表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の夢は 退魔師じゃない  作者: 三ツ星真言
19/46

退魔師 光臨する

「へえ~、ちょっとビックリ。学年二の秀才が武術の使い手で

しかも、あの森 星明と付き合っていたなんて。人は、見かけに

寄らないものよね。」

 僕の絶体絶命のピンチに、何の緊張感もなく、どちらかと言うと

失礼な台詞を呟きながら現れた女の子がいた。

 黒髪を高めポニーに愛らしくまとめ上げ、白い襟付きのシャツの

上に真っ赤な赤いジャンバーを着ている。パンツは少しゆったりめの

黒のデニムだ。

「え~と、君は確か、転校生の・・。」

「あら、覚えてくれていてくれて、ありがとう。

 香港から来た謎の美少女、ちん 桃陽とうよう

 果たして、その実態は・・・」

 確かに綺麗だけど自分で言うかよ~と僕と同じようにあきれていたのか、

鬼の一匹が襲い掛かった。

 僕が庇う隙もないほどの、素早い動きであった。

「危ない。」「キャア~」

僕とキラちゃんが同時に叫んだが、崩れるようにその場に

沈み込んだのは鬼だった。

「發剄。太極拳か。」

 僕のつぶやきにニヤリと笑いながら、陳桃陽はポケットから

何やら難しい漢字を書き並べたお札を取り出し、鬼の額に

張った。不思議なことに鬼は動きを止めた。それだけではない。

見る見るうちに、元の人間体へと姿が戻った。表情も気も普通の

人間の穏やかなものだ。

「エッヘン、その実態は・・・・」

 仲間がやられたのを見て、容易ならぬ敵と見たのか、

三匹の鬼が一斉に襲い掛かる。

「おまえら、せっかちだな。そんなんだから、女に

もてないんだ。」

 正面の鬼の攻撃を躱しつつ、背中に發剄が効いた掌打を

ぶちかまし、その場で助走もつけず、大きく両足を広げ、

左右から襲いかかる鬼たちの顎を蹴り上げる。それでも、

倒れない左右の鬼の水月に發剄の効いた掌打を左右同時に

お見舞いする。

「すげえ~、功夫を極めてる。」

「いいか、残りのおまえ、待ってろ。絶対に襲ってくるな。

 最後まで言わせろよ。」

 僕の絶賛に喜びを隠し切れない様子で、陳 桃陽は、

床に倒れた三匹の鬼の額に同様にお札を張り付ける。

 同じように、元の人間体へと姿が戻った。

「香港から来た謎の美少女、ちん 桃陽とうよう

 見た目は普通の女子高生、果たして、その実態は香港一の

退魔師。どうだ、恐れ入ったか。」

 歌舞伎役者のように大きく見得を切りながらのあまりに

高飛車で迫力のある台詞に、残りの一匹の鬼、一木山高校

柔道部の主将はどう反応したらよいのか困った様子。

 僕とキラちゃんも、同じだよ。

 仏教の教えと中国独自に発展体系づけられた陰陽道の原理を

駆使して世の中の悪因縁を解く者を中国では退魔師と呼んでいた。

 かって、皇帝に仕える退魔師の多くは仏教や道教の 高僧であった。

 日本でも同じような役目を天台、真言僧および安倍晴明を代表とする

陰陽師が担っていた。

「ええ~い、日本人はノリが悪いな。アニメの国だろうが。」

 自分でも恥ずかしくなったのか、陳 桃陽は拗ねたように

スタスタと鬼の方へ歩いた。

 油断なく身構えた鬼は、両手で挟み込むように襲い掛かる。

 その瞬間、陳 桃明の姿は消えたように見えたに違いない。

 鬼の攻撃を躱しつつ、水月に發剄の効いた掌打をぶちかます。

ガハツ

 攻撃は効いているが、それでも倒れない。

「しつこい。」

 陳 桃明は、剄の効いた蹴りを男の大事な急所にぶち込んだ。

「ソレハ アカンヤロ・・・」

 鬼はたまらず悶絶する。

「五月蠅い。」

 陳 桃陽は、お札を額に張り付けた。

 最後の鬼は完全に動きを止めたが、不思議なことに人間体に

戻らない。

「ここかっ。」

 太極拳の必殺技、双風貫耳のように、両手でコメカミを

挟み込むように打つ。

グエエエ~

 悶え苦しみながら、口から何かを吐き出すではないか。

 見たこともない気味の悪い大きな寄生虫・・・・・。

 やっと、元の人間体へと変化する。

「もらいっと。」

 あろうことか、陳 桃陽は、その寄生虫をひょいと掴み、

自分の口に中に放り込んで、モグモグ食べている。

 横で見ていた僕は完全にひいた。絶対に、こいつとは

キスをしないと心に固く誓った。

 二階で見ていたキラちゃんは気分が悪くなったが、

当の本人はそんなの200%気にしていない。

「これ、意外と美味しいし、力も気もつくよ。今度、

おまえも喰ってみればいい。」

「遠慮しておきます。それより、救急車を。」

「そーだね。」

 こうして、何とか無事に終わったが、これで終わりでは

なかった。始まりだったんだな。

 


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ