
出て行った。
うちの学校のゴミ置き場は、かなり遠い。
しかも、日当たりが悪く、はっきり言って不気味な場所にある。
私は、階段を降りながら、さっき手が触れあった佐藤君の
優しさを心のぬくもりをかみしめていた。
「この野郎。」
私は、ゴミ置き場までくると、辺りに誰もいないことを
確認してから、ゴミ袋を投げ捨てる。こんなことでしか、
ストレスを発散できない自分が可哀そうになるけど、仕方ない
じゃないか。
その時だった、誰かがそんな私を笑った声が聞こえた。
見渡しても、辺りに誰もいない。幻聴か・・・・。
「えっ、嫌だ。」
不幸の連続で、私はとうとうウツ病になったのかと心配になった。
その場を急いで立ち去ったが、その時、大事なものを落としたことに
気が付かなかった。
私の不幸は、それだけでは終わらない。
教室で見たものは・・・・。