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僕の夢は 退魔師じゃない  作者: 三ツ星真言
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真の勝者は・・・

神門電線阿守可かもんでんせんあーすか

 絶体絶命のピンチ、私はゴミ置き場に捨てられていた電線を

私の体にバリアのように張り巡らし、先端の片方を地面に突き

刺した。体が動かないので、手を触れずに物体を意のままに

動かす念動力を発動したのよね。呪文は別に要らないんだけど、

ついノリっていうか、今流行りっていうか、変に安倍さんに

対抗意識を燃やしちゃったのね。今どきのJKってこんなものよ。

「破邪」

 再び、雷のような電撃が私を襲った。

「ギャア~」

 私は、地面にバタリと倒れ込んだ。ピクリとも動けない。

 安倍さんも、何だかひどく疲れたようで、ゼイゼイと肩で

息をしている。式神を使うって、心身ともに大変なんだな。

安倍さんは、五大明王の式神を元に戻して、懐にしまった。

「さて、最後の仕上げとするか。」

 安倍さんが、懐から何やら難しい漢字を書き並べたお札を

取り出した。

 それは、護符であった。呪符や護符は、『念の増幅装置』の

ような役割をするとともに、神仙への依頼書のようなものである。

 陰陽師に限らず、道教、密教、修験道などでも使用するもので、

呪符はまじない文(呪文)を使った符、護符は基本的に身を

護るための符といわれているが、一般的な符を示す日本語である。

 このすべてを総称して、中国では霊符と呼ばれている。

 符は、いろいろな紋章や紋様、記号、神秘図、呪文、漢字、梵字などの

組み合わせで構成されており、修法(作成方法)は宗派により異なる。

 この呪符や護符は、ほかの呪術とは異なり、陰陽師の能力というより、

持つ者、持たせる者の思念により、その効力が変わってくる。

 そんなことは知らない私だが、この護符を私の体に張られたら、

ヤバいのはわかる。安倍さん、グッタリとした私の体を左手で地面から

抱き起し、右手で私の額に護符を張りつけようとしたその瞬間、私の

一重瞼でちょっと釣り目で切れ長の美しい両の瞳がクワッと開き、

左手が安倍さんの右手を遮るとともに、右手の手刀で水月を背中に

抜けてグサッと突き刺した。

「ぐえっ。何故・・・」

 理科の授業で習ったでしょ。アースで地面に落雷の電撃を誘導して

やったのよ。それでも、ダメージは残る。私は、安倍さんともう少し

遊びたかったんだけど、もう余裕がない。

 この安倍さん、よく見るとロマンスグレーのイケてるオジサンで、

若い頃はきっと女の子にモテたと思うんだけど、仕方ない。おさらばよ。

 私は、ズボッと右肘まで右手を突き刺した。

「このままで済むと思うな。私には見える。六人の若者が、おまえを

滅殺するのを。楽しみじゃ。」

 安倍さん、クソ憎たらしい台詞を残し、あの世に行っちゃった。

 人を殺すのは初めてじゃないけど、何か嫌なものだ。

「あれれ・・・・。」

 立ち上がった途端、頭がクラクラして、眩暈がする。視点も定まらないし、

心臓が苦しい。吐き気もするし、膝に力が入らない。

「ねえ、どうして。」

 玉藻に呼び掛けても、答えてくれない。

 私は知らなかった。あの全身を貫く電撃は単に物理的な攻撃ではなく、

霊的な攻撃、破邪顕正の気が込められていことを。

 私が今にも倒れそうになった時、私を抱きかかえてくれた人物が

いた。誰だかわからないが、女の人だってことはわかる。

「まあ、いいかっ。」

 私は、その女の人が歌う優しい子守歌を聞きながら、安らかな眠りに

ついた。


 

 


 

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