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僕の夢は 退魔師じゃない  作者: 三ツ星真言
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妖の正体

「して、そなたの祖母様のお名前は、何じゃ。」

「陳 春李しゅんり、結婚する前はよう 春李ですけど。」

 まだまだ男女の恋愛関係に疎い僕でもわかるくらい、祖父の顔色が

変わった。はっきり言って動揺している。絶対、若い頃、ひと悶着

あったな。奏絵さんの表情にも、一瞬、般若が出現したが、そこは

すぐに抑えた。流石、大人の女だ。

「そ、そ、そうか。それで、そなたは、春李、じゃなくて祖母様に

魔物封じの術を叩き込まれ、命を受けて日本に来たのかな。」

 祖父は話を必死にそらそうとしているが、あまりに不自然だ。

 いくら大東流合気柔術の達人、現代に生きる武人と謳われても、

男女の恋愛には素人同然。めっちゃ、面白い。僕、イジリ倒したいけど、

後の仕返しが怖いからできない。キラちゃんも、必死に笑いをこらえている。

「よく、わかるね。私は幼い頃から、陳 長興の血を引く祖父に太極拳を、

祖母から退魔師としての修行を課せられてきたよ。同い年の子どもたちが

遊び呆け、好いた、惚れたとうつつをぬかしているのにね。酷くない。」

 何か激しい怒りと悲しみを感じた。僕たちは、共感できるよね。

 僕とキラちゃんも大東流合気柔術の修行をそれぞれ課せられてきたが、

退魔師の修行はなかっただけマシか。祖父と奏絵さんは、耳が痛い様子だ。

「そう、そう。半月ほど前、祖母が日本で異常な妖気の出現を感知した。

長い人生でこれほどまでに最悪最凶の妖気はないと言っていたよ。」

「その妖気は、何と。」

「かって瑞祥を現わす神獣とされたあやかし

 古代中国で絶世の美女に化け、時の皇帝をたぶらかし、思うままに

操った。「酒池肉林」をつくって淫蕩のかぎりをつくし、「炮烙の刑」を考案し、

諌言する臣下や妃を焼き尽くして楽しんだもの。

 古代印度においては、時の国王を同様に誑かし、僧侶千人を檻の中に

閉じ込め、獅子に食い殺させた。諌言する臣下や妃を弓矢の的にしたもの。

 日本においては、鳥羽法皇を誑かし、宮廷を乱した。陰陽師の安倍清明の子孫、

泰成やすなりに正体を暴かれ、死闘の末、逃げたが、泰成が指揮する

三浦介義明と上総介広常ら討伐軍によって、退治された。

 体は朽ちたが、その魂、凶悪な意志は石と化し、殺生石と名付けられた。」

「その話なら、私も知っております。確か、栃木県の那須でしょ。」

 奏絵さんもその妖怪に心当たりがある様子だが、僕たち、若者はサッパリだ。

「はい、でも、国を傾けるほどの妖。殺生石は、もう一つあったのです。」

「何じゃと、それは、どこじゃ。」

「はい、関東地方とまでは教えられましたが、そこから先はわからない。

 私は妖気を探り、その場所を探していたところで、この騒ぎに巻き込まれ

 ました。」

 そんなことより、気になることがあった。キラちゃんも同じ様子。

「あのう、その妖の名は何ですか。」

「おまえ、知らないか。日本の子ども向けの妖怪もののアニメでも

 登場しているぞ。」

「学校の国語や古典の授業でも、習ったじゃろうが。」

「そうですとも。」

 陳 桃陽だけでなく、年寄り二人の視線も何だか冷たい。

「わかった、九尾の狐ね。」

「あちゃあ~、先に言われたよ。」

 キラちゃんに、先を越された僕の立場がない。ここは、名誉挽回と

僕はその殺生石の場所を必死に推理した。



 

 

 




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